古代イスラエルにキリストとして転生した俺  そして12使徒が全員美少女!?

16・最初の奇跡(1)

エピソードの総文字数=4,713文字


「なあなあ、カナってどんなとこなんだ?」
「いい所ですよ。自然がいっぱいで、豊かなオリーブ畑もたくさんあって…」

バルトロマイの故郷、カナで開かれる結婚式の当日。
俺らは彼女の案内で、結婚式の開かれるカナに向かう途中だ。

「イエス、所でこの皮袋なにー?」
「何が入ってるんですか?」
「ん?大事なもの」

俺は昨日1日かけて、ワインを例の鍋で煮て集めた液体を
8リットルは入りそうな大きな皮袋に8つばかり用意した。
昨日あの鍋を5つばかり追加で作ってもらい、ワインを樽ごと7つも8つも…。

かなりの出費と手間だったが、夜中までかかって何とか間に合わせる事ができた。
こんな量は必要ないかもと思ったが、この時代のここの地域の水がめはやたらと大きい。
日本みたいに水道が完備されてないので、水を一度に大量に貯めておいて
何度も汲みにいく手間を省いてるって事なんだろうけど。

「これ、結婚のお祝いの品か何か?」
「ああまあ、そんなとこ」

それを借りてきたロバの背中に積んで、結婚式の開かれる家へと向かう。
そして向こうに、石造りの大きな建物が見えてきた所だった。

「あそこです」
「わぁ、立派なお屋敷ですねー」

何だか、想像してたのよりも大きな屋敷だ。
人も大勢集まっているのが見える。

「やぁ、バルトロマイ」
「来てくれたんだね。こちらの方は?」
「ああ、こちらは伝道師のイエス先生とそのお弟子さんです」
「おお、この方が?バルトロマイが弟子になった救いの御子?」

バルトロマイが、皆に俺の事を紹介する。

「バルトロマイを、どうか宜しくお願いします」
「バルトロマイが弟子入りするなんて、よほどの方なんですね」
「ええ、イエス先生は不思議な力を持っていらして。運命を感じました」
「あ、ど、どうも…」
「イエス様は、未来の事とかわかるんですよ?」
「そして、今人々を救うために伝道をしてるんだー」

聖書の小冊子に書いてある通りに受け答えをしただけなんだが…。
何だか、少し悪い気がした。

「あら、イエス?」
「ん?」

その時、何だか聞き覚えのある声が。

「え?か、母さん?何でここに?」
「偶然ね。ここの主人と知り合いだから招かれたのよ」

マリア母さんだった。
考えてみれば、俺の育ったナザレとカナはけっこう近い。
母さんと誰かが知り合いで、結婚式に招かれていても不思議じゃない。

「イエス、元気でやってる?伝道の調子は?」
「う、うんまあ、ぼちぼち…」
「たまにはお家に帰ってらっしゃい。お父さんも会いたがってるわよ」
「ま、まだ3週間くらいしか経ってないじゃないか」

何だかんだで、家を出てからまだそれだけしか経ってないんだ。
もう随分昔の事に思える。
何だか、あの家が懐かしい。
でも、父さんも母さんも元気そうで良かった。

「この方、もしかしてイエス様のお母様?」
「あ、始めまして、私アンデレって言います」
「オレはヤコブ!そんでこっちはヨハネ」
「今日は、イエスさまのお母さん」
「…あたしは、フィリポ…」
「バルトロマイです。どうぞお見知りおきを…」
「あら、この子達は?」
「あ、俺の弟子達」

弟子達が、俺と母さんの周りに集まってくる。

「イエス様のお母様、綺麗ですねー」
「ねぇねぇ、イエスのちっちゃい頃ってどんなだったの?」
「イエスの小さい頃?うふふ、お腹痛いって言って、神殿に行くのズル休みしたり…」
「何だー、イエスさんも勉強嫌いだったのかー」
「や、やめろよ母さん」

