変態魔法を極めたうちの妹はチートだった

第28話「これ以上はダメよ! この子に手を出さないで!」

エピソードの総文字数=7,270文字

 月光に照らされた、桜町ふれあい公園――
 激痛にもがく黒装束の男の脇で、白装束の男が笑みを湛えて佇んでいた。
「ククク……」
 白い装束に白い仮面――
 【暗殺者ギルド】の中でも、選ばれし者にしか許されない【アサシン部隊】の正装である。
 彼が手に握るのは、ほんの小さなナイフ。
 柄から刃まで全て――黒装束の男の血で赤く濡れていた。
「…………」
 白い仮面の男は、引き裂いた黒装束の生地を捲り上げ、左肩を覗き込む。
 そこには蛙を象った刺青があった。
 羽音神忍軍に属する者は、みんなこの位置に自分の里のシンボルを彫り込んでいる。
 蛙の意匠は【雨の里】のものだ。
 白い仮面の男は、その蛙の側にナイフの刃を差し込んだ。
「っ、ぐぅあああぁっ!」
 悲鳴に構わず、仮面の男は粗末なナイフを忍びの肩肉の中に埋めていく。
 彼の目的は、直径三センチ程度のこの蛙の意匠をくり抜くことだ。
 断面をまっすぐにせず、わざと刃を乱暴に動かして円錐状にぐりぐり抉っていくのは、その方が彼にとって"気持ち良い"からだ。
「クッ……ククク……」
 肉を抉られる痛みに若い忍びが苦痛の声を上げる度、仮面の男の下半身に血液が集まっていく。
 彼は――いや、白い仮面の"彼ら"は、こういった嗜虐的な行為に対して性的昂揚を覚える者たちの集まりだった。
「――っ、ぎぃあああ゛ぁぁあ゛あぁぁっ!!」
 わざとめちゃくちゃに刃を突き回して、脂肪層をズタズタに荒らし、筋繊維をガリガリ断っていく。
 目的は蛙の刺青を抉り取ることだが、簡単に目的を達してしまってもつまらない。
 この公園には強力な結界を張ってあるし、邪魔が入ることはない。
 時間はたっぷりあるのだから、ゆっくり長く楽しむべきだろう。
「久しぶりの蛙……しかも【紋】入り……」
 仮面の男は息を荒くする。
 この蛙の刺青を抉り取って持ち帰れば、仲間から称賛を浴びるだろう。
 羽音神忍軍には十二の旗印があるが、一番人気はこの蛙だ。

 しかも、この忍びは若いとはいえ【紋】入り――
 すなわち、雨の里で最も強いとされる【天野家】の者だ。

 この忍びは逃げることしか考えていなかったので、命懸けのデスマッチという展開にはならず、少々物足りない気持ちはあるが……まぁ、些末なことだ。
 闘い(殺し合い)で満たせなかった欲望は、これからこの若い忍びの命の灯が消えるまで、ゆっくりじっくり時間を掛けて満たしてやればいい。
「ぐわああ゛あ゛あ゛っ! ぐうぅあああ゛あぁぁあっ!!」
 周囲の肉を潰すように――わざと乱暴に抉り取った蛙が、不意に<ぽとり>と地面に落ちた。

 蛙を潰した証。
 仲間へのお土産。


 大切なそれを拾い上げ――仮面の男は仮面の下で眉を顰める。
 せっかく抉った肉に土の汚れが付いてしまった。
「…………」
 仮面の男は手にしたナイフを手近なところに刺して、立ち上がった。
「ぐぎゃあああ゛あ゛あぁあ゛ああぁぁぁっ!」
 因みに、手近なところというのは、忍びの右の眼球である。

