超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

汝のパンツを奪った敵の合法ロリを愛し、迫害する者を昼飯に誘いなさい。

エピソードの総文字数=2,975文字

 羽里学園の校門まで辿り着いたときだ。

 俺と召愛は思わず立ち止まって、同時に同じ言葉をボソッと呟いてしまった。

「あ、高校生なのにツインテールだ……」

「あ、高校生なのにツインテールだ……」

 20メートルほど先の校門で我々を待ち構えていたもの、それはまさに――。
「……」

 羽里だ。

 小さなお姫様は、まだ生徒たちがほとんど登校してきてない校門の前に立っていたのだ。


 そして、髪型はツインテール。

 まあ、なんだ。下手したら小学校高学年にすら見えなくもない容姿せいで、ばっちり似合ってしまっていた。


 俺と召愛は、なんとなく気まずくて、無言で顔を見合わせちゃってたよ。

 さっき、『ツインテールが許されるのは、中学生まで』とか言ってたわけしな。

「まー、彩は合法ロリだからな」

「おい召愛。その単語はキリストの生まれ変わりを自称する身で、どうなんだ……。


 元々、エロゲー用語だぞ。

 というか、正しくは18歳以上の人物に対して使われる言葉であって、見た目が実年齢より著しく低い未成年に対して言うのは、間違った使用法だ」

「でも別に差別用語でも、悪口でもないだろう?」

「お前な、想像してみろ。もし聖書のキリストの台詞のとこに、

 合法ロリっていう単語が出てきたら、どうだよ。

『汝の敵の合法ロリを愛せよ』とか、そんな感じでだ。

 なんか一気にダメな感じになっちゃうだろ?」

「いいんじゃないか別に?」

「いいのかよ……」

「なんせ合法だしな。愛しても問題ない」

「そこなのか問題は?」

「というか、私は聖書を読んだことがないから、良くわからん」

「なに……衝撃発言すぎだろ。それでいいのかお前?」

「私はキリストの生まれ変わりではあるけど、キリスト教徒じゃない。

 聖書を読む理由がない」

「嘘だろ、クリスチャンですらなかったのか?

 冒涜ってレベルじゃねえぞ」

「はっきりと言っておこう。

 イエス本人も新約聖書を、読んだことはない!」

「そりゃそうだろ、あれって確か。

 本人が死んだ後に書かれたもんだったよな……?」

「えっへん」

 威張るとこじゃないだろ、そこは、と思うのだが、召愛は満足そうに胸を張ってるわけで、俺は頭を抱えるしかなかった。

 

 とりあえずこいつは、全キリスト教徒へ、土下座した方が良い

「ちょっと、そこの二人!」
 羽里が俺たちを指さして大声で言ってきたよ。

 俺たちが、なかなか校門に近づいて来ずに、ごちゃごちゃ駄弁ってたのに、業を煮やしたようだ。

「わたしに言いたいことがあるなら、こっち来て直接言いなさい!」
「やあ、羽里。こんなとこで一人で何してるんだ」
俺はごく普通に挨拶して近づいたよ。

「ご機嫌よう、コッペくん。

 登校してくる生徒たち全員へ、挨拶をしようとしているのです」

 ご立派なことだ。

 んな事せんでも給料は変わらんだろうに、というか給料とか貰ってるのか、こいつは?


「おはようだな。彩」

 にこやかに挨拶した召愛に対して、羽里は腰に手をあてて、不機嫌そうな顔で迎えうった。

「おはよう、召愛。

 人を遠巻き見ながら、こそこそ話してるなんて、良い趣味ですね?」


「悪口を言っていたわけじゃない。

 彩は合法ロリだからな、などと話していただけだ」

 お前、正直に言いすぎだろう……。

「……!」

 ていうか、なんだ、これ、羽里が俺を睨んでるんだが、どういうわけだ。

 俺が言い出したわけじゃないぞ。断じて違う。

「ちなみにコッペは、汝の敵の合法ロリを愛せよ。などとも言っていた。それについて、エロゲームがどうとか、非常に詳細に語っていた」

「お、おい、ちょっと待て召愛。

 なんかそれ、すげえ誤解を生みそうじゃねえか!」

「事実だろう?」

「事実だけど、すげえ違う。政治家の発言の一部だけを切り取って、悪役に仕立てあげちゃうお茶目なマスコミくらいなんか違う!

