超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

ゴルゴタの大講堂

エピソードの総文字数=3,221文字

         大講堂で全校集会が始まってしまった。

           生徒と職員、全員が集まった。

       召愛と遊田もだ。捜査班から解放され、出席した。


 ステージの演台に、羽里が立った。

「みなさん。まことに急ですが。

 この学校法人、羽里学園は15分後に、解散します」

 だが。

 生徒や職員からは、まったくリアクションがなかった。


 全員が何のことだか、意味がわからないといった顔をしている。

 そりゃそうだろう。

 学校が解散なんて、普段は耳にしないワードだ。

「もう一度、言います。羽里学園は、なくなります。

 消え失せます。消滅、します。


 みなさんは、生徒ではなくなり、職員でもなくなります。

 わたしは理事長ではなくなり、生徒でもなくなります。

 15分後にです。そこで、全てが――

 羽里は、そこで突然、泣きだしてしまった。

 ボロボロと涙を流し、声が詰まってしまった。


 それで、みんな、理解してしまったのだろう。

 羽里が言っている事が、悪い冗談などではなく、真実なのだろう、とだ。

「――全てが……失われます」
 大講堂がざわつき始めた。
「これは、羽里家当主である、わたしの母の決定事項です。

 何も言い訳はしません。わたしは母を止められなかった。

 この学校を守る力量が足りなかった――

 そして、羽里は、母親とのいきさつを全て話した。
「――以上のような約束を、母と結ばざるを得なかった……。

 現時点では、召愛が喫煙や援助交際をした確かな証拠もありません。

 真犯人の追求は外堀までは埋めることができましたが、特定するだけの、証拠もありません……」

 ヤジが飛び始めた。
「おい、誰だよ、犯人! 名乗り出ろよ!」
「ほんと最悪。誰なの!」
「わたしから最後の――お願いをしたいと思います。

 これらをやってしまった方。

 どうか、名乗り出ていただけないでしょうか。


 午後3時まで、あと14分ほどあります。

 その間だけ、待ちたいと思います」

「つーか、遊田でしょ。ねえ、自首しなさいよ!」
 遊田は俺の席の隣に座っている。

 その遊田へ、ヤジが集中し始めた。

 だが、こんな状況で言い返しても無駄だとわかっているのだろう。

 遊田は、きつく目を閉じ、耳を塞いで、ひたすらに耐えるようにしている。

「………………………」
「遊田、みんなのために、白状しろよ!」
「最後くらい良い事の一つでもしなさいよ!」
「遊田が【議員】の奴らとつるんでやったんだろうが!」
「おい、【議員】の奴らも、白状しろよ!」
「ははは、ハハハハハハ!

 まったく最後まで、下等な連中だ。名座玲が普通に違反していただけという可能性だって、あるのだぞ?」

「そうだ。召愛はどうのよ。本当は、そうなんじゃないの?」
「自首しろよ、初代生徒会長!」
「偉そうな事言ってたくせに、いざとなったら、これかよ!」
「名座玲、責任とってどうにかしろよ!」
「そうよ。もともと、あんたが巻いたトラブルの種なんでしょうが!」
 ふと、俺の手が握られた。

 左隣に座っていた、召愛からだ。

「コッペ」
 召愛が、突然、俺の肩に頬を寄せた。

 それはまるで、映画館で恋人同士が寄り添うみたいな感じでだ……。


 そして、小さな声で言った。

 周囲が騒然とする中で、俺にしか聞き取れないであろう声で。

「君に謝らなければならない事がある。

 このまま、黙って話しを聞いて欲しい」

「……!?」
「私は実は、ヘヴィスモーカーだ。そして、援助交際の常習者だ」
「お、おい。何言い出してるんだ。そんなわけない……。

 お前が何をしてたかなんて、俺に、わからないわけないだろ」

「黙って聞いて欲しい、と言ったはずだ」
「けど……お前な、いったい何を……」
「君と居られた時間は、とても幸せだった。

 出会えて本当に良かったと思ってる。


 感謝の言葉を全て言ってしまえば、原稿用紙三億枚でも足りない。

 だから、一言だけに圧縮して言うことにする――

 召愛はニコリと笑った。
「私は君を愛している」
 なあ待てよ。

 なんで、このタイミングで、そんなことを……!

