古代イスラエルにキリストとして転生した俺  そして12使徒が全員美少女!?

15・水をワインに?

エピソードの総文字数=4,825文字

「うーん、何かいいもんはないか…」
「何かお探しですか、イエス様?」
「布教をお休みして今日は市場に行こうなんて。どうしたの?」

結局俺は、昨日何もいい考えが思い浮かばず翌朝をむかえ
いいアイディアでも思いつかないかと、今日は布教活動を休みにして
ガリラヤ湖近くのちょっと大きめの市場のある町に来た所だ。

店頭にパンや果物を並べて売ってる食料品店。
店内の奥まで樽がぎっしりと並ぶ酒屋。
農具なんかをキンキンと鍛えてる鍛冶屋。
いい匂いをさせている大衆食堂…。

「あっ、あの果物うまそう!」
「ねぇねぇイエスさま、買ってきていいー?」
「…服屋さん、見たい…」
「こらこら、はぐれて迷子になるんじゃないぞ」

人々が行きかう町を、俺は弟子達を引き連れながら
あてもなくブラブラとさまよい歩く。
しかし、水をワインに変えるいいアイディアなんて
それらの店を眺めても、ちっとも浮かんで来なかった。

「イエス様、どこかそこらで一休みしません?」
「おっ、いいね!何か食べる物でも買ってさ」
「イエスさん、何か食べたいものある?」
「あっ、ヨハネ、ナツメヤシ食べたい!」
「…あたしは干しイチジク…」
「おいおい、遊びに来たんじゃ…」

弟子達は、まるで遊びにでも来たみたいにはしゃいでいる。
ふぅ、みんな気楽でいい…。

ふとその時、町の一角に人だかりが出来ている事に気がついた。
そして一段高くなった所にいる、黒いローブのような服をまとった男。
それを囲むようにして、30人ほどの人が集まっている。

「あー、モレク教の司祭だ」
「今日は、ここで布教活動してるんですね」

モレク教…?
何だか、覚えがあるような。
そうそう、小さいころ神殿で何回か聞いた、この地域の人たちの大昔の話…。
いわゆる旧約聖書の話になるんだろう、それにちらほらと名前が出てくる
生贄の儀式を行う、異教…。

生贄の儀式を行う、異教?
もしかして、あれが…。
俺の持つ聖書の小冊子にも、暗黒に変わった未来の記述が現れたら
キリスト教に代わって広まる邪教としてその名が出てくる。
モーロック教…。またの名をモレク教。
俺が何か失敗をやらかしキリスト教が広まらなければ、
あれが辺り一帯に広まり、ここら一帯で血なまぐさい儀式が行われるようになり…。

「ちょっと、行ってみよう」
「イエス様?」
「どうしたの?」

気になった俺は、
30人ばかりの聴衆に加わってモレク教の司祭の話を聞いてみる事にした。


「…えー、モレクの神は我々に様々な恵みを与えて下さいます」

黒い服をまとった男は、40歳か50歳くらいに見える。
堂々としていて体格もよく、何だか立派な印象だ。
その男が顔ににこやかな笑みをたたえ、
集まった聴衆に語りかけている。

「例えば、作物がうまく実らないとか、飼っているヤギが子を産まないなど…」

ああ、あるある、といった様子の聴衆。

「そういう事で、皆さんお困りになった事はありませんか?」
「ああ、あるな」
「モレクの神は、それを何とかしてくれるのかい?」

「ええ、もちろん。モレクの神に祈りを捧げれば作物は豊かに実り、家畜はたくさん子を産み…」
「おー、それはいい」
「ならモレクの神に祈りを捧げてみるか」

純朴な人たちだ。
この時代の人たちにとって、恵みを与えてくれる神様というなら
何でも信じる対象なんだろう…。

「ええ例えば、我々の信者の中にはモレクの神に熱心な信仰を捧げ」

モレクの司祭は、聴衆を見回し話を続けた。

「農場5つにブドウ畑2つ、牧場を3つも所有する大金持ちになった方もおられます」
「おおー、すごいな!それは本当に?」
「モレク教に入れば、貧乏生活ともオサラバできるのか?」