 この公園には結界が張ってある。
 しかし、水道くらいなら使えるはずだ。
 仮面の男は十メートルほど離れたところにある手洗い場に向かった。
 蛇口を回し、土に汚れてしまった忍びの肩肉を丁寧に洗う。
「……♪」
 綺麗になった戦利品を布に包みながら、これからどうやってあの若い【紋】入りの忍びで遊ぼうかと考える。
 屹立した股間に狂おしい疼きを覚えつつ、布に包んだ肉を懐に大事に仕舞おうとして――
「ちょっ!? ちょっとあんた大丈夫!?」
 いきなり聞こえてきた声に、思わず手が止まってしまう。
 慌てて忍びの方に目をやると、相変わらず惨めに地面に転がったままの彼の側に、見知らぬ少女がしゃがみ込んでいた。
「――!?」
 繰り返すが、この公園には結界が張ってある。
 第一世界の高名な術者による呪符は「これを打ち破れる第三世界人は、北の四家【粕谷家】だけだろう」という触れ込みだった。
(粕谷家か!?)
 白い仮面の男は、第一世界人だ。
 なので、第三世界の知識には少々疎いところもある。
 しかし、第三世界の四家・粕谷家についてはさすがに知っている。
 粕谷家及びそれに従う一派は【羽音神神社】を拠点とする、対魔結界と心霊魔術の専門家だ。
 第一世界人には馴染のない『陰陽道』なるものを修めているそうだが、それ以外にも精神魔術や精霊魔術などに造詣が深く、大規模な魔術の展開を得意とする。
 そして、この一派に属する女は『巫女』と呼ばれており、戦闘に赴く際には必ず白と朱色の装束を身に着けるという。
「…………」
 仮面の男は改めて、忍びの側にしゃがみ込んでいる少女の姿を確認した。
 いつの間にか現れた彼女は、水色のパーカーにデニムのショートパンツを身に付けている。
 第三世界では一般的な平服であり、白と朱色の装束ではない。
(いや、粕谷家ではないようだ……)
(じゃあ、一体……)
 得体の知れないこの少女をどうすべきか……
 すぐには答えが出せず、仮面の男の中に葛藤が生まれる。
「これ以上は駄目よ! この子に手を出さないで!」
 そうこうしているうちに少女は立ち上がり、仮面の男と忍びの間に入り込んだ。
 両腕を広げてこちらに立ち向かう姿に、忍びを庇おうという意志が見える。
「…………」
(素人臭い身のこなし……)
(これは一般人だな……)
 少女の一挙一動を注意深く観察していた仮面の男は、そう判断する。
 この少女がどうやって結界の中に入り込んできたのかはわからないが、戦闘に関しては彼女は間違いなく素人だ。
(一般人か……どうする?)
 この少女を殺すのは簡単だ。
 だが、仮面の男が籍を置く組織には「むやみに民間人を殺すべからず」という不文律の決まりがある。
 暗殺者ギルドという組織の中には「貧弱な民間人ごときを殺して粋がる程度の者は一流にはなれない」という考えが強く、"民間人殺し"は侮蔑の対象となる。
 任務の遂行にあたって必須の場合には「仕方ない」と判断される場合もあるが、今回の場合はどうだろうか。
(いや、今回のは駄目だろう……)
(この少女の殺害は、得策ではない……)
 殺さずにやり過ごす方法が、いくつも思い付く。
 というか、浮かんだ方法の中で最善のものがそもそも『無視』であった。
 この少女に一切構わず、この場を立ち去ればいいのだ。
(よし……)
 仮面の男は、あっさり結論を出した。
 動きの鈍いこの少女を無視し、瀕死の忍びを連れてこの場を離脱する。
 そして、邪魔の入らない場所に移り、今度こそ、あの忍びを楽しくいたぶり殺すことにしよう。

