黄昏のクレイドリア

0-4

エピソードの総文字数=1,467文字

<ライザー邸 応接室>
うーん、美味しい!
このハーブティー、
とっても美味しいです!
たしかに、深みが違う……
はっはっは、
お待たせしてしまったが、
喜んでもらえたのなら何よりだ。
長机に並べられた茶器を

各々手に取り、中身の茶を味わう。

花園を想起させる甘やかな香りを楽しむ中、

男はじっと眉を潜めて口を開いた。

失礼、お手洗いを
お借りしたいのですが
あぁ、部屋を出て、
右手にいった突き当りですよ。
ありがとうございます。
ばつが悪そうに出ていくレイモンドを見送ると、
ネイトは再びカノンへと視線を戻す。
さて、一つ

お伺いしたいのですが……

あれだけ持ち上げられた
常勝の女神も、戦がなければ
国の犬に良いように使われるしか
食べる道がないのかな?
!!
何故バレた?って顔をしてるな。

装いを変えたって、振る舞いでわかるよ。


ぼくだって貴族の端くれだからね、

騎士は珍しい存在じゃない。

舐められては困るかな。

…………敵とわかっていて、

なぜ私達を招き入れたのです

ここ最近話し相手がいなくてね。
少々人恋しくなっていたんだ。
それに……
きみたちを

新たな生贄にできるからね。

何を言って……
?!
手に持っていたティーカップを

テーブルに置こうとしたが、

力がうまく伝達できず、カップを取り落とす。

上体を支えられないまま、

ユーリはテーブルに突っ伏した。

 …………っ、

(力が、入らない……!!)


!?
貴方、まさか……
ちょっと薬を盛らせてもらった。
大丈夫。お嬢さんには
何も入れてないよ。
きみには話があってね
……話?
提案というやつさ。
騎士なんかに顎で使われてるくらいだ、
ロクな働き口がないんだろう?
どうだい、きみを無碍にした
国の「犬」なんかにしっぽを振らずに、
アークライト家の傘下に入らないか?
アークライトって……

あの魔術師の名門の?

あぁ、そうだ。

彼等に協力すると言えば、

余らせているアーティファクトの

おこぼれに預かれる。


こんなちっぽけな世界に我慢せず、

来るべき時に備えて、

自身の力を解放できるんだ。

首から下げた、柘榴のように深い赤色の

宝石のペンダントを手で弄びながら、

ネイトはカノンへ笑みを浮かべる。

もちろん、心配せずとも

ぼくが彼らに君を紹介してあげよう。

常勝の女神がぼくのパートナーになれば、

こちらも箔が付くというものだ――

……ふふっ、
ごめんなさい、あんたの
言い草ですべて合点がいっちゃって。
おかしくって、つい
何を……
うっかり空から落ちてきた

大きなチャンスに浮かれて、

身の丈に合わない(ちから)を何度も扱ったんでしょ?


失敗しても自分が傷つかないように、

周りの人間にスケープゴートの術をかけてね。

ちっぽけな世界?
力の解放?
勘違いもいい所だわ。
世界をちっぽけにしたのは、
自分なのに。
貴様……!
激昂したネイトの感情に呼応するように、
カノンとユーリの二人を囲んで炎が現れる。
(……!! 正気かこいつ、

 自分の館が燃えるのも

 お構いなしなのか?!)

調子に乗ったね、お嬢さん!!

紛争では随分と

もてはやされたそうだが、

それは2年前まででやめておくべきだったな!!

…………。
(あ…………)
炎は燃え盛り、ごうごうと音と立てて

勢いを増していく。

ユーリはかつて偵察に向かった3人が、

順々に目の前で火だるまになっていく

光景を脳裏に蘇らせていた。

(おれも、ダンたちと同じように――)
恐怖で声もでないか。

哀れだな……

死ねぇッッ!!
天井を焦がすほどの炎が、

横で動けなくなっていたユーリごと、

カノンへと躍りかかる。

同時にそれは爆発を生み、

衝撃は窓のガラスを粉々に砕いていった。

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