17歳の牧師だけど何か質問ある?

よしゅあ、牧師やめるってよ。

エピソードの総文字数=2,487文字

「・・・行っちゃったね。ダリア・・・」
「・・・そうだな・・・」

あのキャンプから二週間たって、ダリアはカナダに帰って行った。
空港までの見送りに行けたのは、俺と、旅行から帰ってきた、さくらだけ。

昨日の、ダリアが日本にいる最後の日曜礼拝には、
ぼたんちゃん、ひまわりちゃん、樹太郎くんに・・教会員のみんなが参加して、
・・・葉一は家族旅行中で、ハワイから電話してきた。

「やまのべ教会のミナサンにハー、タイヘンオセワにナリマシター!
ワタシ、ワタシ、オワカレガツライです・・・・」
グスッ、グスッと、鼻をすすりながらダリアが言う。
その手には、みんなからの、『日本のおみやげ』がいっぱいだ。
「また、遊びに来たらいいんじゃから・・・・」
といいながら、トラじーちゃんも、もらい泣きしている。
「私たち、教会員みんな、いつでもおまちしていますよ・・・」
と、タケばーちゃん。
「これ、ぼくがつくったレシピブックです・・
これだけ!守ったら、絶対おいしい料理ができますから・・・」
「ジュタロウ・・・!」
・・このレシピブック、料理に必要な材料よりも、『いれてはいけない』ものの
ほうが詳しく記載されているぞ・・・!

「これ、私の特選・日本の文化です・・ぜひ・・」
ひまわりちゃんはそういって、かなりパンパンに詰め込まれた、紙袋を渡した。
アニメキャラの巨大なぬいぐるみとかが見えてのはいいとして、
メイド服は日本の文化ですか?
・・・ダリアは感動して、オソロイデスネ!とひまわりちゃんに言ってたけど、
ひまわりちゃんの服装も日本の文化じゃないぞ・・・(多分)!

「ダリアちゃんこれね!ぼたんがママと作ったの!」と、ぼたんちゃんが渡したのは、大きなダリアがあしらわれた赤いかんざしだった。
「ワーぉ、グレイト!・・・コウ、頭にブッサス?」
「刺しちゃだめだよ!つけてあげる!」
「ボタンチャンはー、ホントにヤサシーデス!」

ダリアがこの教会に来たばかりのころは、どことなくみんな、よそよそしかった。
けど、ダリアがいつも笑顔で話しかけてくることや、気が付くとトイレ掃除や片づけとか、こまごまと働いている姿をみて、警戒がとけたようで・・・

「よしゅあー、ドウ?カワイー?」
「うん、ダリアと小さな花がゆれて、それ、すごい、かわいい」
「カンザシジャナクテー、ワタシのコトー!」
それをきいて、教会員のみんなが笑った。
こういう時間もあとわずか、か・・・

―あのキャンプのあとは、さくらも葉一も・・・ゆりさんも教会に集まることもなくなって、明日はダリアが帰る。

なんとなく、センチメンタルに気持ちになっていると、
ダリアが、こっちをじっと、見つめてきた。
「よしゅあ、ヒトツキ、ホントに、アリガトゴザイマシタ!
私ノツクル料理、文句イイナガラ、デモ全部食ベテクレタリ、
キャンプトカ、イロイロ無茶、キイテクレテ、嬉シカッタ・・・!」
「いやそれは・・・」
料理は捨てるわけにいかないし、キャンプができたのは俺だけじゃないし。

「・・・よしゅあ、アナタは、自分がオモッテイルヨリモ、素晴ラシイ、
ハタラキヲ、シテ、イマス。
・・・私タチは、何ガ、神の最善ナノかは、ワカラナイ。
ケレドモ、常に、イエス様に、喜んでモラエルヨウに行動スル、
アナタは、確カに、イエス様の僕デス。」
僕?あ、しもべね、しもべ。

ダリアが、まわりにいる、みんなを見回した。

「やまのべ教会の人々、ミナサンモ、素晴ラシイデス。
17歳の牧師ヲ、批判デなく、祈りデ、支エテイタ。
コウヤッテ、育ててモラエル牧師は幸セダト、ワタシは、思イマス。

・・・ダカラ、

・・・よしゅあ!
ツヨクアレ!オオシクアレ!」

ダリアが、握手の手をさしのべてきたので、手をのばすと、その手をつかんで、
ぐっ、とひっぱられた。

「ワタシも、よしゅあノ、イイ奥サンにナレルよう、ガンバル!
ね、ヤ・ク・ソ・ク!」
ちゅ、っと、一瞬だけ、口のよこに、柔らかいものがふれた。

その瞬間、ばちばちばち!と、フラッシュがひかり、驚いてそちらを見るとー
トラじーちゃんがスマホ、椿さんが一眼レフのカメラで撮影していたのだったー・・・


ーそんな、昨日までの喧騒が嘘のように、礼拝堂の中は、静まりかえっている。
することもなく、一番前の席に座って、ぼーっとしていると、

「よしゅあ、なんか、元気ないんじゃない?」
空港から帰って、なぜか礼拝堂までついてきた、さくらが隣に勢いよく、腰かけた。

「別に・・・しずかだな、って思っただけ。」
「そうねー、ダリアとひと月も一緒に暮らしてたわけだし?」
からかうように言いつつも、なんとなく、言い方が優しい。

「・・・準備も忙しかったけど、キャンプ、私は楽しかったな。
また、ああいう風に、集まれたらいいかもね、」
そうだな。

「毎年、できたらいいかもね。・・あ、来年は受験かぁ・・・。
・・・・よしゅあはさ、、大学受験、するの?」
そうだな。

・・・・・・・・・・・・・・・。

さくらと、顔を見合わせた。

「・・・俺さ、なんとなく、このままで、いいかもしれないな、って考えてた。
教会の皆は優しいし、親父たちの教会を守ることが俺のするべきことかな、とか。
お前のいうとおり、「とりあえずのまにあわせ」でも、牧師ができてたし。
・・けどさ、今回のキャンプで・・俺、とても牧師の器じゃないな、って。
・・・心から、助けを求めている人に、俺はまだ、答えを示せないっていうか…」

さくらは立ち上がりながら、笑った。

「だから、そういうことは、『イエス様』が、するんでしょ?」
「は?」
この間、よしゅあが、泣きながら言ってたじゃないー、
そういいながら、
さくらは礼拝堂をでていこうとして、振り向いて、言った。

「よしゅあ、牧師、やりなよ。」
・・・・・そしていつか、私を救って。

さくらが開けた扉から光がさしこみー礼拝堂と俺を、照らしたのだった。


◆作者をワンクリックで応援!

5人が応援しました。

◆コメント欄は未記入でもOK! 公開されないのでお気軽に。

ページトップへ