 いいか羽里、俺たちは変な話しをしてたわけじゃない。

 お前の今日の髪型がよく似合ってるな、と、話しをしてたんだ」

「髪型……ですか?」

 羽里は自分の結わえられた髪の片方に、さりげなく触れながら言った。

「そう、羽里はセンスいいと思うぞ」

 ちょっと白々しいほどに取り繕いすぎたかなと、自分でも思ってしまったが――。

「別にこれは、わたしのセンスではありません。

 そもそも、美容には興味がない。髪型などの雑事に時間を使いたくないので、スタイリストに一任しています」

 うおぉ、壮大に取り繕い方を、踏み外した感じじゃねえか……!


「でも、確かに、この髪型は、幼く見えすぎるのではと思っていたところでした。しかし、美容の知識がないわたしが、スタイリストにそう指摘するのは失礼にあたるので、黙っていたのですが。


 男性から見ても、やはり……幼く見えてしまうのですね。

 その、合法ロリ、でしたか?」

「そ、そんな事ないぞ。あくまで普通に、すげえ可愛いと思う」

「もう結構です。

 コッペくんがそのように、わたしへ取り繕う必要はない。

 例え、あなたが、わたしの家族を殺害した殺人犯であろうと、校則の下に公正公平に扱う。

 わたしにどんなに悪感情を抱かれようとも、気にしないでください」

「いや、だからな――」

「もう結構だと言ったはずです。

 ついでに述べておけば、美容に興味がない相手に対して、外見を褒めても、何の意味が?

 さらに言えば、可愛いと、あなたが呼ぶ、この容姿に、好きで選んで生まれたわけでもない。一切の価値を感じてません。以上です」

 以上ですか……。とりつく島もなかったとは、この事だな。


「あはは、見事に振られたな、コッペ」

 朗らかに俺の背中をバンバン叩きなさる召愛さん野郎が恨めしい。

「お前のせいでな。

 というか、振られた、振られないの話しじゃないだろ」

「まあ、そろそろ行こう。

 彩の仕事の邪魔をしては悪い」

「じゃあな、羽里」

「ええ、それではまた」

「あ、そうだ……」

 立ち去り際。召愛は羽里へ振り向いた。

「まだなにか? 

 昨日のような校則の話しをするなら、今度にしてください」

「そうじゃない」

「では、なに?」

「お昼ご飯なんだけど――今日のお昼ご飯、一緒に食べないか?」

 そうきたか。

 召愛は親友に戻りたいと考えているんだろうけど、羽里は、どう思っているのだろう?

「……!」
「…………………」

……………………………

「他に優先すべき事項が入らなければ、

 という条件でも良ければ……」 

 「うん! それでいい。楽しみにしてる」

(良かったな、召愛)

 俺たちは校舎へ向かって、校門から続く遊歩道を歩き出したよ。

 七時を過ぎたばかりの学園は、数えるほどしか人影がない。

「あはは、どうだ、コッペ。私の勝ちだったな」

「なんの勝負だよ」

「彩は君に渡さん!」


              キリッ!

「最初から競ってない。どうぞ、お前の一人占めだ」

「負け惜しみかー?」

 すげえ上機嫌だなぁ、お前。

 よっぽど嬉しかったのか。

「はいはい。んな事より、召愛二等兵、前方へ傾注しろ」

 俺たちの目の前にいよいよ、昇降口が迫って来ていた。

 戦場への入り口だ。

「ついに敵地へ突入となる。

 相互監視を厳とし、校則違反を未然に防ぐための、援護を怠るな」

「私は余裕しゃくしゃくであります。

 コッペ軍曹殿の背中は、お守りするであります」

「馬鹿者。貴様がスースーしてる事を忘れるな」

「はっ、心するであります!」

「よし、突撃!」

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