 仮面の男はすぐに行動に移る。
 少女の目では追えない速さで十メートルの距離を詰め、忍びの傍に移動した。

 ――と、その時、腹部に猛烈な痛みが込み上げてきた。
「――!? ぐっ……!」
 何の予兆もなく重い痛みに襲われた仮面の男は、思わず片膝をついてしまった。
 ついでにその拍子に、手に持っていた大切な布包みの戦利品を落してしまう。
「あれぇ? 消えた???」
 仮面の男の俊敏な動きに、やはり少女の目はついて来れなかったらしい。
 彼女の目には仮面の男がいきなり消えたように映ったらしく、彼女は慌ててキョロキョロする。
 それは、訓練を受けた仮面の男にとって鼻で笑ってしまうほどの鈍臭い仕草だったが、残念ながら仮面の男には今それを見ている余裕はなかった。
「……!?」
 彼は今、地面に片膝をついたまま、ぴくりとも動けずにいた。
 そして、彼をそうさせる強制力は、彼の『外』ではなく……彼の『内』に在った。
「あっ、いた!」
 振り返った少女が、仮面の男を見つける。
 そう、さっきまで少女は、忍びを後ろに庇うようにして仮面の男に対峙していた。
 しかし、仮面の男が忍びの傍に移ったことで位置関係が変わってしまった。
 今、少女は仮面の男の真後ろに立っているのだ。
「……ぐっ!???」
 仮面の奥から、男のくぐもった呻きが漏れる。
 目下、男は自分の体に起きた異変に翻弄されていた。
(な、なんでいきなり……)
 突然男を襲ったものは、厳密には"痛み"ではなかった。
 痛み自体は猛烈だが、それはあくまで付随するものであって、正体は別のものである。
 男を襲ったものは――凄烈な"便意"だった。
「ちょっと! もうやめなさいよ! その子から離れなさい!」
 後ろから少女の声が聞こえる。
 しかし、男は振り返ることさえ出来ない。
 少しでも動けば……間違いなく漏らしてしまうからだ。
(……くぅっ!)
 尋常でない激しい便意に動揺しつつも、男は術を発動させた。
 彼の属する組織には、便意のような生理的欲求を抑制する秘術が伝わっている。
 隠密術としては基本的なものなので、組織から白い仮面を与えられるほどの者でこの術が使えない者はいない。
 しかし、頼りの秘術は何故か発動しなかった。
「……ぐっ!?」
(き、効かない……!?)
(まさか、そんな馬鹿な……!?)
 この術が効かないなど、初めての経験である。

 全く和らがない排泄欲に戸惑い、抗おうと――仮面の男は再び術を発動しようとする。

「無駄よ! そんなの効かないんだから!」
 少女の発したその言葉に、仮面の男は心臓を掴まれた心地になる。
 この言葉の意味するところ――それ即ち、この体の異変を引き起こしたのが彼女だということだ。
(――なっ!?)

(これ(・・)はこいつが!?)

 仮面の男は自分の迂闊さを呪う。
 あまりに素人臭い動きをするから、つい見くびってしまった。
 だがやはり、この結界に踏み込んできたこの少女は危険な存在だったのだ。
 そして、認識が変わった途端、彼女に背を向けたまま一歩も動けないという今の状況に激しい焦りを覚えた。
「…………」
 ここで男の中に、先とは別種の『逃げる』という選択肢が現れる。
 幸いなことに、彼はここから安全に離脱出来る"とっておきの魔道具"を所持していた。
 便意は限界ギリギリで、恐らく身じろぎ一つで決壊するだろうが……この結界をものともしない上、秘術に対抗する術まで持つ者に背後を取られているのはあまりにまずい。
(いや、しかし……)
 ただ、離脱を考えてなお、男は未練を捨てきれなかった。

 この若い忍びを嬲り殺すこと。
 蛙を刻んだ肉を戦利品として持ち帰ること。
 それを仲間に見せて、称賛を浴びること――……
(こいつは、絶対に連れて行かなければ……)
 『膝をついた拍子に落としてしまった戦利品を拾い、忍びを連れて魔道具で離脱する』――
 そう、計画にはほとんど変わりがない。
 変わったのは、"とっておきの魔道具"を使うことにしただけだ。