何だか、妙に恥ずかしい。

「可愛らしいお弟子さんたちね。イエス」
「ん?」
「変な気起こしちゃダメよ?」
「な、ちょっと母さん!」
「きゃ、や、やだもーお母様ったらー」
「わ、私達、別にそんな積もりでイエスについてってるんじゃ…」
「あ、ああ、イエスさんはスケベでかわいい子見たらすぐ声かけるけど」

「イエスも隅に置けないわね、うふふ…」
「…行こう、何を話されるかわからん」
「えー?もっとイエスさまの小さいころのお話聞きたーい」
「いいお母様ですね、イエス先生」

これ以上、昔の恥やら何やらを話されちゃかなわない。
俺はロバから降ろした皮袋を抱えると、バルトロマイの案内で
弟子たちと共に式場となっているこの家のホールに向かった。


「えー、このたびは皆様、お集まり頂きまして…」

多くの人でガヤガヤと賑わう結婚式の会場。
ざっと見たところ、150人以上は集まってそうだ。
みんな、目の前に並べられたご馳走を堪能し、
ワインを飲んだりしてにぎやかだ。

「はぁ、結婚式、ですかー…。うふふ…」
「ペテロ、何ニヤニヤしてんのー?」
「な、何でもないです。アンデレこそ、妙にはしゃいじゃって」
「わ、私は別に何もー?」

弟子たちも、何やかんやで楽しそうだ。

「さて、ちょっと行って来るか」
「ん?どこ行くんですかイエス様?」
「ご馳走、無くなっちゃうよー?」
「ん?あ、ああちょっとな」

俺は宴会の最中、ちょくちょく席を離れては
こっそり調理場の様子を見に行っていた。
ワインの入っている水がめには、まだ3分の1ほど残ってるようだ。
これがカラになるには、まだもうちょっとかかるかも。

「ただいま」
「さっきからどうしたのイエス?」
「おトイレー?」
「ん?あ、ああそんなとこ」

「イエス」
「ん?」

その時、母さんが俺に近づき小声で話しかけてきた。

「どうやら、ワインが足りなくなりそうなの」
「え?な、何で母さんが?だって、母さんには何の関係もないじゃ…」
「昔、お世話になった人の家だから、何とかしてあげたくって」

俺はちょっと驚いた。
まさか、母さんが話を振ってくるなんて。

「ほら、あの3人の贈り物で。こういう時に使うべきよ。ひとっ走り酒屋さんに」
「ま、まだ早いって。まだその時じゃないから。大丈夫、何とかするから」

動揺して、俺は変な事を口走ったかも知れない。

「本当に?」
「あ、ああ。だから座って料理でも食べてなって」
「わかったわ…。給仕さん、この子が何とかしてくれるから」
「はい」
「何か申しつけがあれば、聞いてあげて下さいね」
「わかりました」

そう言って、母さんは席の方へと戻っていった。

「え、なに?ワインが足りなくなりそう?」
「あっ、ヤコブ!」

その時ヤコブが周りに聞こえるような声でそう言った。
みんなに聞かれたらどうするんだ…。

「何だって?」
「ワインが、無くなりそう…?」

…どうやら、遅かったようだ。
辺りからヒソヒソと声が聞こえる。
それが会場全体に広がり、にぎにぎしかった祝いの席が
何やら急にシン…と静まりかえってしまった。

「イエスさん、何とかしてあげようよ!」
「ヤコブ…」

そんな周りの状況におかまいなしに、
ヤコブは大きな声で言う。
会場中の注目が、俺に集まる。

「何だって?ワインが足りなくなりそう?」
「え、ええ、その…」

会場のひそひそ話を聞きつけた祝宴の支配人らしき男が、
そう言って花婿と花嫁に詰め寄る。

「だから、言ったんだ。もっと多めに用意するべきだって」
「そ、そうですね、けど…」
「今から買いに行っても、その間にすっかり酔いが覚めちまう」
「ええ、あの…」
「せっかく、いい気分で飲んでたのに。これじゃ台無しだ」

