超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

【三日目】そして、おっさんは言い出した。「愛こそ全て」

エピソードの総文字数=2,661文字

「な、なあ、羽里。

 もう一回、確認だが、やんなきゃダメなのか……。

 全校生徒と職員が見てる前で、その……召愛にペロペロをだ」

「当然です! これは校則なのですから」
「うむ、校則なら仕方あるまい」
「こ、コッペ。こうなったら、やるしか、ないのでは……」
「そ、そうは言うけどな……」
「その――私は、明日からも、君とこの学校に通いたい。

 君の弁当を毎日作ってあげたいし、それを一緒に食べたい。

 もう一度、そういう日々を取り戻したい」

「わ、わかったよ……。

 いいか、こりゃ、お前がやれって言ったんだからな……!」

「それでは反省が足りません。もっと自主的に!」
 くそう、このハイパー真面目、石頭ちゃんめが!
「お、おう、なら、やってやらあ。

 おい、召愛、良く聞け、俺はお前をペロペロしたい!

 めっちゃしたい。30ペロペロくらいだ――

「さ、30回もか……?」
「おう、35回だ。

 おい――どうだ、羽里、これでいいか!?」

「大変結構です!!!!!!」
「よし、大変結構だそうだぞ。

 ほら、召愛、そんな離れてたら出来ねえだろ。ち、近づけよ!」

「う、うん……」

 こう、あれだ。

 ほんの数十センチの距離まで、近づいて――向かい合ってしまったわけだが。

 召愛は、俺と目を合わせるんだが、すぐに恥ずかしそうに逸らしてしまってだな。それでも、がんばって俺と目を合わせて来ようとしてるわけでな。

 その表情や仕草が――ああ、なんてこった。

 俺はこいつを、可愛いと感じてしまってる。とてつもなく、愛しいと思ってしまってる。そして、そんな可愛くて愛しい相手をだな。これから、ペロペロするわけでだな。


 おい、心臓。俺の心臓。

 ちょっと速く脈打ちすぎてませんかね?

「じ、じっとしてろ。あと、目は閉じてしようぜ?

 なんか、その、恥ずいから……」

「…………」
 そして、俺は召愛の頬に顔を近づけてだな。

 やった。


           ――ペロペロ

「はひゅうっ!」
 と、召愛の奴め、飛び上がらんばかりに、体をビクッとさせてな。
「そ、そんな嫌がることもねえだろうが……」
「う、ううん、嫌ではない。ぜんぜん嫌ではない。むしろ――
「――すごく、気持ち良かったから、驚いてしまっただけだ……。

 もっと、して欲しい」

「な……!」
 俺はな……。

 はい、自分の顔面がすんげえ熱くなっていってですね。

 たぶん、茹で蛸みたいになっちまってるんだろうな、と自覚しちゃったよ。

「何をしているのです。

 あと34回残っていますよ!!!


 ――ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ


 と、する度にだな――

「ふぁっ――」
 とか。
「んっ……!」
 とか、微妙な反応するもんだから、俺の少年ハートは尋常ではいられなかったのは、言うまでもあるまい。

 だからこそ、無心にペロペロするしかなかったのだ。

 

 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ!

「良く出来ました。そこまででよろしい!」
 で、俺が顔を離そうかと思ったんだが――
「君ばかりずるい――」
 と、瞼を閉じたままの真っ暗な視界の中、召愛がそう言ったのが聞こえ。

『ずるいも何もないだろうが』

 なんて言い返そうとしたが、口を開く前に、唇が〝何かに〟よって塞がれた――物理的にだ。


 その〝何か〟は、とてもとても柔らかな物で、しっとり湿っていて、温かく感じた。

 それが、〝召愛の唇〟で、これがキスである、と理解した時にはもう、召愛の両手が俺の肩に添えられていて。

 俺は立ち尽くし、ただ、彼女の手を握りかえして、されるがままになるしかなかった。

 

 信じられない音量で、心臓が高鳴っていた。

 周りからも、声援が聞こえた。なんで声援なんか上がってんだと思った。口笛を吹いてる奴もいる。拍手まで聞こえる。馬鹿野郎、拍手までしなくたっていいだろ。


 ああ、でも、それより馬鹿なのは、たぶん俺たちだ。

 入学初日からアホばかりやってたが、今日のは特大だ。

 だが、気にするな。どうせ変人コンビ扱いだ。

 ならば、これからだって、盛大にこの道を突き進んでいけばいい。

「やって……しまったな」
 顔を離して開口一番がそれだった。
「あ、ああ。まあ、な……」
「ふふっ。でも、キスもとても気持ちが良かった。

 あとで二人になったら、またしよう」

「なっ……」
「恥ずかしい奴らね……。まったく……」
「そろそろ予鈴だが、しかし――」
 と、波虚が目を向けたのは羽里だったのだが――

         

……………―――

 例によってフリーズして、口から魂が抜け出していた。
「はっ!

 で、では、みなさん、ホームルームが始まります!

 教室へ移動しましょう」

 三日ぶりの我が教室だった。

 たかが三日ぶり。

 それでも、まるで何年も帰って来られなかった場所に、帰ってこれたような、深い感慨があったね。


 そして、自分の席に座った。窓際だ。一つ後ろには、召愛の席。

 俺の居場所だ。


 ホームルームが始まり担任が喋り出してすぐ、召愛が俺の肩を後ろから叩いてきた。


「学校が一段落ついたところだし。そろそろ、トランプ大統領あたりから会談がしたい。今週末あたり、セッティングしてくれないか」

 真顔でこれだ。

 入学したての頃だったら、俺は半笑いで、肩でも竦めてたろうが、どうしてか――


「――」
 ――今はすごく普通に笑っていた。
「どうしたんだ、コッペ。そんなニヤニヤして」
「さあな?」
 なんて言いながらも俺は考えていたんだ。


 もし将来、俺が子供電話相談室の相談員になったりした時に、こんな質問を受けたとしよう。


『僕は16歳の男子高校生です。実は今日、人生で初の彼女ができてしまいそうな運命を不本意にも感じてしまったのです。しかし、その相手が、イエス・キリストの生まれ代わりを自称しだしたのですが、どうすればいいでしょうか?』


 そん時、俺はこう答える。


『運命に向かって直進しろ。全力疾走で』とだ。

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