なんか俺にはうさんくさいイカサマ宗教の話のようにしか聞こえないが、
合理的、科学的な考えが広がっていないこの時代では
みんなこんな話もあっさり信じ込んでしまうんだろう。

「ええ。来週、我々の神モレクのための儀式が行われます」

「興味がありましたら。皆さん、ぜひお越しください」
「ああ、なら行ってみるかな」
「いい話が聞けたよ。ありがとう」
「ええ。皆様にモレクの神の素晴らしさを知ってもらいたい。ぜひおいで下さい」

モレクの司祭は話を締めくくった。
聴衆はみんな興味を持ったようだ。
きっと、何人かはこれでモレク教の信者になるのかも知れない。

「あの司祭も、熱心だよね」
「うん。この辺でちょくちょく見かけるよな」
「な、なぁみんな」

気になった俺は、みんなに聞いてみた。

「はい?」
「なに?」
「モレク教って、この辺じゃ信じるの禁止じゃなかった?」

小さいころ司祭から聞いた話じゃ、確かにそうだと思った。
人々がモレクやその他異教の神を信仰したために神の罰が下される話は、
何度か聞かされた話だ。

「え、ええ…」
「まあ、基本はそうなんだけどね」
「でもほら、信じればご利益があるからって」

「けっこう、こっそり信じてる人も多いみたいだよ?」
「…ヤハウェも一緒に信じながら、とか…」
「あとバァル教や他のも一緒に、って人も居ますし…」
「まぁ、神様は神様だからな」
「そ、そうなんだ」

何だか、この時代の人達の印象が変わった。
純真に神を信じてはいるが、その神は一つとは限らないんだ。
ご利益があるとなれば、色んな神を信仰し…。

「それにあのモレクの司祭、何か不思議な技を行うって噂で」
「ええ。人の病気を治したり、とか…」
「え?病気を?」
「うん。だからけっこう信者も増えてるんだってさ」

まぁ、ある事だろう。
司祭がモレクの神に祈ったら、病人が偶然治ったのが噂になって…なんて。
信じやすいこの時代の人たちだったら、なおさら。

「まあ、私はイエス様一筋ですけれど」
「あ、私も!」
「あ、オレもオレも!」
「ヨハネもだよ!」
「…じゃ、ついでにあたしも…」
「な、何だよ。テレ臭いな…」

こんな俺にも、弟子達はついてきてくれる。
よーし、モレク教なんかに負けるか。
俺も負けずに、信者を増やして…。

「おや、そこの方々、モレク教に興味がおありですか?」
その時、俺達にモレクの司祭が話しかけてきた。

「あ、いえ、そういうわけじゃ…」
「へん、イエスと私達にはなー、神は間に合ってるよー」
「イエス…?」

「おお、あなたがあの有名な、救いの御子イエスですか」
「へ?」

「お、俺のこと知ってるの?」
「ええ、お噂はかねがね…。最近ここらで布教をしている、世を救う救いの御子と」

何だ、俺も有名になったもんだ。

「どうですか、イエスさん。立場は違えど、同じく神に仕える者として」
「はい」

「一度、我々の儀式を見学にいらしては。交流を持てば、より神への理解が深まるでしょう」
「え?はぁ…」
「ちょっと、やめときなよイエス」

何か、とても親しみやすい感じの人だ。
モレクの司祭という立場でなければ、仲良くやれたのかも知れない。

「…けど、モレクの儀式って生贄を捧げるんでしょ?ちょっと怖いっていうか」
「いえいえ、そんな大げさなものじゃありません、麦をひと束とか、鳥を一羽とか」

そう言って、モレクの司祭は笑みを浮かべた。

「その程度のものですよ。もちろん、大きな見返りを求めるならそれなりのものが必要ですが」
「へぇー、そうなんですか」
「その程度…ねぇ」

想像してたのとは、ずいぶん違う。
生贄の儀式というからには、人を切り刻んでその血を…とか、思ってたのに。

「では来週、町外れにある神殿で儀式がありますので。ぜひお越しを」
「ええ、まぁ、じゃ気が向いたら…」
「行かないほうがいいよ。行こ、イエス」

俺はアンデレに袖を引っ張られ、その場をあとにした。

「モレクの司祭の話なんて聞いても、ロクな事にならないよ」
「ええ、異教を信仰して罰が下った話なんて、山ほどあるんですから」
「い、いや別にモレク教に入ろうってわけじゃないから」

