超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

【三日目】そのおっさんが続けて言った。「だからこそ、ペロペロせよ」

エピソードの総文字数=3,069文字

 俺たちを乗せたヘリはグラウンド脇のヘリパッドに着陸した。


 俺と召愛は校舎へと向かって、芝生のグラウンドを歩き出した。

 そして、中庭でだ。

 大勢の生徒や職員たちが、待ち構えていた。

「――」
「――」
「――
「――」
「――」
「――」
「――」
「――」
「――」
「――♪」
 その先頭に居たのは、ちびっこいツインテールの奴――
「――」

 羽里だ。

 クリップボードを持ってて、そこには一枚の書類が挟んである。

 俺の前まで来て、羽里はそれを見せてきた。

 

         『復学申請書』

「コッペくん、あなたが通う学校を探していると聞きました。

 であれば、この新生・羽里学園を強くお勧めします」


 ――!?
「何言ってるのか、わかってんのか……?」
「そのつもりです」
「だ、だいたい、校則でも、違反による退学者の復学は認められてなかったはずだろう」
「ですから、ここは新生・羽里学園です。

 全ての校則は、一点一画もあまさず成就されつつある。今日から、違反による退学者でも、強い反省を示せば、復学が可能となりました」

「でも〝真犯人〟の俺が、復学なんかしたら、お前の母親が――羽里家当主が黙っちゃいないだろう? 俺だってお前の友人なんだ。悪影響がどうとか言って、イチャモン付けてくるに決まってる」
「それについてですが、昨日の夜、このような事がありました――
______________________________
 羽里家、第104号館『夏期用・当主住居』――
「夜分遅くに申し訳ない。先日の『生徒会長に対する工作事案』に関して、どうしても御当主に取り次いでもらいたい要件がある」
 暗くなった頃に、傷だらけの顔の波虚(はうろ)が羽里の家を訪れたそうだ。

 

「申し訳ありませんが、前日までにアポイントメントを頂いてない場合は、面会をお断りさせて頂いております」
 と、使用人はマニュアル通りに対応したのだが――
「人間一人の人生が掛かっている緊急の要件だ。

『工作事案の真犯人に関する核心的な情報がある』と伝えて欲しい」

 かくして、波虚は羽里当主との面前へと通された。
「初めまして。

 わたくしが、羽里家当主。羽里 姫麗留(はり ひれる)です」

「このような出で立ちで申し訳ありません。

 私は羽里学園の生徒。波虚 栄(はうろ はえる)です。


 単刀直入に申し上げます。先日の工作事案、真犯人は――。

「――私です」
「――!?」
「私が仲間を率いて行いました。

 仲間と協議の上、ここに、客観的な証拠になる物品を全て持参しました。ご自由にお調べになって構いません」

 葉虚が提出した証拠の数々は、説明不要なほど決定的なもので、波虚自身が犯人であることを示していたそうだ。
「それと、これもぜひ、ご覧ください」
 さらに葉虚が提出したのは、膨大な量の書類――

 それは署名、だった。

「これは、昨日から羽里学園の生徒、職員たち皆が集めた署名です。

 今事案で、自ら真犯人を名乗り出た生徒、『コッペ』と呼ばれる彼の復学を、嘆願する旨です。どうか、寛大な処置を頂けないでしょうか」

「………………」
「寛大な処置など、必要ありません」
「そんな!」


 ――ニコリ

「犯人でなかったコッペ少年に、寛大な処置など必要ありますか?