不機嫌そうに花婿と花嫁に当たる支配人らしき男。
仕方ない…これはもうやるべきタイミングなのかも。

「…えー、では」

俺は立ち上がると、そばにいる給仕に伝えた。

「俺が何とかしましょう。水がめが置いてある部屋まで案内して下さい」
「は、はい」
「よし、行くぞ。ほらこれ持って」
「え?ええ…」

俺は皮袋をいくつか持ち、弟子たちにもそれを持たせると
給仕係の案内で大きな水がめのある部屋まで案内してもらった。
そのあとを何だなんだと多数の人がゾロゾロとついてくる。

「こちらになります」
「ああ、ありがとう。それじゃ…」

案内された部屋の中には、大きな空の水がめが6つ。
俺は、その水がめに10分の1ぐらいづつ皮袋の中身をあけた。
このぐらいで、丁度いい感じになるはずだ。

「イエス様、それは何ですか?もしかしてワイン?」
「でも、それっぽっちじゃたぶん全然足りないよ?」
「まぁまぁ…それじゃ給仕さん、この水がめを水で一杯にして下さい」
「はい」

数人の給仕係が、水がめに水を満たす。
やがて水がめが一杯になると、
俺は長い木の棒で中身をかき回した。
そしてカップにすくって、出来を確認してみる。

「…うん、いいぞ」

その場にいる全員が、不思議そうな顔をして俺を見守る。
その中には、母さんも混じっていた。

「どうぞ、飲んでみて下さい」

俺は、そばにいた給仕係にカップを手渡した。
給仕係は、恐る恐る…。と言った感じでカップに口をつける。

「えっ…」

給仕係はその瞬間固まった。
それから、しばらくして…。

「…ワインだ」

ええーっ?とか、おおーっという声が辺りに湧き上がる。
それから周りで見守っていた人たちが、一斉に水がめの周りに集まり
手に持ったカップですくって味見なんかしている。

「ほ、本当だ!ワインだ!」
「水がめに入れた水が、ワインに変わった!?」
「い、イエス様、一体どうやったんです?」
「最初に水がめに入れてたの、あれワイン?」
「でも、あんなに水を入れたんじゃ薄くなっちまうぞ?」

正確に言えば、ワインじゃなくってブランデーの水割りといった所なんだが…。
俺が昨日せっせとこしらえたのは、ワインを蒸留して作った蒸留酒。
そんな物が存在してないこの時代の人たちの目には、
ほんの少しの液体が入った水がめに入れた水が、
まるでワインに変わったように見えただろう。

「そうそう、あの支配人さんに持って行ってあげて下さい」
「は、はい!」

言われた給仕係は、水がめの中身をカップに一杯すくって
宴会場へと向かった。


「まったく、宴会の最中にワインが無くなるなんて。最悪だほんとに…」
「支配人様、これを」
「ん?何だこれは?」
「どうぞ、飲んでみてください」
「あ、ああ」

「…ん?こ、これはワイン?何だ、ちゃんとあるじゃないか」
「え?」
「ま、まさか?」

遅れて宴会場の様子を見に来た俺の目に、支配人が俺の作った水割りを
飲んでいる光景が目に入った。
支配人は、ワインがある事を知って急に機嫌が良くなった様だ。

「いやー、花婿と花嫁さんも人が悪い!ワインが無くなったなんて冗談を」
「え、ええ…」
「はぁ…」

上機嫌でカップに口をつける支配人。

「…それにしても、普通はいいワインを最初に出して、質の悪いのは後に出すものですが」

「どうやら、いいワインを今まで取っておかれたようですな!はっはっは…」

そう言って、愉快そうにカップの中身を飲み干す支配人。
現代の人なら、俺の作ったこれをブランデーの水割りだと気づくだろう。しかし
酒といえばワインかビールぐらいしかないこの時代の人には、こうなるんだろう。

どうにか、台無しになりそうだった祝宴の危機は救われたようだ。
俺は、こっそり聖書の小冊子を開いてみた。
ふぅ、良かった。
イエスキリストが水をワインに代えた下りはそのまんまだ。
俺はとにもかくにも、水をワインに変えるという難題を
クリアする事ができたようだった…。

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