 仮面の男の中で作戦が纏まったところで――

<ドカッ!>

 大きすぎる衝撃が彼を襲った。
 決して小柄ではない体躯が、地に転がった忍びの上を越えて向こう側に吹っ飛んでいく。
 わけのわからないままに、全てを超越した激痛が男の脳裏を塗り潰した。
「――っ、ぐっぎゃああ゛あ゛あ゛ああああ゛あぁぁああああっ!!」
 片膝をついた状態の仮面の男の股間を、少女が思いっきり蹴り上げたのだ。
 腰の高さまで足を後ろに振り上げ、たっぷり溜めを作っての容赦ない一蹴だった。
「こらぁっ! その子に手を出すなっつってんでしょうが!!」
 地面をゴロゴロ転がりながら悶絶する仮面の男を、少女は腰に手を当てて一喝した。
 それからまた忍びの側にしゃがみ込み、声を掛け始めた。
「ちょっとあんた! しっかりして!」
 はっきり言ってその姿は隙だらけだが、隙だらけという点では今の仮面の男ほどではない。
「ぐわああ゛ぁぁっ、ぐあああ゛あぁぁっ、ぐわあああぁぁあ゛ぁっ!」
 一撃を受けた股間の激痛は僅かにも緩むことなく、仮面の男は白装束を土塗れにしながら、地獄の苦しみにのたうち回る。
 因みに、身じろぎ一つで決壊するところまで追い詰められていた便意の限界は当然のように突破され、男の股間には土とは違う汚れが染みていた。
 男が地面を転げるたびに、汚れの面積は広がりを見せ、周囲に異臭を撒き散らした。


* * *


「ああ……どうしたらいいのかしら、これ? 動かしていいの???」
 獣のような声をあげて苦しむ仮面の変態に構わず、少女――竹沢由美子は目にナイフが突き刺さったままの忍者装束の男を前にオロオロする。
「……はぁ……はぁっ……」
 若い忍者は既に虫の息だ。
 救急の知識のない由美子は、こんな重傷者に対して何を為すべきかわからず、とりあえず彼の股間に触れてみる。
「――っ、ヤバイわ! 勃起してる!」
 瀕死の重傷を負った時、子孫を残すという人の本能によって男性器が臨戦態勢になることがある。
 その現象が今まさに彼の体で起こっていた。
 この忍者の容体が最悪だということを再認識し、由美子はますます慌てる。
 それでも「とにかく救急車を呼ぼう!」という考えに至り、ショートパンツの後ろポケットからスマートフォンを取り出した。
 しかし、何故か電話が繋がらない。
「ハァッ!? なんで圏外なの!?」
 それは結界が張られているせいなのだが、そもそもここに結界が張られていることを知らない由美子にはわからない。
「ど、どうしよう……」
 ここには今、由美子の他には瀕死の忍者と、股間の痛みに悶える仮面の変態しかいない。
 どちらも圏外をどうにかしてくれそうな雰囲気がなく、由美子は途方に暮れる。
(公園の外に行って、誰かに通報してもらう?)
(ていうか、なんで今日に限ってこの公園、誰もいないのよ!?)
 ここは朝昼夕を問わず、わりと人の多い公園だ。
 いつもこの時間帯になれば、変態たちが園内を闊歩しているのだが……
 今日に限って、どれだけ『今朝から一度でもおしっこした人』で検索を掛けても反応がない。

