超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

エピソードの総文字数=2,726文字

「やったぜ、防犯カメラがないなら、校則違反し放題だな」
 俺がボソッと呟いたらだ。
「まったく君という奴は……」
「呆れました……」

 こいつら聖人君子コンビは、この手の冗談が通じないから困る。

『防犯カメラが使えません』なんてバカ正直に書いてあったら、ふつーの生徒は、みんな俺と同じ発想になるぞ。

「なあ、選挙事務所室だが、今日で返却だろ。失くした鍵の事もあるし、教室行く前に、引き払い作業を済まそうぜ。念のためだ」

 俺が考えてたのは、やはりあの【議員】たちのことだ。

 奴らが、恨みを忘れて大人しくなるとは思えない。


 さっき目があった奴も、監視しているような素振りに見えたしな。

 単なる俺の自意識過剰ならいいんだが……。もし、何かの間違いで、あいつらが鍵を拾っていたりしたら、最悪の事態にもなりうるわけで。

「そうですね。予鈴まで少しありますし。私も手伝います」
 そこでだ。

 羽里に電話が掛かってきた。

「ん、【議員】の方から、選挙の事後処理で連絡が来ました。

 先に行っててくれませんか。早く切り上げて、私も向かいます」

 そして、俺と召愛の二人で、選挙事務所室へ向かおうとしたのだが。

 さらにだった――。

「おい、コッペ!」
 階段を上ってる途中で、クラスメイトに声を掛けられた。
「どーでもいい用なら、あとにしてくれ」
 どうせ、貸してたエロDVDを返すとか、新しいのを仕入れたから貸してくれるとか、そういう要件だと思ったんだ。
「そういんじゃねえって、いいから、ちょっと来いよ!」

 なんかすげえ真剣だ。

 どうやら、俺が考えてるような牧歌的な要件じゃないらしい。

「行ってくればいい。作業は、私と彩だけでも十分だし」
「あ、ああ。じゃ、先に行っててくれ」
 で、クラスの男子に連れて行かれたのはトイレだった。
 トイレで男子同士でやる事といったら、やっぱりエロDVDの賃貸取引と決まってるわけで、やれやれと俺は思ったのだが――
「個室の中……見てみろ」
「?」

 そして、個室を覗き込んでみた。


 そこにはだな、貼ってあった。写真がだ。召愛の写真

 しかも、喫煙している写真

「――!」

 おいおい、防犯カメラが使えなくなったら、いきなり、こんな嫌がらせかよ。

 だが、どうせ、やっつけな合成だろう?


 その写真を剥がして、手元でよく見てみた。

 が、素人目じゃ、本物にしか見えないくらいに良く出来ている。

 少なくとも、俺からじゃ、この部分が不自然だ、とか指摘できるほど、おかしな所はなかった。


 盗撮風で、いかにも召愛が一人でこっそりタバコを吸ってる感じなんだ。

 ご丁寧に、『次期生徒会長、喫煙の瞬間を激写』などと書いてある。

「隣の個室にゃ、もっとろくでもない物がある」

 他の個室も見てみた――。

 そこにもあった。

 別の写真で。召愛が中年男性とラブホテルに入っていく様子を写したもの。

 しかも同種の写真はいくつもあり、それぞれに違う中年男性が写ってる。


『次期生徒会長、援助交際の常習犯!』などと書かれてだ


 援助交際は――言わずもがな、即退学だ。タバコは、吸わずとも火を付けたり、それをした生徒と一緒に居て黙認しただけで退学になる。

 この出所不明の画像だけで、加罰される事はないと思いたいが……。

「これ……本物、なのか?」
「そんなわけないだろ!」
「そ、そうだよな……?

 でも、噂が広まりだしてる。職員が気づくのも時間の問題だぞ」

「くそっ!」
 俺はトイレから出て、選挙事務所室へ急いだ。

 とりあえず、本人に知らせて、通報させなきゃならん。

 途中の廊下で、電話を終えたらしい羽里と合流。
「羽里、さっそく、面倒な事になったぞ」
 俺は剥がしてきた召愛の写真を見せた。
「――これは!」
 そして、三階、選挙事務所室の手前まで到着。

 すると、遊田が先に居たんだ。


 あいつは丁度、選挙事務所室へ入ろうと、扉を開けようとしてたのだが――部屋の中を見て、目を丸くした。

「な、何してるの、召愛!」
 俺と羽里も、遊田の後ろから、選挙事務所室の中を覗き込んだ。
「おや、結局、みんなで来たのか」
 なんて、暢気に言ってるが、召愛はだな。

 

 火の付いたタバコを、灰皿でもみ消していた。

「お……おい、召愛、なんだよそりゃ?」
「あなた、まさか!」
「ん、ああ、これか?」
 と、吸い殻を召愛は指さしてみせた。

 灰皿は、100均あたりで売ってそうな安っぽいものだ。

「さっきここに到着したら、どういうわけか、鍵が開いていたんだ。

 不審に思いつつ中に入ったら、火の付いたタバコが放置されていた。

 だから、消しただけだが」

 てことは……。

〝誰か〟が、俺が落とした鍵を使って、部屋を開けておき、召愛が来るタイミングを狙って、タバコを設置した?

「――」
 羽里が一点を睨み付けた。

 その視線の先に居るのは――

「えっ、ちょっと、待ってよ!

 あたしじゃない。今さら、こんな事、するわけないでしょ!

 ただ、自分の荷物を片付けとこうと、ここに来ただけで……」

「……」
 遊田と、目が合ってしまった。
「そ、そうだぜ、羽里。

 遊田はもう、召愛への復讐なんて考えてない」

 そう……なのだが。

 復讐は、考えてない、はずなのだが……。

 復讐、は……。


 でも、俺は聞いてしまってる。こいつの口から直接。

 復讐以外の動機で『召愛が退学になってくれればいいと、思ってる』とだ。

「全員、ここを動かないように。

 物に触れず、現場を保存してください。

 只今より、本件を、重大事案として扱います」

 羽里は警備室へ電話をかけた。

「重大事案が発生しました。

 捜査班に鑑識の準備をさせ、出動させてください。


 なお、一時限目の授業は中止。

 全校で所持品検査、および、ゴミ箱等の点検を行ってください」

◆作者をワンクリックで応援!

0人が応援しました。

◆コメント欄は未記入でもOK! 公開されないのでお気軽に。

ページトップへ