いかに主は導きたまうか。

4.Haptic Device 感圧体。

エピソードの総文字数=3,098文字

  『死者は、すべてをあとに残して去らねばならない』
  この事には本当にウンザリさせられる。大いに骨を折って苦労の挙句に手に入れたものを人に渡さなければならないのだから。其の者が、賢いか愚かかを誰が知り得よう。然(しか)るに私の持ち物は、すべて誰かに委ねられられることとなる。これほど、がっかりさせることはない。人生を費やして知恵、知識、技能を求め獲得したとしたとて何にもならない。何の努力もしなかった者に、私の労苦の成果の全てを、無償で譲らなければならないとは...。これは馬鹿げたことであるのみならず、非常に不公平なことだと思う。(伝道の書2:21 )*[意訳:ByMe ]from ”Lindsell Study Bible”
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  東京から大阪へ戻る際に、例の鉄道関係の仕事を支店の人間に移譲した。ボクより少し年配の課長さんを以降は窓口とする。引き継ぎの時、あそことの関係では、もう一本商売が必要であることを強く訴えた。現在のものだけでは万が一があれば、即座にあの会社との取引は終了してしまうためだ。妥当な候補として、〔スラブ軌道の補修剤〕というものを推進することを求めた。しかしながらボクのこの求めは、ものの見事に軽んじられ、放置されることとなる。あの場での感触は、彼には上から(ボクに)ものを言われること自体が気に障り、「とっとと仕事だけおいていけ」でしかなかった。心頑なに不貞腐れていた...。ボクは内心悔しい思いをしていた。どれだけの思いと行為で、あれが出来上がってきたと思っているのだと...。あれを失えば、会社にとって、どれだけの損失になるのかと...。
  また、ボクの提案するテーマは、皆目手の付けのようないものと、彼には思われたのだろう。確かに、銀座の会社は、既に他メーカーの製品を、その目的では採用していたのだから。これを当社品に置き換えるには、かなりのエネルギーと時間が必要となる。チャンスを伺うことを根気よくしていかなければならない...。また何より、その当時に、目的に見合う当社品は存在していなかったのだから、なお難しい。ボクの思いも虚しく、推奨のテーマは忘れ去られてしまう。
  しかし数年後に、この課長さんは泡を食うことになる。銀座の会社がこれまで調達を行っていたメーカーから、製品の購入ができなくなる事態が起こったからだ。結果、当社に大至急で同等品の開発を要請してくることになった。その時になってから、やっと製品の開発に手が付けられる。ボクが会社を去る時点では、ことの成否は明らかにはなっていなかった。ボクは、とても悔しい思いで状況についての報告を聞いていた。
【重要】これも天の演出に違いないのだ。『出来事に巻き込まれることなく見守る』『純粋な観照の姿勢』(気持ち離れて、ただ静観する)が求められていたのだ...。
「全くできんかった!」。マグマっとったね...。

蛇足:名古屋での取引の達成は、この課長さんによるものではない。


  Re: 感圧体
  ものごとは最初が肝心。健全な筋で進めなければならない。途中での内容変更、方向修正は基本あってはならない。下手に[辻褄合わせ]の妥協を行なっても、行き着く先は後悔にしかなりはしまい。ダメなものはダメなのだ。いい例が国民皆年金制度だ。「言っちゃおう〜」。1942年に戦費調達を目的として、それは始まっている。源泉徴収によるのが現実的だったのだろう。そして時は移り、その名目は変わっていった。制度設計を抜本的に見直すこともなく...。そして現在、それはどんな様子であろうか?...。受給開始の年齢が70歳に引き上げられそう...。さて「何故でしょうか?」。単純に紋切り型で考える人間には、然(さ)もありなんとなる。途中経過や理屈はどうでもいいのだ。要は、積分すれば【アウト】になるは明白である。茹でガエルの境遇は不健康なものでしかない。すでに歪みは表に現れ出している...。

  会社の第三事業部も同じ構造的な問題を持っていた。将来性が定からぬまま、事業継続がなされていたのだから。投資をした以上は、それに見合う回収マシーン足らねばならないはずだ...。(この話は以前にしている...)。ボクが、なんとかせねばと思った。全く違う市場へのジャンプしかない。それも高価格帯でかつ将来性のあるものへと...。

  初めての台湾訪問の帰り、飛行機の中であるアイデアを思いつく。ローラー仕様のものが製品にあった。帯電防止の目的でカーボンの練り込みが行われている。考えてみれば、加圧による体積変化で、抵抗値は変化するではないか...。このことを利用すれば、「インターフェイスマテリアルとして使えるんではないか?!」。ボリュームスイッチだ。市場はゲーム、VRが考えられた。考慮すべきは、導電ゴム市場の存在であった。多分、あれらの価格帯はいいだろう。
  しかし、こちは海綿体である。ゴムとは世界が違う。変形は、ゴムと比べれば、遥かに扱い良いではないか!。あの海綿体の穴は連続構造になっている。それもセルの分散は。かなり均等で、密度は安定している。体積変化は排気吸気が伴うので、あれの構造はブラスに働く。軋轢は少ないのでレスポンスは素晴らしいものとなる。素体はシリコンに変えてやろう...。「イケるかも?」とボクは思った。

  とても沢山の努力を長期で行った。特許も弁理士さんの手伝いの元作成をした。これの審査請求を行い[拒絶]になった折には、弁理士さんと二人して霞ヶ関に赴き、審査官を相手に直接の意見陳述もした。無事に査定をいただくことができる。

  社内向けに、分厚い企画書を作成する。絵入り満載のものを。こういったものでも、オリジナルになってしまう..。ほとんど誰も読んでくれはしなかった。キャリブレーションで抵抗値の変動は乗り越えられるとの弁は、自分でも笑わせてくれる。でも多分そうよ。

  試験機も当然に必要となる。これの設計図の入手が課題となった。内には、書ける人がいなかった。また、それを元にした実機の購入には資金の工面がいった。すべては、奇跡的な流れで叶うこととなる。しかし、ボクが退社の憂き目となり、十年越しの本テーマにおける努力は、すべて水泡に帰すこととなった。


追記:

退社する時に、あの特許をもらえないものかと社長に相談した。
『あれは会社のものっ!』と一蹴される。

夜、帰宅の途中、公園で瞑想するのだが、面白いアイデアが出てきた。球の上に麦わら帽子。関節の要領で自在に帽子は動く。鍔(つば)の上下に導電体をおけば、楽しいジョイスティックが出来上がる。模型を作って、皆に披露したこともある。

試験機は高額だったのだが、○○保険にて購入が叶うこととなる。誠に不思議な展開であった。測定結果は「使える」とのことだった。キレイな曲線になっていた...。

磁性流体とのカップリングで、感覚フィードバックをもたらすアイデアもあった。

時流を見る限り、導電性インクによるプリントがスタンダードになっているようだ。失敗であることが幸いであったのだろう。コストじゃ太刀打ちできない。何が幸いかは、分かったものではない。

再掲: コヘレトの言葉より。

『だれが知ろうか。影のように過ごす虚しい " つかのま " の人生で、何が人のために善であるかを』。

*これ..あと9回は出番あるから(w)。

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