黄昏のクレイドリア

19-6

エピソードの総文字数=1,558文字

……ん、

屋敷の廊下の窓から、

正門で合流したカノン達を視認すると、

パシュアは小さくため息をついた。

……どーやら、

あいつの勝ちみたいだ。

残念だったな、お嬢。

…………。
…………お嬢?




~~~~~~~~~~~



<時は遡り、同日 リーン邸廊下>

…………、

吸血鬼さん?

何処に行く

おつもりですの?

……あんたか。

痛む頭を抑えながら、

待ち構えていたように

現れた相手へ向き直る。


その姿を労るように

フィリカは眉をひそめてみせた。

ほら、まだリバウンドが

収まっていないじゃないですか。

部屋に戻って

安静にしていてくださいな。

…………俺は、

カノンたちのところへ行く。

行ってどうするのです?
!!

そのような状態で、

貴方が満足に魔術を

行使できるとは思えません。

それに……

貴方はカノンを守るどころか、

危害を加え、そして守られました。

呪いのせいとはいえ……、

その事実は変わりません。

また、守られに行く

おつもりですの?

………………。

それなら、せめて魔巧具が

手元に来るのを待って……、

呪いの発症のリスクを

無くしてから、

彼女と行動を共にするのが

筋ではなくて?

それは……できない。
何故です?

ロージアまでの道中で、

また…………刺客に

襲われないとも限らない。

つまり、自身で行った契約の、

痛みを抑えるために

着いていくと?

違う。

…………………。

契約を抜きに……俺自身が、

あいつに着いて行くべきだと、

そう……、考えているからだ。

それに……あんたの言う通り、

俺はカノンを守れた試しがない。

でも……だからこそ、

証明しなければならない。

…………。

…………そうですか。


貴方の言い分はわかりました。

しかし――――

私たちを振り払えなければ、

それを示すことなど

到底できないでしょうね

!!
――――、

フィリカの言葉を合図に、

イーリアスの背後へ

走り寄り、ナイフを振るう。

くッ、

一撃を躱し、

すかさず袖の中に隠している

ナイフを手に取る。

続けて放たれた二撃目をいなし、

間合いをとった。

(……走ってくるまで

 気が付かなかった。

 魔術を使われない方が

 俺にとっては厄介だ……。)

(そして、あのエルフは

 "私たち"と言った。

 つまり――――)

―、――――、

フィリカへ視線を向けると、

イーリアスへと手を翳し、

音の羅列を唱え始めていた。

(どの魔術を発動する気だ?

 この狭い屋内で、

 派手な風や炎は起こせないはず)

(……!! そうか!)

一つの推測を打ち立てると、

フィリカ目掛けて走っていく。

(来ますか、吸血鬼さん)

(私が新たな結界魔術を

 張り始めたことに気が付いたのは

 いい判断です。ですが……)


(エルフは魔術だけが

 能じゃないのですわ!)

詠唱の途中であるのに、

フィリカの影から

新たな闇がうまれる。

それはイーリアスを捉えるべく、

一直線に地を這いながら伸びていく。

なるほどな
!!
!!

イーリアスは、捕らわれる前に

タイミングよく床を強く蹴り、

宙で弧を描くように

体を反らせて跳躍する。


その最中、パシュアの足元へ

ナイフを放って牽制すると、

着地をとってから走り去っていた。

(お嬢の魔術と精霊術を

 見抜いていた、か……。)


……逃げられたな。

どうする、お嬢?

…………。
待機か。

……りょーかい。

詠唱を続けたまま、首を横に振った

フィリカに肩をすくめてみせると、

窓から正門へと続く中庭へ目を向けた。

さて……、あとは

お嬢の結界と魔術師の足、

どっちが早いか、勝負だな。



~~~~~~~~~~~



(エルフが精霊術を扱えること……

 それを知っていたとしても、

 魔術と同時に扱えることまで

 知る人は、そうそういません。)

(これも、あなたの魔力感知の

 成す業なのか、

 単純に、早く

 カノンと合流したかったのか、

 もしくはどちらともなのか――――)

……ふふっ、

失敗から目を背けずに

立ち向かうその姿勢、

悪くないですわ。

がんばってくださいね、

イーリアスさん。

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