モレクの司祭が、あんなに話がわかりそうな人とは意外だった。
もしかしたら、信じる神は違うけれど、上手く共存できるかも知れない。
そして、何やら不気味な生贄の儀式も話し合ってやめてもらえれば。
これは来週、試してみるべきかも。

さて、それより本題だ。
俺は、水をワインに代える方法が何か思いつかないかと
この町に来たんだった。

「うーん…。やっぱり、これといって何も思いつかない…。はぁ、休憩にすっか」
「あ、休憩ですか?じゃ、どこで休憩にします?」

「あそこの食堂で、みんなで軽く何か食うか」
「えー、あそこ?あんま評判良くないよあそこ」
「そうそう、ワインなんか水で薄めてカサ増ししてるって話だし」

「その割には料金高いって」
「そう、ボッタクリだよボッタクリ」

あー、この時代には良くある話だ。
油断してると、思わぬ所で吹っかけられたりする。
たくましいというか、油断もスキもないというか…。

ちょっとワインを水増しして売るなんて、珍しくもない。
だから買うときはきちんと自分で確かめ、質が悪いなら
その分の値引き交渉をするのが当然…。

…ん?
ワインに、水を混ぜる…?

そうすれば、当然ワインは薄くなる。
けれど、元々のワインが、物凄く濃かったら…?

「…そうか」

俺は、ひらめいたかも知れない。
水をワインに変える方法。

「ちょっと、行って来る」
「あっ、どこ行くのイエス?」

俺は、さっき通りがかった鍛冶屋へと向かった。
注文通りのものを作ってもらえれば、きっと上手くいく。

「すいません」
「あいよ、いらっしゃい」

「あの、ちょっと変わったフタ付きの大きめの鍋を作って欲しいんです。青銅で…」
「変わった鍋?どんな?」

「ええ。フタの真ん中から、こう細長い管が横に伸びてるって感じの…。できます?」
「あ?ああ、出来るけど。そんな鍋、一体何に使うんだい?」

「ちょっと、水をワインに変えなきゃならなくって。作ってくれたらお礼は弾みます」
「あ、ああ、よっしゃ任せとけ!夕方前には作っとくからな!」

俺の妙な注文を、鍛冶屋は快く引き受けてくれた。
そして夕方近くになって、注文通りに完成したその大き目の鍋を受け取ると、
代金を例の3人の贈り物の一部で支払った。
ついでに酒屋に寄って皮袋一杯のワインを買い、
不思議そうな顔をするみんなと一緒に俺は拠点の町へと戻った。
そして、郊外の野原で…。


「よーし、上手く行ってくれよ…」
「イエス様、何だか変わった鍋ですねこれ?」
「それにワインなんか入れて火にかけて…。料理でも作るの?」

「違う違う。いいか、見てろよ。こうしてフタをして…」
「ワインなんか煮て、どうするんだろうねー」
「…もったいないねー…」

鍋のフタのまん中から、ゆるやかに横に曲がって伸びる管。
その管の真ん中辺りを、水で濡らした布を当てて冷やす。
これで、良かったかな…。
中学校の頃やった理科の実験を思い出しながら、
俺は上手く行ってくれるよう祈った。

「おっ…」

やがて、鍋のフタから伸びた管の先から、ポタッポタッと
しずくが垂れ始めた。
そのしずくを手のひらに乗せ、匂いをかいでみる。
これは…。鼻にツンとくる、この匂いは。

「よーっし、成功だ!上手くいった!」
「イエス様、これは何です?」
「イエスって、やっぱり不思議な人だよねー…」

これを、明日1日かけて十分な量を用意すれば。
お金はかかりそうだが、例の3人からの贈り物で何とかなりそうだ。
よーし、イエスキリストが水をワインに変えたという奇跡。
みんなの前で演じてやろうじゃないか。

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