超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

セカンドキス(仮)

エピソードの総文字数=2,796文字

 寮から校舎へと続く雑木林の道。


 そこを歩いていた俺は、不意に、後ろから忍び寄って来た誰かに、背後から両目を塞がれた――。








「だーれだ♪」
 そう言って俺の後ろに居る誰かさんは、背中に密着するみたいにしてきてだな。

「さあ、私が誰かわかるか、コッペ?」

 おいおいおい……。

 背後から目隠して、『だーれだ♪』なんて、今時はだな。

 小学生向けの少女漫画でも許されないようなベタなイチャコラ展開じゃねえか。

「おい、召愛……。やめとこうぜ、こういうのは。

 その……なんか、むず痒くなる。お前はならないか?

 俺はなるぞ、すごく、なる」

 つーか、遊田の奴。

 結局、俺が鍵を探しに行くことを、召愛に言ったってことか、こりゃ。

「私はそんな事はない。このままキスしても良いくらいだ」
 な、なんだよ。

 いくら、なんでも、ちょっと浮かれ過ぎじゃないのか?

「お、お前な……」

「心の準備はいいか?」

「ま、待て……!」

「なぜ、待つ必要が?

 長い時間、君と共に過ごしてきた。

 全ての課題が解決した時に、コッペとの事もハッキリさせようと考えていたんだ。

 

 私の気持ちはもう、決まっている。

 君は……どうなんだ?」

「そ、そりゃ――」
 いくらでも誤魔化したり、はぐらかす事はできると思う。

 でも、そうした所で、何か得られるものが?

 あるわけがない。


 だって、『お前は誰が好きなんだ?』と問われれば、こう答えるしかない。


 それは、この学校に入ってから、もっとも多く、一緒に笑い。もっとも多く、一緒に悲しんで。もっとも多く、一緒に憤り。もっとも多く、一緒に喜んだ奴であると。


 そして、そいつが、『はっきりさせたい』と望むなら、そうしてやりたい、とも思ってしまってる。

「では、こうしよう。

 君の答えが、YESであるなら、このまま、じっとしていてくれ。

 NOであるなら、目を開けて、この場を立ち去ってくれればいい」

「も、もったいぶらなくていい。

 こういうのは、ダラダラやると、余計にはずい!


 き、キスくらい、ちゃっちゃとやっちまおうぜ。

 ほら。目、閉じてっからよ」

「わかった。いくぞ……コッペ」

 ぶっちゃけ、俺はガチガチに体が固まってしまった。

 スーパー緊張した。


 そして。

 俺の唇に、何かが触れた。

 ドキリとしたよ。心臓が信じられないくらいバクバク言ってる。


 でも、でもだった。


 なんかこう……。俺に唇に触れた召愛の唇は妙に硬くて。

 俺の唇の内側に侵入してきた〝それ〟は、甘酸っぱいレモンの味がした。


 なんだこれ、もしかしてファーストキスは甘酸っぱいって、本当だったのか?

 いや、厳密に言えば、遊田との事故チューの後だから、セカンドキスか?

「どうだ、コッペ。セカンドキスはどんな味だ?」

「なんか、その……レモン味だ」

 と、ついつい、真面目に答えてしまったが――








 ――いや、おかしいだろ!


 と俺は閉じてた目を開けたよ。

 そしたらもう、目隠しはされてなくてだな。

 俺の目の前にはだな――。
















「……」

 と、遊田野郎が一人で、なぜか居たわけでな……。

 なぜか、アンニュイな顔しててだな。


 召愛はどこにも居なくてだな。

 その遊田野郎がだ。

 俺の口に棒付きの何か甘い物を突っ込んでいたわけでな……。

 そんで、のたまった。

「どうだ、コッペ、レモンキャンディは美味しいだろう?」

 召愛の口調で、声まで真似てだ。

 それが、すげえ似てたもんだから、腹が立つより先に感心しちまったぜ。


 そういやこいつ、女優だけじゃなくて声優もやってたんだな、と思い出したぜ。

 まったく才能を無駄に使いやがって……。

「おい、遊田。スクリューパイルドライバーしてもいいか」

 キャンディーを口に突っ込まれたまま、ろれつが回らない口で言ってみた。

「やだ。なんか痛そうだし」

「なら、瞬獄殺でもいい。

 もしくは、アッパー昇竜からのロマンキャンセル真昇竜拳」

「却下」

 ケロッとして言いやがった。

 そんで、俺の口から、スポッと抜いた棒付きキャンディを、遊田は自分の口に入れてだな。

「間接キスしちゃった」

 とか、ふつーに楽しげに、のたまってきたわけだが。

 なんだよ……。この行動は。


 ボケてるわけでも、からかってる感じでもなさそうだし、どうリアクションすりゃいい。

「なら、俺に瞬獄殺してもらいたい以外の動機で、なんでお前はこんな事してんだ」

「決まってんじゃない。

 手伝ってあげようと思ったのよ。鍵探しをね」

 面食らった。

 こんな良い奴、遊田じゃねえ!

「ほ、本当……かよ……?」

「あんた、困るんでしょ……召愛が居なくなったら」

「べ、弁当的にな!」
「……」
「そう、弁当的、にね……。

 だから……手伝ってやろうって言ってるのよ。

 感謝しときなさいよね?」

「いや、待て、な……なんか企んでんじゃないだろうな?」

「しつこいわね。ほら、行きましょ」

 遊田は楽しげに顔を笑わせて、俺の腕を抱き寄せて、引っ張ったよ。

「お、おい。こんな事してたら、また『浮気の放任の禁止』だ、なんつって面倒臭い事になるから、やめとけって」

 俺は腕を放させようとしたが、遊田は断固として、離しやがらねえ……。

「手を繋ぐくらいなら、問題ないって理事長が言ってたから平気よ」

「ほんとに確認したんだろうな」

「あたしは、コッペには嘘を吐かないって決めたの」

 なんだそりゃ、どういう意味だ。

「じゃあ、なんで遊田は、こんな事する。

 まーだ、召愛への復讐なんか考えてるのか?」

「召愛なんかもう、どーでも良いって言ったじゃない。偽善者でもなんでもなく、ただの本当のお人好しっていう、オチだったもの」

 なんて言い合ってる間にも、ぐいぐい引っ張られて行ってしまう。

「なら、余計になんでだ。

 なぜ、遊田は、俺なんかと手繋いで歩かにゃならない?」

「コッペ。あたしとは手、繋ぐの、嫌?」

 せっかく平和になった今、変な波風は立てたくない。


 俺は遊田の両手を、強引に振り払ったよ。

 そしたらだ。

「――!」
「……」

 遊田の奴め、すんごいショックそうな顔しちゃてな。

 俺を見詰めてきて、こう、ウルウルと泣き出しそうな目をしちゃってだな。

「や、やめろって、そういう演技は――」

「演技なんかじゃ、ないもん」

 俺はもっと文句を言ってやろうと思ったのだけど、あれだ……ウルウルお目々で、じっと見詰めれると、もう、俺の喉から出かかったあらゆる言葉が、封印されてしまったようで、けして口から先に出ることはなくてだな……。


 なあ、これって反則じゃないか?

 なんも言えないじゃねえか……。


           負けた。


 仕方なく、俺は右腕を差し出して、掴ませておいたよ。

 んで、言っておいた。


「ただし、両手でガシッと掴むのはダメだ。

 片手で軽く繋ぐだけにしとけ」

「うん!」

 なんて、嬉しそうに頷いて、俺の右手に指を絡ませたわけだ……。


 こいつはほんとに……どうなっちまったんだろうな?

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