17歳の牧師だけど何か質問ある?

私はシャロンのサフラン、谷の、

エピソードの総文字数=4,337文字

1、
朝の4時。
みんながまだ寝ている中、
(さくらはそのまま、台所のソファーで、やっぱり電気をつけっぱなしで寝ていた。)
俺はこっそり、牧師館2階にあがって―
―自分の部屋に入った。

みんな、俺が朝に弱いと思っているけど、それは違う。
早天祈祷に、起きられないダメ牧師と思われているが、それも違う。
・・・何故なら、親父たちがまだいたころ、早天祈祷が教会ではじまってから
ずっと、俺も一緒に参加させられてーしてきたからだ。

早起きの習慣は身についていて、けれども、最近ずっと、起きられなかったのは、
この時間に、電話がかかってくるからだ。

毎朝、毎朝。
朝の4時から、きっちり1時間。
・・・無言電話が。

毎日、毎日、電話をとるまでずっと、かかってくるから、出ないわけにもいかない。
教会の電話は、うちの教会の門のまえの看板にも、電話帳にも、ホームページにも、いろいろな媒体にのっているし、いつ、信徒さんから電話がくるかもわからないから、電話線を抜いておくわけにもいかないし。


最初は気持ちわるかったけど、毎朝、俺がでるまでずっと電話は鳴るし、めんどくて切ると出るまでずっと、5時になるまで相手はかけ続けてくるし。
いちいち1階に降りたくないから、子機の電話、部屋に設置してみたけど、それが全く無駄にならないカンジで、律儀に毎日、電話がかかってくる。

抵抗もしてみた。教会の案内をしてみたり、
聖書の箇所をいろいろ、読み上げてみたり。
賛美歌をきかせたり、なんか、そいつ専用のDJみたいになったり。

むかついてたけど、この、電話してくる相手は、教会に、なにを求めてるんだろうって、不思議だった。
・・・ひょっとして、早天祈祷とか教会がうるさいんだよ!
っていうクレームかな、ってビクビクしたり。
・・・お前なんかが牧師してるな!っていう嫌がらせかな、とビビったり。
だけど、もしかしたら、この人は、クレームとかじゃなくて、

そっか、教会に用があったんだな!って思ったんだよ!

いや、この人ホントは、教会じゃなくて、
17歳で牧師の俺じゃなくて、
この教会のトップー
―イエス様に、用があったのかもしれないな、って。

じゃあ、イエス・キリストが、この無言電話にでたとしたら。
イエス様なら、どうすると思いますかー。

こたえは・・・
『友になる。』じゃないかな★
イエスさまが、孤独な人、助けを求めたひと、罪びとの友となられたようにー
俺も、友と、
なりたいと思うのです――――


―――ゆりさん。


なので、俺は、部屋の電話がなっているのを確認してー
隣の客室を、ノックもしないで、あけて、はいった。

2、
「おはよう、よしゅあくんー来るかもしれないって、思ってた。」
ゆりさんは、いきなりの闖入者(俺)に、悠然と、ほほえんだ。

・・・・・・・・・・・。
あ、あぶなkっったーーーー!
いや、そうだろうな、って思ってたけど!
違ったら、おれ、かなりの変態さんだもんな!!

「どうしたの?私に、いいたいことがあって、きたんでしょ?」
「・・・まずは、その、目のやり場に困るから、何かはおって・・・」
ゆりさんは、青色の鮮やかな、色っぽい、ネグリジェを来ていた・・・
「やだ、よしゅあ先生は結婚しない相手には、何もしないんでしょー・・・、
清廉潔白な、牧師、先生?」
「いいい、いや、しかしですね、ぼくも弱い人間ですからっ!!!!」
いかん。
完全に、ゆりさんのペースだ。
ゆりさんはくすくす笑って、薄い上着をはおった。

「では先生、言いたいことを、どうぞ。」
・・・・・
・・・・ゆりさんのキャラ、違いすぎないだろうか・・・
あの、全国の、清楚なゆりさんのファンだった方々が泣きますよ?

「・・・あのさ、毎朝の無言電話って・・・やっぱり、ゆりさん?だった?」
ゆりさんが、ちょっと、ガクっ、てなったぞ・・・・

「この、状況で、それ以外なにがあるの!」
しっかりしてよ!と言われて、ああ、やっぱりゆりさんって、
さくらの友達なんだなーって、思った。

「・・・俺さ、ずっと不思議に思ってたんだ。ゆりさん、なんで、ずっと教会にきてるんだろう、って。
だってさ、最初は演劇部の大道具の絵、って言ってたけど、
絵のメモしてないっていうか、
演劇部より、塾に行ってる時間の方が多いみたいだったし・・・
それに、ゆりさんが、教会に来たい、って言ってくれた日、俺が、はじめて、
無言電話の相手に、教会の案内を聞かせた日だったんだ。」
「・・・だからね、もっともらしい言い訳かんがえるの、すごく苦労したの。
あのとき、よしゅあくんは私の話、あんまりきいてなかったみたいだけどね?」

