ままならぬ日々

徳川埋蔵金の発掘

エピソードの総文字数=1,331文字

埋蔵金発掘しに行こうぜ。徳川埋蔵金
 道をぶらぶらと歩いている最中、庄太郎が突拍子もないことを言い出したので、私は驚いた。確かに私たちは暇を持て余しているが、まさか徳川埋蔵金の発掘とは。
別にいいけど、埋蔵金なんてどこに埋まっているの?
正確には分からないけど、多分、この近くにあると思う
この近くって、庄太郎、ここは四国よ。徳川埋蔵金なんだから、埋まっているとすれば、東京とか、愛知とか、あのあたりでしょう
アホ。徳川家康は天下統一を果たしたんだぜ? 全国各地に埋蔵金が埋まっているに決まっているだろう
でも、埋まっている正確な場所は分からないんでしょう? どうやって見つけるの?
アホ。探している人間が『ここにある』と思った場所に決まっているだろう。そんなことも分からないのか
(……そんなものだろうか)
 以降、庄太郎は徳川埋蔵金についてではなく、先週末にマッサージ店でマッサージを受けた時の話をした。そこは簡易な性的なサービスも行う店だったらしい。サービスがマッサージのみの店に行きたかったが、入ってみるといかがわしい店だった、ということではなく、庄太郎は最初から性的なサービスも込みのマッサージが目的でその店を訪れたという。
その店では焦らしのテクニックを効果的に駆使していたね。いきなり客の股間を触るんじゃなくて、徐々にマッサージする箇所を股間に近づけていったんだ

 庄太郎は自らが受けたマッサージの模様を、マッサージ室に入った場面から順に語り始めた。臨場感溢れる語り口だったが、庄太郎は致命的なミスを犯した。あまりにも詳細に語りすぎたため、話が冗長になったのだ。私は次第に退屈になってきた。


 必死にアクビを噛み殺していると、庄太郎の足が止まった。目の前には薬屋があった。いかにも昭和という感じの、古めかしい、木造の建物だ。

入ろうぜ。埋蔵金発掘に役立つものが売っているかもしれない

 そうは思えなかったが、退屈から逃れたい一心で、庄太郎の後に続いて入店する。


 店内は狭く、薄暗く、埃っぽかった。中央の棚には液体や粉末が入った小瓶が、内壁に沿って設えられた棚には武器の類が、それぞれ陳列されている。

へえ。薬だけじゃなくて、武器まで売っているのか。面白い
他ではあまり見かけないものが多いね。図鑑でしか見たことのない武器ばかり
 私も庄太郎も、薬よりも武器を熱心に見た。個性的な形状のものが多く、大いに目を楽しませてくれたが、
(……武器というより、拷問器具に属する商品が多いのはなぜなのだろう)
一つ買いたいものがあるんだが、店員がいないな
 レジカウンターの前で庄太郎が呟いた。カウンターの内側は無人だった。
仕方ない。埋蔵金を発掘しに行こう
 店を出た直後、庄太郎の服の内側からなにかが滑り落ちた。

 落ちたものを素早く拾い上げ、再び服の内側へ。

……
……
 庄太郎は意味深に微笑んだかと思うと、私に背を向け、全速力で走り始めた。
庄太郎、待って。あなたがさっき落としたものは、なんなの?
 庄太郎を追って走った。庄太郎は足を止めるどころか、ぐんぐん加速する。距離は見る見る開いていく。
(庄太郎が盗んだのは、武器なの? それとも薬なの?)
 店の商品を盗んだことよりも、そちらの方が問題に思えた。

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