いかに主は導きたまうか。

9. The 3rd Dept. ベイビースキン。

エピソードの総文字数=2,349文字

  会社は、ケミカルの重合で始まった。この技術の応用でボンドも作られている。更には化成品化も可能であった。父の考え、戦略は『絶対に潰れない会社をつくる』ことにあった。どんな市場でも浮き沈みはある。ドラマティックに経済(金と物の流れ)は変化していくのだから。【無常ならざるものなし】だ...。そのリスクヘッジの為には方策が必要であった。彼には二つの構想があった。

  構想の一つは「三つの独立した市場を確保する」ことであった。一つの市場の浮沈に際しても、残り二つが収益を支えてくれる。実際的には、不織布(重合)、建材(ボンド)そして粧材/基盤(化成品)、これらがその三事業の市場とその内容である。
*しかし、これら三事業部は、すべて個人商店ではあった...。

  つまりは、短期間(約7年)において、三種の〔工場〕生産体制を備えたということになる。段階的ではあったろうが、資金負担は相当に厳しいものがあったに違いない。実物の製品を、とにかく「供給できるようになる」が目的の『すべて』であったのであろう。その証拠に[管理]という名のソフト(知恵)が全社的には欠けている。広く責任感のある人間もいない。想像力がみんな欠如している。コスト意識もあまりない。あるのは異常なプライドと場当たり的な根性だけ!。*これはボクの主観的な失礼千万な、その当時の〔憶見〕に過ぎない。「許してチョッ!」。

  こういったことは、仕方がないと言えば仕方がないことなのかも知れない...。あの高度成長期の最終バスに飛び乗り、父はゼロから会社を「鉄火場での如く」獅子奮迅の勢いで形作っていったのだから。物も金も人も、有り合わせのものでしかなかったであろうに...。幼き日の私の目には、父は” 白光 ”を放つ存在に観えた。「メチャメチャ怖かった」。ある意味、天才、鬼人の如くであった。ボクなどには到底その真似など一厘たりとてできるものではない。父は、母によるハイリスクな資金調達の助けもあり、そのビジョンであった三事業体制の確立を果たしていた。

  第三の事業は化成品である。うちには〔博士〕がお一方おられた。名◯○大学出身の方。父は、こういった肩書きに弱い。この方に入社いただけたことを甚く喜んでいたらしい。だから、部長職にもなってもらい可愛がられていたのだと思う。この博士のアイデアに、〔連◯気◯の構造をもつ海綿体を湿式で作る〕があった。重合したケミカルに色々と混ぜ込んで、水中で◯◯させるのだ。しばらく浸け込むと、混ぜ込んだものが溶けだして居なくなる。結果、微細な孔(あな)を備えた海綿体ができあがる。(素体としての母体は、まったく違うが、あの印材と同じシステムではある)。できあがった海綿体は、触ってみると、なんともいえないソフトな肌触り!。まるで..「赤ちゃんのおしりみた〜い♡」であった。

  父には、この製品に「ピン」とくるものがあったようだ。これの事業化を方針決定してしまう。対象となる市場もよく見定まらないうちに...。当初は、なにかはあったのだろうが、これは、先方から【反故】にされてしまったらしい。生産体制だけが整うも、供給するべき市場が定まていないといった、とんでもない事態となっていたのだ。「エーッ!」。こういったことからも、会社の経営は、少しルーズだな〜と思ってしまう。見切り発車もいいところだったわけだ。お金の大切さの観念が、吹っ飛んでしまっている。『成功』しか頭にはなかったのだろうか?。『いけ!いけ!どんどんドン』。これは、あの時代のトレンド(傾向)だったのだろうか?。

  やがては、なんとかこの製品を引き取ってくれる市場を見いだしてはいく。取りあえず設備を活かす為だけで見つけてきたものではあったが...。これには、天の庇護があったのだろうか?。それとも、例の法則の、ただの発動か?。名前は忘れたが、とにかく、『いかなる製品であろうと、原物化すれば、不思議と幾ばかりかは売れる』というやつがある(決してゼロにはならない)。

  ボクが入社した頃、この事業部は利益率において問題があった。見かけの数字、売り上げた枚数と金額を追うことばかりで、核たる【営業利益】における考慮がまったくされていなかった。また、これの向上の為の方策はなにも聞こえてはこなかった。「いや、だれも考えていない?...」。ボクは、この事業にも介入する。それも割と早い段階で。「確信犯的に!」。


補記:  

構想の残り、もう一つの方策は、現金決済のみへの移行であった。手形を振り出さないようにする。つまりは〔不当り〕の不在である。*会社は二度の不当りで銀行業務の停止処分となる。


追記:

家の庭に建てた小さなプレハブがスタートであった。前の会社から一人、高卒の方を引っぱってきていた。社員は、人を選んでいる余裕はなかったそうだ。そんな会社に好んで来る人は、ほぼいなかったのだろう。*ボクは幼き頃、この方に庭でよく遊んでもらった。

父はボクに『うちは絶対に潰れない会社である』と誇らしげに、嬉しそうに語ったことがある。その理由を聞いて、ボクは「いや...、そんなことはありえない」と返した。
ボクのコンピューターは、ほぼ間違いなく◯○すると、ひっそりと告げていた...。
【欠けているもの】の備えをするのことが、ボクのここでの役目なのだと弁えていた。


蛇足:

今回のエピソードにはもう一つ別のタイトルがあった。
Arising of Acrobatically Financed Karma Striking Enterprise.
【魔人城降誕】
長いのと、「冗談ではない」ので止めにした。

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