・・・あんとき、俺、なに考えてたっけ?
まぁいいや、と続ける。

「ゆりさんが、『聖書って辞書みたいにつかうものだと思ってた』っていって、
あれ?って思ったんだ。
だって、俺、電話でそう、トークしてたからさ。」

そう、たとえば、
『もしもーし、無言電話さん、きーてますかー。
俺もがんばって読んでるんだから、ふぁああ、ちゃんと聞いてよ・・・
今日の聖書の御言葉はですねー、はい、『辛いときにぜひ、聞きたい箇所』で、
マタイの福音書のー、ええと、11章の28節ですね・・・
読みます!
「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。
わたしがあなたを休ませてあげます。」
ええと、この、わたし、は、俺じゃなくて、神、イエス様のことなのでー、
ぜひ、悩みや重荷に苦しんでいるなら、教会にきてみてくださいねー。
できれば、ってか、無言電話マジやめて。
教会で、牧師先生に話すの、ちょーおススメ。
お相手はDJ★よしゅあ、がお送りしましたー★』

・・・・こんな感じ。

ゆりさんも同じことを思い出したのか、くすくすわらっている。
「そうよ、牧師先生に、ってよしゅあくん言ったくせに、
この教会、大人の牧師先生、いないんだもの・・・
よしゅあ先生は、神さまのはなしとか、みんなの前では全然、しないし、ね?」

うううう、それは面目ない・・・
俺、実は昨日、イエス様と本当の友達になれたばっかりで・・・・。

「そ、それで、ゆりさんは、俺に、ってか、
イエス様に、なにを求めてたのかなー、って。
今からでもよかったら、きかせてもらえたら、というか、その、」

昨日の、「素晴らしい俺がちゃんと正しい道をおしえてやるぜベイベー」モードの俺だったらなんか賢いこと言えた気もするんだけど。

今の俺だと・・・・・

「共に祈ろうZE★神にとって、不可能はないらしいから、きっと助けてくれる!」
みたいな、・・・・うん、はたからきくと頭の悪そうなことしか言えない・・。

「ふふ、もういいの。
やっぱり、教会って、救いとか、愛とか、現実味のない話ばかりで、うんざり」
「そんな、祈ってみたら、きっと、俺も、昨日・・」
「祈ったわよ!けれど、きかれたことなんてなかった!
あいつは、結局、イイ子ちゃんの神で、罪びとの祈りになんか、これっぽっちもー」

ゆりさんは、そこで、言葉を切った。
しばらく、足元を見つめーそして、顔をあげて、俺を見つめて、いった。

「・・・あたしね、昔、クリスチャンだったの。
昔、キリスト教の幼稚園で、話をきいて。
はじめてきいたときは、なんてすてきな話だろうって、おもった。
本当の神様がいて、愛してくれている、なんて。

だから、いつもお祈りしていたー
パパとママと私が幸せで、ずっと一緒にいられますように、って。
―なのに、パパは愛人をつくって、でていった。
ママは、ずっと泣いてばかりだった。
あたしが、こうなりますように、って祈ることはいつも、きかれない。
むしろ、悪くなることばかり。
―だから、もう、ばかばかしくって!

それで、高校にはいったら、いつも目につくとこに教会があるから、
むかついたから、電話して、困らせたかっただけ!」

ゆりさんはそういうと、もう話すことはない、とばかりに、背中をむけた。

「電話の犯人は私。通報でも訴えでもしたら?
安心して、もうかけないし、二度と教会には、はいらないから!」

いろいろ、いいたいことはあった。
でも、言葉もなく。

・・・・・・・・・・・・・。
けど、ゆりさんは、もう二度と、教会に足を運ぶことはないだろう。
もう二度と、祈ることもーキリストを求めることもしない。
だって、さんざん、裏切られた気持ちだろうから。
そう思ったら、すごくーさみしくて、胃のあたりが、ねじれるような気持ちに、なった。

「・・・祈っても、神にきいてもらえないような、自分の祈りを、無視されて、
神の愛とか、わけわかんなくなる気持ちは、俺にも、わかる気がする・・・」
ゆりさんはうつむいたままだ。
「俺も、親父たちがなくなって・・・・
生き返らないかな?復活しないかな?と思って、叔父さんから、「よしゅあ、死体がそろそろ腐るからあきらめよう・・・」っていわれるまで祈ったし。」
ゆりさんが、また、がくっ、となったけど、
あのとき、俺は真剣でしたがなにか?

「自分が、願ったことが与えられなくて、神をうらんだりー失望する、気持ちは、わかる。
どうして、自分がこんな目に、って思うこともあるし・・・
俺も、どうして、親父たちが、こんなに早く天に召されてしまったのか、わからない。
納得していない。」
ゆりさんも、今度は真剣な顔になった。
「ただ、ひとつだけ、わかったことがあるんだ。
・・・俺は、こんなこと、言いたくないんだけど、」


―俺の、一番の黒歴史、だれにも言えなかった秘密がこれだ・・・・・・・・・


「このことがあって、俺は、生まれてはじめて、神を求めたんだよ・・・・
ずっと教会にいて、当たり前のように、神のことを知ってたつもりだった、けど、
俺が、真剣に、神を、『世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。』
といわれたイエスをー探し始めたのは、このことがあったからなんだ。

・・・ゆりさんの過去に、なにがあったのか、俺は知らない。
さっき言ったことより、もっと、悲しいことがあったのかもしれない。

俺のことばっかりでごめん、けど、
俺はようやく、『神のなさることは、すべて時にかなって美しい』っていう、
聖書のみことばが、わかってきた気がする・・・・

・・・ゆりさんも、そうなったら、いいなって、思ってる。」

ゆりさんは最後まで、黙ったままだった。

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