 引っ掛かるのは瀕死の忍者と、股間の痛みに悶える仮面の変態の二人だけだ。

「あー……どうしよう???」
 公園の外に助けを呼びに行くとなると、一時とはいえこの忍者をここに置き去りにするしかない。
 となると、さすがにあの変態をこのままにはしておけないだろう。
(…………)
(んー……よし!)
 少し考えて、由美子は変態の方に向かう。
 とりあえず、この変態が気絶するまで股間を蹴ってみることにした。
 気絶さえしていれば、ここに放置しても安全だろう。
「あ゛あ゛あああぁぁ! ぐわあああ゛あぁっ!!」
 恐ろしいことを決意した由美子が近付いてくるのにも気付かず、変態は相変わらず苦しんでいる。
 あまりの痛がりように、由美子は能力を使って変態の股間の状況を調べた。
「なんだ、随分痛がるけど、別にタマが潰れてるわけじゃないじゃん。でも、潰したらきっと気絶するわよね……」
 変態魔法によって性器の傷の治療が可能な上、女性であるがゆえに共感に乏しい由美子にとって、睾丸の破裂は大したことではない。
 むしろ彼女的には、タマ蹴り――金的攻撃はかなりの"萌えシチュエーション"と言っていい。
 たまに"そっち系"動画をオナニーのおかずにすることもある。

 これまでに変態魔法を使って、何人ものレイプ魔の股間を蹴っ飛ばして被害者女性を救ってきた由美子だが、「せっかくだし一回くらい潰れるまで蹴ってみたい」というのも素直な気持ちだった。


 由美子が軽い調子で発したその言葉が耳に入ったのだろう、

「――ヒイイィィッ!!」
 変態が喉を引き攣らせて、一際大きく身悶えした。

 そして、これが彼にとって幸運だった。
 この時の衝撃によって、彼が服の中に忍ばせていた、"とっておきの魔道具"が発動したのだ。
「――ん?」
 いきなり変態の身体が光に包まれた。
 訝しんだ由美子は足を止める。
「っは、がぁっ……こ、殺し、コロしてやる……っ、は! おまえ、だけは……ゼッ、たいに……!!」
 仮面の向こうから怨嗟の籠った声が聞こえたが、忍者の容体が気に掛かっている由美子は耳を貸さない。
「いやいや、ちょっとタマ潰させてよ? あたし急いでるの! 救急車を呼びに行かなきゃ――って、あれっ?」
 白い仮面の男が、突然フッと消えた。
 由美子はすぐに能力を使って変態の位置を特定しようとするが……由美子の感知出来る500メートル圏内に反応はない。
「……消えた?」
 変態の反応を探しつつ「???」としばらく疑問符を浮かべていた由美子だったが、すぐにそれどころではなかったことを思い出す。
「そうよ、救急車!」
 変態が消えたのなら、それはそれで都合が良い。
 公園の外に駆け出そうとして――その前にもう一度だけ若い忍者の状態を確かめる。
「はぁっ……はぁっ……やった、戻った……」
 彼の口から、唐突に意味のある言葉が発せられた。
 由美子はハッとして、彼に声を掛ける。
「ちょっと! あんた大丈夫!?」
「ああ……なんとか……」
 相変わらず右目にはナイフが突き刺さっており、どう見ても大丈夫には見えないが、本人はそう答えた。
「あたし、救急車呼んで来るわ! ちょっとだけここで待ってて!」
 そう告げる由美子に、彼は、
「いや……それより……」
 と言って、手先のない腕で、切り落とされて転がっている自分の手先の方を示した。
「オレの手に付いてる腕輪の……四角い穴を、吹いてくれ……」
「――へっ?」
「笛に、なってる……仲間を呼ぶ、笛……」
「! なるほど! わかったわ!」
 理解した由美子は、多少躊躇しつつも転がる手先を拾い上げ、手首の腕輪の笛を吹いた。
 だが、笛だというのにいくら吹いても音がしない。
「ちょっと! 音が鳴らないんだけど!?」
 そう訴えつつも、しつこく穴にフーフー息を吹き込み続ける。
「…………」
 彼は何も言わない。
 意識を失ったのか、それとも命の灯が消えたのか……
「ちょっと!? ねぇ、しっかりしてよ!!」
「…………」
 呼び掛けても返事のないことを不安に思いながらも……
 他にどうしていいか分からず、由美子は彼の腕輪に息を吹き込み続ける。

 そうして一分ほど経った時――
 どこからか音も立てずに、彼とお揃いの黒装束の男が二人現れた。

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