【2/7】 ホラーダンゲロスSS(104)ヤドナシVS岡崎庸道

ヤドナシ

エピソードの総文字数=2,568文字

ここはヤドナシさんの執筆スペース!
悪戯したら取り憑かれてしまうぞ!
最近、私はダメだ……雨が降ると無性に息苦しくなる。今までは「あの事件」の話さえ出なければこんなことはなかったのに……。

yomogi

どうしたの、夢? なんか気分悪そうだけど……
ううん、何でもない……また明日ね!
私は軽く笑顔を作って友達と別れる。ポツポツと降る雨がだんだん激しくなっていた。なんとなく、今日は嫌な予感がする。早く家に帰りたい。でも、なぜか足が重いのだ。まるで、私の不幸を誰かが望んでいるかのように……。

yomogi

コンコンッ!

yomogi

来た……時折私の耳に入ってくるノックの音。あの日以来、雨が降ると私にまとわりつくようになった忌まわしい音だ。ドアがあろうとなかろうと響いてくる。もちろん、振り向いたって何もない。『ミヨリさま』は返事さえしなければ何もしてこない。ただ、私の心を騒がせる。

yomogi

あれ……多々良くん?
足元ばかりを見て歩いていた私は、ふと顔をあげて気がついた。数メートル先の電信柱の前で、クラスメートの多々良くんが傘をさしたまましゃがんでいることに。

yomogi

…………
えっと……何してるの?
すぐそばまで近づいても、彼はじっと地面を見つめたまま私に気づかない。声をかけてようやく、傘を横にずらして私と目を合わせる。

yomogi

んっ……なんだ、夢か……
どうしたの? こんなところでじっとして……
彼とは特別仲良くしてるわけじゃないけれど、会話をしない仲でもない。お互いあまり人付き合いが得意でないせいか、クラスで班別に別れるときは自然と一緒になることが多いからだ。

yomogi

いや……ちょっとな。
歯切れの悪い彼の言葉に、私も多々良くんが見ていたものへ視線を落とす。

yomogi

えっ……きゃっ!
そこにあったのは、水たまりに浮かぶ大量の目玉だった……。

yomogi

なっ……何これ!?
目玉……だな。
そんなこと分かっている。見たら一目瞭然だ。まるで今抉り出したばかりのような目玉がいくつもこっちを見つめてる……いや、こっちを見つめてるなんて気のせいだ。気のせい……だ。

yomogi

なんで……こんなところに目玉が浮いてるの?
それをずっと考えてたんだ。触った感じ、おもちゃってわけでもない……本物の目玉がなんでここに、それも大量に浮いてるのか……
さっ、触った……?
なんだ……夢も魔人だろ? そんなに驚くことか?
彼の言葉に私は口を開けたまま何も言えなくなった。魔人……私が魔人?

yomogi

小学校の頃、雨の日に体育館倉庫であった事件……あの時に……
やめて!
大声を出した私に、多々良くんはびっくりした様子で黙り込んだ。喉が熱い……肺から何かが吹き出して来そうな感覚がする。ダメだ、聞いちゃいけない。聞いちゃいけない……

yomogi

悪い……分かった、あの事件の話はしないよ。ごめん……
彼は素直に謝った。別に悪いのは多々良くんじゃない。私だって分かってる。あの日、私だけが生き残った理由……私が何を想像して、その後何が起きたかなんて……これだけ魔人による事件がニュースになっていれば何となく分かる。だけど、認めたくない……

yomogi

俺はただ、この目玉が気になってだけだから……夢はもう帰りなよ。雨降ってるし、寒いだろ?
えっ……帰るって……帰るけど……この目玉はどうするの?
どうするって……持ち主を探すさ、これから。
探す……? 何言ってるの! 警察に言わないと……持ち主って言ったって、その人……
悪い、その人がどうなっているかとか関係ないんだ……俺はそういう魔人だから。落し物を見つけたら持ち主を探す性なんだよ。
何それ……
ピックアップターン……持ち主の所へ案内してくれ。
彼がそう唱えると……

yomogi

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ……

yomogi

そこにあった目玉が大量に転がり始めた。

yomogi

ひっ!
思わず、私は多々良くんの袖にしがみつく。彼は気にする様子もなく、そのまま転がる目玉の後をついていく。

yomogi

どっ、どこに行くの!?
知らないからついて行くんだ。
コンコン!

yomogi

ひっ……んっ!
その時、ノックの音が私のすぐ背後に聞こえた。このタイミングで『ミヨリさま』に私が返事するのを狙われている……早く目玉から離れたいのに、多々良くんの袖を握る手が離れない。

yomogi

コンコンコンコンコンコンコンコン!

yomogi

なんで……なんで今日に限ってそんなにしつこく私のそばでノックするの!?

yomogi

どうした? 別に無理してついてくる必要は……
振り返った彼は、私が返事をできないでギュッと袖にしがみついてるのを見ると、黙ってそのまま腕をひっぱり返してきた。

yomogi

……そっちにも転がってるから……ついてくるなら左の方にしろ。
私は黙って、静かに頷いた。

yomogi

『ミヨリさま』……か。
ボソッと、彼がつぶやくのが聞こえる……私の小学校の頃に起きた事件を知っているなら……あの噂も、きっと今、私に聞こえているものも想像がついているのだろう。最初から、私のことを魔人と言うくらいだから、彼は誰よりもこういう状況に慣れているのかもしれない。

yomogi

転がっていく目玉、後をつける多々良くん、その隣でしがみついてる私は、しばらくして人気のない公園のトイレについた。外は雨、時は夕方……薄暗く気味の悪い場所だ。

yomogi

ニャーー

yomogi

おっと……!
突然がさっと現れた黒い猫に、多々良くんも驚いて振り返る。

yomogi

猫……?
ニャーァアアアアア……

yomogi

えっ……
よく見ると、その猫の口には白いボールが挟まっている。いや、足元にも……私たちが追って来たいくつものそれが……

yomogi

ガリッボリッ……

yomogi

口の中にあったものを砕きながら飲み込んだ猫が顔を上げたとき、さっきまで黄色く光っていた目は、赤く染まった色をしていた。

yomogi

ニャァアアアア……ニャァアアアア……アハハ……アハハハハハッ!

yomogi

これは……
多々良くん!
落ち着け、これは目玉の持ち主じゃない……たぶん君が怖がって想像した何かだ。
えっ……私が……
そうだとしたら……あの猫が食べた目玉の持ち主はいったい……

yomogi

ソッチジャナイヨ……

yomogi

唐突に聞こえて来た声……一度も話したことはない、だけど雨の日になるといつも私にまとわりついていたそれだと直感的にわかった。

yomogi

振り返ると、トイレの入り口の陰に長い女の影が見えた。

yomogi

ミヨリ……さま?
ダメだ! 答えるな!
遅かった……その時にはもう、私は答えてしまっていた。

yomogi

ヤット答エタ……

yomogi

夢……
ポトリッ……私の顔から、何かが落ちる音が聞こえた。

yomogi

それはコロコロと転がって……

yomogi

そこまでです!!
ガリッ……ゴリッ!

yomogi

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