超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

受難 ③

エピソードの総文字数=2,542文字

 学校を――召愛を救えるのは、俺だけ……?

 その方法は、親友の罪を暴くことによって?

 

「今から、わたしはこの部屋を出ます。コッペ君が、決断していただけるなら、遊田さんに電話をかけて、核心を訊ねてください。


 なお、この部屋の防音は完璧で、他人に声を聞かれることはありません。集音マイクも、作動していません。遊田さんから聞き出したことを、他人に言うかどうかは、コッペ君にお任せします」

 それだけ言って、羽里は外へ出た。


 ああ、くそ……。

 こんなの、どうしろってんだ?


 わかりきってるだろ。

 やるしかない。

 やるしか、ないんだ。

 

 遊田が、もし真犯人ならば、あいつを説得して、自首させる事も考えなきゃならない。もしかしたら、それ以外の、もっと良い解決策だって見つかるかも知れない。

 これからどうするにしても、真実を聞きださないことには、何も始まらない。


 俺は、理事長室の真ん中に突っ立ったまま、スマホを取り出し、電話をかけた。

 しばらくの呼び出しのあと、やっと繋がった。

「も、もしもし……俺だ。よ、よお、その……元気か?」
 最初の一言をどう言えばいいか、さっぱりわからず、間抜けな挨拶をしてしまった。
【な、なによ、いきなり……。元気なわけ、ないでしょ。

 元刑事から、同じことを繰り返し聞かれて、うんざりしてたとこよ】

「そ、そうだよな……。

 昼飯は、やっぱカツ丼とか食わせてもらってるのか?」

【カツ丼?】
「ほ、ほら、口を割らない容疑者の取り調べって言ったら、カツ丼がテンプレだろ」
【ふつーに学食のサンドイッチ食べてたわ。そこで電話が掛かってきて、集音マイクがないっていう部屋に一人で通されたんだけど】
「じゃあ、この会話は、誰にも聞かれてないんだな?」
【そうね】
「お前、なんで、朝にうろついてた理由、ちゃんと言わないんだ」
【そ、そんなの、他人に言えるわけないじゃない!】
「でも、そのせいで、疑われちまってるんだぞ?

 お前、悪い事は何もしてないんだろ?」

【他人に、あれを言うくらいなら、疑われた方がマシよ】
「そんなに、言いにくいことなのか……?」
【あ、あったりまえじゃない……】
「どうしてだ?」
【そ、それは、だって。わ、わかんない……の?】
「俺は、エスパーじゃないぞ?」
【エスパーじゃなくたって、そんくらい、察しなさいよね!】
「じゃ、じゃあ、もうズバリ、訊くからな……。

 お前、朝になにやってたんだ?」

【えっ!?】
 な、なんだ、この意外な質問すぎる、っていうリアクションは?

 だって、みんなそこを知りたがってたわけだぞ?

【ちょ、ちょっと待って、コッペ。

 あんた、まさか……、今朝は寮の個人郵便受け、見てないの?】

「あ、ああ。一週間に三回くらいしか見ないぞ?

 それが、どうかしたのか?」

「うっ……」
「ば、ばーか、ばーーか、ばーーか!

 バッカじゃないの! ちゃんと毎朝みなさいよね!」

 と、電話が切られてしまった。


 つーか。寮の個人郵便受け?

 そこに、遊田が何をしていたかの、答えがあるってことか?

 廊下に飛び出した。
「ど、どうしたのですか、そんなに慌てて」
 部屋の前で待っていた羽里が、驚いて、あとずさったよ。
「話しはあとだ。寮に一端帰らにゃならない。校内を走る許可をくれ」
「は、はい。緊急事態ですので、許可します。気をつけて」
「おう!」

                 走った。


 校内を駆け抜け、昇降口から出て、雑木林の道を全力疾走だ。


 寮に帰り着き、ドアを急いで開け、中に入った。

 そして玄関に設置されている個人郵便受けの中を見てみた。


 シンプルな白い便せんが、あった。

 中には、何か硬い物が入ってるのがわかった。開いてみた。


 鍵が、でてきた。選挙事務所室の鍵だ。俺の学生番号が刻まれている。

 間違いなく俺の失くしてた物だ……。


 それと、なぜか、ボタンも一つだ。


 メモ用紙も入ってた。

 こう、書かれてた。

 誰かに拾われたら大変だと思って、開門時間から探し回ってあげたんだからね。

 昨日探してない場所を、そりゃあもう、一生懸命歩き回ったわ。


 そしたら、校舎裏の茂みに落ちてたのを見つけた。感謝しなさい。

 それとボタンもあったけど、これも、あんたの?


 スイーツ美味しかった。ありがと。



                              イスカ 

 おい、遊田。

 おい、遊田。

 おい、遊田!


 なんだよ、お前……。

 俺のために、こんな事してくれてたのかよ。


 ああ、くそう。

 お前は、ほんと、どーしようもないほどに、


       心の友じゃねえか!


 

 馬鹿だな……お前。本当に馬鹿だ。

 こんなの、捜査員に言っちゃえば良かったじゃないか。

 でも、どーせ、お前のことだ。

 振られた相手の気を惹こうと未練がましく思われるのが嫌だからとか、どうでも良いプライドに、拘ってんだろうよ。


 でもな、お前がやってくれてた事は、誰にも引け目を感じることじゃない。

 胸を張れよ。

「待ってろ、遊田、疑いを晴らしてやる」

 俺は学校へ走って戻りながら、羽里へ電話を掛けた。

【コッペ君、状況は?】

「俺の選挙事務所室の鍵が見つかったんだ。

 遊田が、探してくれてたんだ――」

 走りながら、事の次第を説明した。

「――これでわかったろ。あいつは、何もやってない!」

【残念ですが、それだけでは、遊田さんの無実は証明できません】
「なんでだよ!?」
【遊田さんが、あらかじめ鍵を盗んでいても、同じことができる】
「ああ、くそっ!」
【召愛と遊田さんの無実を証明するなら、やはり、真犯人を特定する他ありません。そこで確認です。あなたは鍵を失くした日に、校舎裏に行ったのですか?】
「いや、んな場所、用ないだろ?」
【ならば、今すぐ、鍵とボタンを、捜査班へ持って行ってください!】
「どういうことだ?」
【遊田さんが無実である前提ですが、コッペ君が行ってない場所で、鍵が見つかったという事は、真犯人が選挙事務所室の扉を解錠したあとで、そこで捨てた可能性が高い。


 ボタンもその時に、茂みの枝などに引っかけて落としたかも知れない。とすれば、真犯人に繋がる有力な手かがりになりえます】

「オーケーだ。超特急で届ける」
【お願いします。それが学校を救える最後の希望です】

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