超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

遊田イスカは言った。「愛とは時に、フライング土下座で、すごくダサい」

エピソードの総文字数=2,438文字

          羽里学園のグループホーム寮。


 家出する先のあてがあると、俺を案内してきた遊田の目的地は、なんと、ここだった。

「おい、遊田。泊めてくれそうな友人ってのは……」

「とーぜん、心の友に決まってんじゃない」

 と、俺を指さしやがった。

 色々と悪い予感がして、溜息を吐きたくなったが、今さら、家に帰れと言うわけにもいかない。


 んなことすれば、それこそ、翌朝に殺人少女Aの友人に成っていかねない。

 今は、遊田にしてもオヤジさんにしても、頭を冷やす時間が必要だ。

「コッペなら無害でしょ。

 ラブホ前でも、ゴンドラの中でも、何もしてこなかったし」

「俺はむしろ、お前に襲われるんじゃないかと懸念してんだが。

 突発的に『召愛への復讐だ』なんつってだな」

「あ、それは良い考えね」

「これだよ……」

 とりあえず中に入ろうと、鍵を開けた。

 学生証のIDカードがカードキーになる。


 遊田にも、同じように学生証のカードを読み込ませたよ。

 これをやらないで部外者が寮に入ると、派手に警報が鳴ってしまう。


 そして、俺たちがとりあえず居間へ行った時だ。


 二階から誰かが階段を駆け下りてくる音が聞こえてきた――


  ――ドタドタドタ!

  ――ドタドタドタ、

 ――ドタドタドタ!

 そして――
「――」
 召愛さん、すんげえ心配してたような顔で、登場。

 そして、遊田を見るや――

「――!?」
 訳がわからない様子。

「よお、ただいま」

「な、何時だと思ってるんだ。

 連絡もせずに失踪してしまって、コッペ!」

 そういや……!

 歩いて三分のスーパー『ツルカメ』に飲み物を買いに行ったまま、消えちまった事になるんだな、俺……。

「あ、ああ。すまなかった。

 込み入った事情が重なったんだ。連絡するのを忘れてた」

「いっぱい電話したけど、通じなかったんだぞ!」

 慌ててスマホを確認した。

 着信履歴が15分ごとにあった。

 おお……、これはマジに済まんかったぜ……。

「こんな夜中までほっつき歩いて、君は何をしてたんだ!」

 なんか、さっき遊田の家でも見たような光景的である。

「それについてはだな。

 召愛にも事情を理解してもらわにゃならん。

 落ち着いて話し合おう。


 たぶん、ちょっとばかし、齟齬が発生しかねないというかだな……。

 冷静に、聞いて貰いたい合いたいことがいっぱいある」

「何をしてたかなんて――」

 と、遊田が横から口だしてきてだな。

 例によってこう、ひっついてくるわけだ。

「――この状況見れば、一目瞭然なんじゃないのぉ?」

 さすが遊田だぜ。

 受けれる恩を、全て受け、それを仇で返してくるスタイル。


 まさにクズ王者の貫禄。

 そこに、しびれないし、憧れたくない。

「離せ、こら、離れろ遊田」

 俺は、ひっついてこようとする遊田を押し返したね。

 顔をギューギューとだ。


 そしたら。

「い、痛いっ。ちょっと、痛いわ、ダーリン!」

 そういや、こいつオヤジさんから顔面殴られて、怪我してるんだったぜ。

「うっ、怪我してるなんて、ず、ずるいぞ、ちくしょう……。

 つーか、お前の自業自得だ!

 召愛な、わかってるだろうが、これは、こいつの嫌がらせであり、演技だぞ」

「何を言ってるの、ダーリン。

 あたしたちの愛の証拠があるのに?」

 とか言って、遊田は自分のスマホを取り出してだな。

 父親をぶち切れさせた例のラブホ前での写真を見せようとして――。


 俺は速攻で阻止!

 スマホ取り上げて自分のポケットに突っ込もうとした――のだが……。


 それをさらに、召愛さんに阻止されちゃいました……。


 召愛の奴め、素早くその画像を見てだな。

 なんかこう、目が据わっちゃいました。

「……」
 この目である。

『ハンター×ハンター』でゴンがネフェルピトーを粉砕したときの目に、そっくりだと俺は思ってしまった。


 そう、つまり、殺意的な何かが心の奥底で、激しく燃え上がってる目である。

「おい、召愛。説明しとくけどな。

 俺は、何がなんだかわからない内に、ホテルの前に連れてかれて、強引にひっつかれて、撮とられただけだ。

 ほら、その写真の俺を見てみろ。凄く嫌そうな顔をしてるだろう?」

「……」

「君は、鼻の下を伸ばしてるように見えるのだが?」

「錯覚だ。それに、俺たちは、ホテルの中に入ってない」

「では、この時間まで何を?」

「デートよ♪」

 遊田ェ……。

「デートじゃないぞ。

 こいつの我が儘に付き合って、動物園に行って、漫画喫茶で映画を見て、そのあと観覧車に乗っただけだ」

「夕涼みの動物園で、仲良く語らった後で、漫画喫茶のカップルシートで6時間も隣り合わせで映画を見て、その後は、二人で天高く舞い上がるゴンドラに乗り、ロマンチックな夜景を密室の中から眺めてたわ」

 遊田ェ……。

「コッペ。それは物凄く、テンプレなデートというのではないか?」

「あ……。はい」

 俺は正直に認めてしまいました。
「あの、すみませんでした。召愛さん……」

 つーか、なんとなく自然に、謝っちまったが。

 なんで俺は謝ってるんだ……。

 

 別に召愛と付き合ってるわけでもないのに。

「なぜ、コッペは謝るんだ。

 私と君は、恋人同士というわけではない。

 君が誰とデートしようが、私がどうこう言うべきものではない」

 おお、さすが超絶良い奴、言うことが違う!

 物わかりが、およろしくて、大変結構!

「そ、そうだよ、な?」

「ああ、そうだとも」

 と、召愛はいきなり自分のスマホをいじりだした。

「な、何をやってるんだ、召愛さん?」

「私はただ、日常で手に入る毒物の検索をしながら、

 明日からの君の弁当はどんなメニューにしようか、じっくり計画しておこうと、レシピを探してるだけだ」

「……」

「いや、召愛さん様、それなんか……あれだよな?」

「私のことなど、気にしなくて良いいぞ? 

 まして、もう一度大きな声で謝ったりする必要なんかないぞ?」

「……………………」

「も、も……申し訳ありませんでしたー


          俺はフライング土下座した。













「……ダサッ!」

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