超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

俺は言った。「とりあえず全部、アニメのせい」

エピソードの総文字数=1,819文字

 家の二階から庭へ、ひらりと降り立ったその人影。

 大きなバッグ二つを抱えて、門を出て来てた。














「――」

 遊田だった。


 ぴったぴったと裸足でアスファルトの上を駆けてくる。

 暗がりにいる俺には気づいてないようで、こっちには目もくれず、ひたすら走ってきて。


 俺の前を横切ろうとして、やっと気づいた。

「わっ……!」

 声を押し殺して、遊田は驚いた。

「な、なにやってんのよ、あんた。

 痴漢かなにか?」

 そんな軽口を言っているが、赤く腫れた頬や、

 鼻の穴に突っ込まれている血の滲んだティッシュペーパーが痛々しい。

「そりゃ、いいな。丁度、獲物も来たようだし」

「あんたには、そーゆーの一生無理よ。

 ラブホに誘ってる女子すら、引っ張っていけないんだから。

 そんなことより、ちょっと一緒に来て」

 と言って、遊田はまた走り出したわけだ。





 で、高級住宅街から離れた公園まで来てから、遊田はベンチに座った。

 切れた息を整えている。

「あんなとこで、何してたのよ」

「あの状況で、帰れって言われても、素直に帰れるわけないだろうが」

「なによ。あたしを助けてくれようとでも、考えてたわけ?」

「逆だ。

 家の中から、オヤジさんやお袋さんの悲鳴が聞こえたら、包丁を振り回すお前を止めにいこうと思ってた。


 俺は嫌だぞ。

 ワイドショーとかで、殺人少女Aの友人としてインタビューされちゃったりするのは。

 例えばこういう風にだ――

_______________________________________
「どうも、毎度おなじみのワイドショーのリポーターです。

 クリスチャン夫婦惨殺事件の容疑者である、少女Aの友人に、お話を伺おうと思います。それでは、お友達の方、よろしいでしょうか?」

「はい」
「少女Aはどのような方だったのでしょうか?」
「すごく凶暴な奴で、以前にも母親を刺した話しを、笑って話してました。俺もフォークで刺されたりして、酷い目にあわされてましたね。

 得意技はローキックです。威力は全盛期の魔裟斗です。


 あと、ドラえもんが好きです。

のび太と鉄人兵団』が、この世で最強の映画だと言ってました」

「なるほど、アニメがこの殺人事件の原因と言うわけですね?」
「え……。いや、なんでそうなるんだよ……。

 今の話しだと、どう考えても、本人の人格が、やばげじゃねえか?」

「容疑者は犯行前に6時間もアニメを見続けていたらしいですが、やはり、現実と空想の区別が付かなくなってしまったのでしょうか?」
「アニメ見ただけで、人殺すんなら、

 今頃、日本の人口ゼロになってんじゃねえのか……?」

「つまり、アニメは人類を滅ぼす害悪であるというわけですね。

 おそろしいですねえ。

 これはやはり、規制が必要なのではないでしょうか?」

(ダメだ……。

 話しが通じねえ……)

_______________________________________
「――みたいな結論ありきのダメ報道で、ドラえもんが放送禁止になっちまうかも知れなかったんだぞ。お前のせいで」
「そ、そうね。

 危うく、ドラえもんに迷惑を掛けるところだったわ……。

 おお、神(ドラえもん)よ。赦したまえ」

(冗談で言ったつもりだったんだがな……)
「でも、殺そうかと迷ったけど、今回は、家出してきたわ。

 あんなゴミを処理したせいで、一生、刑務所の中なんて、アホくさいもの」

 なるほど。

 こいつの持って来た大きなバッグ二つは、家出の荷物ってわけか……。

「殴られたとこ、痛いだろ。冷やしとけ」

 水道でハンカチを濡らして、渡したよ。

「う、うん」

「で、友だちかどっかのとこに、行く当てあんのか?」

「とーぜん、あるわ」

 そりゃ意外だ。


 こいつは今や、かつての召愛並に孤立しちゃってるわけで、友人らしい友人なんか、最近はさっぱり見かけない。

「そうか。んじゃ、そこまでは送ってく」

「案内するから、付いて来て」

 というわけで、俺たちは途中のドンキホーテでサンダルを買ってから、深夜バスに乗り、遊田の貴重な友だちとやらの所へと向かった。


 遊田の案内にひたすら従ってるわけだが、羽里学園へ向かってる気がするのは、気のせいだろうか。

 というか、ほぼ通学路だ。

(学校の近くの友だちなんだろうな)

 と、思ってたのだが。


 あれだ。

 辿り付いたところは――









          羽里学園のグループホーム寮


 俺と召愛が住んでるとこだ。

 で。

「着いたわ」
 と、玄関前で、のたまったのだった。

◆作者をワンクリックで応援!

0人が応援しました。

◆コメント欄は未記入でもOK! 公開されないのでお気軽に。

ページトップへ