超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

召愛は言った。「裏切っても良い」

エピソードの総文字数=2,716文字

 というわけで。


 俺はフライング土下座した後。

 帰りが遅くなった事情を召愛さん様へ、事細かに説明しました。


         (正座で。)

「なるほど……。コッペらしいというか。なんというべきか」

 承伏し切れなそうな様子ではある。

「私としても、イスカさんのクラスでの立場は心配していたんだ。

 映画製作では、大いに助けてくれた恩もある。ただ、その――」

 と、召愛は遠慮がちに遊田に目を向けた。

「――私はイスカさんに嫌われているようなので、問題に踏み込むのは、逆効果になってしまうと考えてしまっていて。気配りがおろそかになっていたと思う。


 すまなかった、イスカさん。


 そして改めて、はっきり言っておきたい。

 私は仲良くしたいと思っている」

 そう言われた遊田は――

「召愛……これまで、あんたのこと誤解してたわ。

 これからは羽里さんが羨むくらい、キャッキャうふふと、キマシ塔をモリモリ建設しましょうね」

 ――などと答えるわけがなかった。

 ↑の遊田の台詞は俺の単なる願望である。


 実際は遊田はこう言った――

「仲良く? ふーん? あたしは、べっつにー?」

 ソファにふんぞり返って、鼻で笑いながらこの台詞である。

 

「残念だ。でも。

 二つだけ、イスカさんに確認しなければならない事があるのだけど、良いだろうか」

「もったいぶらずに言ってみなさい?」

「一つ目は、生徒会長選挙だ。いよいよ、大詰めになる。

 イスカさんは引き続き、手伝ってくれるのだろうか?」

「……………………」

「やるわ。ただし、わかってるだろうけど、あんたを貶めるチャンスがあれば、喜んでやるでしょうね」

「むしろ、私を率先して糾弾してほしい。

 厳しい目で見てくれるイスカさんは、励みになる」

「あんた、バカなの?

 もう一度、言うわよ。


 あたしは、あんたを裏切る前提でやる、って言ってんのよ。

 そういう人間に、本当に手伝わせるつもり?」

「ならば、私も、もう一度言う。

 私は、イスカさんとも、共にありたい。


 これでも、足りないならば、さらにもう一度言う。

 私は、イスカさんとも、友だちになりたい」

 こういう台詞を、政治家みたいな胡散臭いやる気アピール満点の顔ではなく、

 キラキラと澄んだ瞳で言うから、召愛と言う奴は、どしがたい。


 遊田や俺みたいな一般人から見ると、こういうキラキラ奴は、妙な忌避感を感じてしまうわけだ。


 案の定、遊田は顔をしかめたよ。


「…………」
 どうにか、この二人を和解させられないものか……。

 

 遊田をこのまま、選挙陣営に置いておいたら、それこそ本当に、何かの拍子に足下をすくわれかねない。

 召愛を退学に追い込むような策略を、やってくることだって十分に考えられるのだ。


 しかし、召愛だって、わかってるはずで、それでもあえて、遊田を許容してしまってるから、たちが悪い。

 今さら、遊田を陣営の外に放り出すなんてことは、絶対にしないだろう。



「二つ目の確認事項はなによ。言いなさい」

「二つ目は……さらに、重要なことだ。

 本当に、この場で、言って良いかどうかすら、躊躇してしまう。


 ただ、これは今、確定しておかなければ、大変、気がかりで、今夜、寝られそうにない……」

「さっさと言いなさいってば」

「――」

 召愛はすごくシリアスな顔で頷いた。


 俺も思わず緊張して、生唾ごっくんしちゃったよ。


 遊田も余裕ぶっているが、召愛があまりに真剣な目をしているので、身構えているようだった。


 いったい、選挙よりも重大な事とは、召愛は何を言い出そうとしているのか……?

 

 いや……。


 やはり、このまま遊田を、こちらの陣営に置いておくわけにはいかない、そう言い出すのではないだろうか。


 召愛にとっては、この学校をより良い道へ導くのが最重要の目標だ。

 遊田一人のために、それが頓挫するような事があってはならない。


 そんな張り詰めた空気の中、召愛は口を開いた。

「君たちが、先ほど、みなとみらいで遊んでいた時の話しだが、隣のゴンドラのカップルは、本当にそんな公の場所で――















      ――挿入までしていたのだろうか?」

「……」
「……」
「……」
「……」

 空気が死んだ。

 場が、完全に凍り付いた。


 そして、十秒後。

 俺は無言で、床の上にずっこけた。


 召愛……。お前はなぜ、こう、あれだ。

 すごく肝心そうな場面で、斜め上にぶっ飛んで行くサガをお持ちなのか……。

「ええ、あれは本当に、挿れていたわ」

 なぜ、そこで真面目に答える遊田、しかも、お前もなんかシリアスな顔で!

「なっ……信じられない。

 ゴンドラの座席で、できるものなのだろうか?」

「できるわよ。

 やってみせるから、ちょっとこっち来なさいって」

 遊田がソファに座ったまま召愛に手招きしてだな。

 召愛は、ソファの前まで来たよ。

「ほら、あたしが男の役をやるから、

 膝の上に跨がって座ってみなさい?」

「こ、こうだろうか……?」

 言われるままに、召愛さん、ほんとにやっちゃいました。

「もっと腰を密着させなさいってば」

「こ、こうか?」

 ぐぐいっ、と召愛が腰を前に出して密着させてだな……。

「おお! なるほど……、確かにできそうだ。

 これで上下に腰を動かせばいいのか?」

「馬鹿ね。そんな事したら、次の日、筋肉痛よ。

 どちらかと言えば、あれは、くねらせる感じだったわね」

 つーか、お前らさっきまで、ピリピリした関係だったじゃないか。

 なぜ、下ネタトークで、いきなり妙に打ち解けるのか。


 この辺は、男も女も大差ないってことなのか……?

 男同士でも、普段まったく話題が合わない奴とも、下ネタだと打ち解けちゃったりするもんな……。


 それとも、召愛が見せた年相応の好奇心や人間っぽいさが、『キラキラ奴』的な忌避感を和らげたんだろうか?


 でもですね。

 お前らは同性二人でワイワイ猥談しちゃって、楽しいだろうが、こっちは男一人でですね。どうも、割って入りにくいというか、肩身が狭い感がすごいというか。


 俺はとりあえず、咳払いをしてみた。

「あー、ゴホン!


 まあ、なんだ。話しがまとまったところで、遊田を泊めるなら、羽里には事情を連絡せにゃならん」                   

「そうだな」

 と、召愛さん、遊田に跨がったまま言いました。

 早く止めなさいって、嫁入り前の娘が……!

「では、コッペから彩に電話しておいてくれ。

 私はイスカさんにお風呂の使い方などを教えておく」

「了解だ」

 問題は、あの石頭の羽里が、部外者を寮に泊めるのを了承してくれるかどうかだ……。

 ある意味、そこが今の時点での最大の問題点だろう。


 俺は、フライング土下座を百回でもして、頼み込むつもりで、羽里へ電話を掛けた。

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