 彼は即刻、復学されるてしかるべきです」

「――!」
「しかし……あなた方の退学は免れないでしょう。なのに、なぜ、今頃になって、自首などを? このまま黙っていれば、良かったであろうものを」
「それは――」
「いいえ。言わずとも結構です。どんな言葉よりも、ここにあなたがこうしてやって来た事が、全ての証明になっている――

 彩へ、伝言を頼めませんか?」

「と言いますと?」
「こう伝えてください。『良い学校を作りましたね。あなたこそ、羽里家の跡継ぎに相応しい』と」
_____________________________________
「――というわけです」
「あたしも、署名いっぱい集めてあげたんだからね。

 そりゃもう、過労死する寸前くらいまでね」

「遊田さんは、映画の打ち合わせを蹴って、一昨日から昨日にかけて、署名集めに走り回ってくれました。個人で集めた署名の数に関しては、ナンバーワンです」
 じゃあ、一昨日に、遊びに行こうぜと誘った時に、断られたのも……。

 映画の仕事とかじゃなくて、俺の署名を集めてたからか……。

「ありがとうな、遊田」
「そうよ。いっぱい感謝しておけばいいわ」
「けどだな……。そうなると、葉虚の奴らは……やっぱ退学に」
「よお、コッペ」
「――」
「――」
「――」
「――!?」
「彼らは昨日付で、退学になっています。

 しかし、今日付で復学しました。強い反省を示した根拠については、先ほど自首してきた話しで十分ですから」

「と、いうわけだ」
「おい、葉虚――」
 俺は葉虚に駆け寄ってだな。強引に肩を組んでやったぜ。

 んで、ギチギチに抱き寄せてだな。頭をぐりぐり乱暴に撫でてやった。

「ええい、やめろ、やめんか、暑苦しい!」
「ありがとよ」
「それでは、コッペ君。復学申請書にサインを」
「ああ、そうさせてもらう」
 と、俺が羽里からペンを受け取ろうとしたらだ――。
「あ、ちょっと待ってください。重大な見落としをしていました。

 やはり、復学は認められません」

「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
 羽里は、校則全書をペラペラとめくりだした。

 それは良く見ると、『新約校則全書』という新しい物だった。

「校則ではこうなっています。

『虚偽によって、交際相手を傷付ける。または精神的な負担を強いた場合、退学とする』


 コッペ君は、大講堂で虚偽の自首をしたことによって、召愛に多大な精神的負担をかけました。あの後、召愛が何時間泣いていたか、知っていますか?


 おかげで、わたしが慰めるために、何時間、頬ずりをグリグリされたか、わかりますか? 頭をグリグリされすぎて禿げそうになりました」

「でも……あんときゃ、ああするしか」
「反省が見られないようですね。よって復学手続きは中止とします」
「あ、あの理事長……ここは、そんな硬いことを言う場面では……」
だまらっしゃい!

 校則は校則です。例外は認められません」

 うわぁ……。

 新生しても、羽里はやっぱ安定して羽里だった……。

 媚びぬ、退かぬ、妥協せぬ。

「なら、コッペ。強い反省を示せばいいのよ!」
「そ、そうだ。それなら、良いのだろう彩?」
「この場合、強い反省を示す行為として、認められるのは――校則によるとこうあります。


『新校則、第11条。強い反省とは、行いを悔い、自らの在り方を、改めることである。これは本来、内的な行為であるが、他者へもその意思を伝える必要がある場合、以下が該当する。


 その①頬をペロペロ

 その②鼻をペロペロ

 その③おでこをペロペロ


                  以上」

 うわぁ……。

 なんか、新生校則、すんごい頭悪そうな感じになってやがる!!

「って、1から3までペロペロじゃねえか!」
「他に、十分な反省を示す行動を思いつかなかったんだ……。

 土下座などよりも、心から反省している事を示す場合、やはりペロペロしかないと」

 ほんとに良いのか……こんな奴に校則作らせて……。

 ブラック校則じゃなくて、なんか得体の知れないカラーの校則になっちまってんぞ。

「では、コッペ君。強い反省を示すというのならば、やってください。

 この場で、ペロペロを、召愛へ!」

「え……。ペロペロ……? 召愛を?

 この場、って、学校のみんなが見てる前、で?」

「んふうっ……?」
「えっ……」
「やれやれ……」

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