超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

受難 ①

エピソードの総文字数=1,614文字

              羽里学園捜査班。


 ただの民間警備員じゃない。

 警察の少年犯罪の捜査官たちを、高給で引き抜いたというガチ集団だ。

 遊田がポスターを盗んだ時も、速攻で犯人を割り出した実績がある。


 そいつらが六人ほど駆けつけてきた。

「現場はここですか、理事長」
 さらにその後ろからは、一般の生徒もゾロゾロと着いて来てた。

『捜査員』の腕章を付けたタフガイたちが廊下を走ってたら、さぞ目立って、生徒たちは何事かと思ったのだろう。

「はい。状況は見ての通りです。

 召愛は、この部屋に入った時には、火の付いたタバコが放置されていたと言っていました」

 羽里は選挙事務所室の中を指さした。

 灰皿の前に立つ、召愛。

 もみ消された吸い殻。


 そして、羽里は写真も渡したよ。召愛が喫煙してたり、援助交際をしているアレだ。

「生徒会長就任を妨害するための工作事案、もしくは――言いにくいですが……ご友人の喫煙・売春事案、ということですね。

 現場は封鎖する必要があります。許可を、理事長」

 女性捜査員が訊ねると、羽里は頷いた。

「以降の指揮は、お任せします。

 適切と判断される捜査行動を、全て許可します」

「了解しました。この状況ですと……。

 理事長ご本人と、この場に居るご友人を、重要参考人として取り調べすることになりますが、よろしいですな?」

「気遣いは無用です。校則は、誰であろうと公平に適用される」
「はい」

 捜査員たちは、手際よく『立ち入り禁止』と書かれたイエローテープを選挙事務所室の前に張り巡らし、帽子を被り、ゴム手袋をして中に入って行った。


 生徒たちはその外側に集まって、ガヤガヤと騒ぎ出した。

「え、なになに、理事長たち、なんかやったの?」
「お前、知らないのかよ。

 名座玲って、ずっと隠れてタバコ吸ってたらしいぜ。

 写真が学校のトイレに貼られまくってる」

「うわ、なんか、ほんとにタバコ臭くない?」
「選挙事務所室で、吸ってたんじゃないか。

 鍵掛けられるし、密室にできるもんな」

「写真だけじゃ信じられなかったけど――ほんとにだったんだね。

 そうなると、援助交際も本当なんじゃ……?」

「けっこう前に、名座玲がその手の電話を受けてたの聞いた奴がいるらしいぞ」
「うっそ、なら生徒会長候補が当選直前で退学?」
「でも、いくらなんでも、おかしくないか?

 普通、あと一歩で生徒会長に成れるって時に、学校でタバコ吸う? あの写真だって、本物かどうかわからんだろ?」

「てことは、妨害テロ?

 すんげえ恨み買ってたらしいしな。はは。

 つーか、どうせ遊田じゃねえの?」

「あー、あの子、召愛派の中に入り込んで、スパイやってたらしいよね。【議員】に情報漏らしてたんだって」
「そういえば、昨日、裏サイトでも、召愛が当選確定したあと、発狂した書き込みしてた奴いたじゃん。そいつでしょ。あれの正体も、どーせ遊田なんじゃん?」
「そういえば、遊田さん、今日すんごい早く学校来て、ウロウロしてたらしいよ」
「勝手な事言わないで!

 スパイなんかしてない!

 あたしは――」

「さあ、一緒に来てください。遊田さん」
 怒鳴り始めた遊田を、女性捜査員が連れて行こうとした。
「嫌! なんで犯人扱いされなきゃいけないの!」
「みんな、聞いてくれ!

 静かにして、私の話を、聞いて欲しい!」

 召愛がそう叫んで、廊下に出てくると、生徒たちが静まり返った。
「イスカさんは、私の選挙活動を、とても良く手伝ってくれた。

 スパイなどしていない。

 ましてや、このような工作など、するわけがないと信じている。

 だから、憶測だけで、悪く言うのは止めてあげて欲しい。


 それと、イスカさん――」

「……?」
「私たちは無実だ。恐れる必要はない。

 粛々と取り調べに応じて、それを証明してもらえばいいだけだ。

 さあ、一緒に行こう」

「……」
 遊田は素直に頷いた。
「コッペ君、だったか。君も一緒に来て貰わなければならない」
「ああ、オーケーだ」

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