三題噺のお部屋

偽教授

エピソードの総文字数=490文字

この世界の人間は、成人すると猫のことを忘れてしまう。猫と話をし、猫に餌をやるのは、だから19歳と364日の「子供」までだけだ。19歳と364日。つまり、今のぼくと同じ年齢。


この猫は、ミィという。僕が生まれる前、まだ未成年だった母が拾った。らしい。母は未成年のうちに僕を産み、幼い頃の僕と一緒にミィを可愛がった。だけど母が20歳になったとき、母は、ミィのことを忘れてしまい、ミィの姿を認識することができなくなった。


別に母が非情なわけではない。それがこの世界での運命というものなのだ。


ミィは幸運な猫であった。母がたまたま僕にその存在を引き継いだから、誰からも忘れられてしまうということもなく、餌をくれる人間が絶えるということもなかった。なお、猫というものについては、特筆すべきことはない。これを見ているそこの君、あなたの世界にいる猫と、ほとんど同じものに過ぎないよ。


さて。午後11時59分を越えた。いよいよ、ミィともお別れの時間が近い。僕の頭の奥で、カチリと何かの音がした。歯車が、回ったかのような。さよなら、ミィ、とぼくは呟き、呟き終えたときに思う。ミィって、何だっけ。

2018/01/22 02:40
執筆:偽教授
2018/01/22 02:57

tantankyukyu

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