「その上で、頼みがあるんだ。

 これから先では、私とは関係を絶って欲しい。

 君に一切の迷惑を掛けたくない。


 大言壮語を吐いた生徒会長でありながら退学になった、どうしようもない女の恋人に、君をしたくない。


 もし今後、他人から私との関係を尋ねられても、私のことなど知らないと答えてくれ。何度でも他人にはそう言ってくれ、一回、二回などと言わず、三回、三十回、三百回でもだ」

 この瞬間。

 俺は召愛が何をしようとしているのか、わかってしまった。


 こいつは、無実の罪で自首をするつもりだ。

 そうして、この学校を救おうとしている。

「さようなら、コッペ」
 召愛が、手を挙げて、立ち上がろうとした。


 俺はそれを、しがみつくようして強引に止め、そして――









「俺だ! 俺がやった!」
 立ち上がって、叫んだ。

 

 俺の声は思いの外、良く響いた。

 大講堂にいた全員、俺に振り向き、注目した。


 そして、俺は、召愛にだけ聞こえるくらいの小さな声で、こう言った。

「さっきの台詞、そのまま返すぞ。召愛。

 今後は俺との関係を聞かれても、縁を切ったと言え。


 そして、まあ、なんだ……その、俺も、お前を愛してる。

 原稿用紙三百億枚分だ。どうだ、すごいだろう、お前の100倍だ」

「――!!」
 それから、ステージ上にいる羽里へと――
「おーい、羽里、自首したいんだが、そっちに行けばいいのか?」
 力いっぱい叫んでみた。
「…………………」
 羽里は目をまん丸くするだけで、反応できてない。


 仕方ないから、俺は座席の間の通路を、ステージへと歩いて行ったよ。

 周りから色んな声が聞こえた。

「嘘だろ、あれって名座玲の彼氏だよな?」
「え……、なんで旦那が?」
「人間、何やってるか、わかんないもんだな……」
「騒ぎを起こしやがって、マジ死ねよ」
「ほんと迷惑すぎ。一日まるまる潰れちゃったじゃん」

 ありとあらゆる罵声が飛んできた。

 俺は、ステージに上がり、羽里の演台の前に立った。

 んで、置いてあったマイクを取って、観衆へと体を向けたよ。

「あー、その、みんな、すまんかった。

 なんでそんな意外そうな顔してんだよ?

 犯人はヤスなんて、昭和からのお約束だろう?


 実は、前々から、召愛とは揉めててな。

 そろそろ飽きてきたし、他の女に乗り換えようかと思ってたんだ」

 俺を罵倒する声が、さらにさらに大きくなった。
「召愛に別れてくれって言ったんだが、承諾してくれなくてな。

 しゃーないから、せめて学校から強制退場を願おうと思ったわけだ。


 つーことで、選挙事務所室にタバコを置いたのは俺だ。

 合成写真をばらまいたのも俺だ」

 マイクのスイッチを切った。
「さあ、羽里、俺に処分を言いつけてくれ。

 この馬鹿騒ぎを、さっさと終わらせよう」

「なんで……あなたという人は」

 マイクが切られているせいで、ステージに居る俺たちの会話は、他の奴らには聞こえないだろう。
「この学校が好きだ。なくなって欲しくない」
「――!!」
「コッペくん……。この恩は、別の形で、必ず返します」
「おいおい、絶対に俺へ金とか送んなよ。

 俺を買収して真犯人として名乗り出させたんじゃないか、なんて、お前の母親がイチャモン付けてきて、振り出しに戻る。


 俺が真犯人じゃなきゃいけない。一切、恩を返すな。わかったな?」

「本当に、申し訳ありません……」
「俺を犯人にするための、細かい矛盾は、捜査班長と口裏を合わせておいてくれ。


 さてと、んじゃ、そろそろ処分の言いつけを頼む」

「はい……」
 羽里はマイクのスイッチを入れた。
「あなたを――
「………………」
              さようならだ。

           おれのさいきょうのがっこう。


              そして、召愛。

              さようなら。

               

「退学……処分とします!」

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