三題噺のお部屋

ヤドナシ

エピソードの総文字数=919文字

【ペンネーム】 ヤドナシ
2018/02/03 09:00

yomogi

夜、君が寝静まった頃……そいつはふっと台所に現れる。
2018/02/06 08:36

yomogi

玄関は鍵を閉めているし、窓もしっかり閉じているのに、どこから入ったかだって?
2018/02/06 08:37

yomogi

換気扇さ。換気扇からそいつはうにゅると入ってくるんだ。
2018/02/06 08:38

yomogi

姿形は何とも言えない……黒い霧のようなものが、やたら頭の大きな人の形をとっている……と言えばいいかな。
2018/02/06 08:39

yomogi

そして、台所を静かに静かに見回して、君が夕方に作ったカレーの鍋を覗き込む。
2018/02/06 08:42

yomogi

わずかに鼻をひくつかせるようなそぶりをした後、カチリとコンロのスイッチを入れるんだ。
2018/02/06 08:43

yomogi

そいつは真っ暗な台所で、明かりもなしにカレーを温め始める。だけど君は絶対に起きてこない。
2018/02/06 08:44

yomogi

昼間子どもの相手をして疲れているからかな……逆に僕は、夜中に子どもがぐずるから時折目がさめるんだ。
2018/02/06 08:46

yomogi

この子には、あいつの気配が何となく分かるらしい。何度も起こされるうちに、台所で見るあいつが夢じゃないってようやく僕も分かってきたよ。
2018/02/06 08:47

yomogi

とにかく眠いんだ。あいつがカレーを温めながらゆっくりお玉を回している間……あんなに美味そうなカレーの匂いがしてるっていうのに、こっちはどんどん眠くなる。
2018/02/06 08:49

yomogi

この子も台所の近くまでいってカレーの匂いを嗅いだらスースー眠り始めるくらいだ。普通は目がさめそうなもんなのにね。
2018/02/06 08:50

yomogi

えっ? そいつは何でカレーを温めなおしてるのかって?
2018/02/06 08:51

yomogi

さあ……自分が食べるわけじゃないみたいだ。いつもしばらくカレーをかき混ぜたら、また換気扇から出て行ってしまうからね。
2018/02/06 08:56

yomogi

何をしたいのかはよく分からないけど、うちで作るカレーは二日目、三日目になるとびっくりするくらい美味くなるだろう?
2018/02/06 08:56

yomogi

よく、カレーは一日目より次の日の方が美味いとは言うけれど、それにしても美味いよね。
2018/02/06 08:58

yomogi

「実家で作ってもこんなに美味しくはならない」って君も言ってたけど……たぶん、あいつの仕業だと思うんだ。
2018/02/06 08:59

yomogi

おいおい、そんなに笑わなくてもいいだろう? 僕は本気なんだぜ。
2018/02/06 09:00

yomogi

えっ? うちのカレーを美味しくしてくれる妖怪? そうだな……確かに妖怪っぽいよ。
2018/02/06 09:00

yomogi

妖怪カレー煮込み……いや、うまいネーミングが思いつかないなぁ。
2018/02/06 09:01

yomogi

あっ……またそんなに笑って。えっ? あなたも笑ってるじゃないって?
2018/02/06 09:02

yomogi

気のせいさ。僕は君の前じゃいつだって大真面目だよ。
2018/02/06 09:03

yomogi

(完)
2018/02/06 09:03

yomogi

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