リバイアさんとネフシュたん ~へブル人への手紙を護る者~

我、ここに在れり

エピソードの総文字数=593文字

 高校生ボーは、幼馴染から借りたままの聖書を返すために重い狙撃銃を携えて紀元65年のイスラエル周辺の地で敵を待ち伏せしていた。
 見渡す限りの荒野と満天の星空は時として人を詩人のように仕立てるのか、彼は狙撃銃のレティクルを見つめながら心の中で、こうつぶやいた。
 
 神がお据えになった乾いた大地に一人這いつくばって息を潜めてじっと敵を待つ。
 冷たい鉄の長筒を携えながら。終わりの時など考えもせず。茫漠たる世界の中で。
 敵である魔物ですらこんなことはしない。
 荒野に息衝く動物は意気揚々と自由気ままにどこかへと走り去っていき、そして彼らのねぐらへと帰っていく。
 荒野に吹き付ける風は砂を巻き上げながらあてもなく駆け抜けて、そして定められた場所へと拭き溜まる。
 夜空にある星々は漆黒の奥底から、眩い輝きを静かに放ちながら、人の一生をはるかに超えた果てのない時空の中で律動し、天空に無限の軌道を描き続ける。
 天の御使いらは、それらを楽譜として神の偉業を称える賛美の歌を大いに合唱する。
 その澄んだ歌声は高ぶる波となって全宇宙に遍く響き渡り、生きる意味と目的とを、世に在る小さな生命のひとつひとつに至るまで授け示す。
 人間だけが、世界の営みに何ら参与せず、与えられたことをなすために、満天の星々の下で、夜風に震えながら、ただひたすら耐え忍んで、乾いた大地に這いつくばるのだ。

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