お化け勇者と困った趣味の仲間たち

第1話 勇者は始まってすぐ死にました!(改)

エピソードの総文字数=1,642文字

私は幽霊……体はもうない。数時間前に死んでしまった元勇者のお化けである!
あの……本当に……本当に勇者さんですか?
さっきから怖がって私に近づいてくれないこの子はチーちゃん……魔王による世界征服を防ぐため、一ヶ月前、この異世界に私を召喚した魔法使いである!
その声に、その口調……確かに勇者さんと同じですが……。
すぐに分からないのも無理はない……なぜなら私はこの姿。
まるでデフォルメされたお化けのような勾玉型のシルエット……生前の面影が一切反映されていない丸っこいフォルム……これでは誰の幽霊か分からなくて当然である。
その無駄にナレーションっぽい言葉遣い……間違いありません、勇者さんです! でも、勇者さんはついさっき……
そう……私の体はモンスターの襲撃に遭い、あっさり丸呑みされてしまったのだ。
どっ、どうやってモンスターのお腹から出てきたんですか?
見てのとおり私は幽霊……実体をなくしたのでそのまま胃から突き抜けてきたのである。
そんな……本当に死んじゃったなんて……でも、ダンジョンの中でゴーストになった魂は本来理性を失って人に取り憑こうとするはずじゃ……?
うむ、どういうわけか私は理性を失わなかったらしい……おかげでこうやってチーちゃんと再開することができたのである。
うぅ……勇者さんが丸呑みされた後、他のメンバーはみんな脱出魔法で逃げちゃって……私一人ダンジョンに取り残されたんです。
大丈夫、私が来たからにはもう安心……と言いたいところだが、何度も言っているように私は幽霊……ぶっちゃけ再びモンスターが襲ってきたら手も足も出ない。そう、見てのとおり足はないのだ!
一人でいるよりはずっとマシです……他のみんなは剣が使えたり、弓が使えたりしますけど、私はまともな魔法が何一つ使えませんから。
そのとおり、チーちゃんは名前だけの魔法使い……驚くほどの魔力を有しているわりに、一般的な魔法はなぜか習得できないのである。
うぅ……まともな魔法は使えないって自分で言ったけど、他の人から「名前だけの魔法使い」って言われるとやっぱり凹みます……。
唯一彼女が発動できるのは召喚魔法……しかし、思ったとおりのものを召喚できたことはなく、いつも呼び出したいものとは若干違うものが出てきてしまうのだ! 何を隠そうこの私も、チート能力を秘めた勇者の代わりに間違って召喚された平凡な中年男性なのだ!
ぐすっ……ごめんなさい、私の魔法が未熟なせいで……本来、勇者として召喚された人間はとても強いはずなんですが……
残念ながら私には、異世界に召喚されて新しい力に目覚める!……というようなお約束の展開はなかったようである。ぶっちゃけこの一ヶ月、戦闘において役に立ったことはない!
カメレギオンにもあっさり食べられてましたもんね……出会って五秒で呑み込まれるなんて。
説明しよう! カメレギオンとは、名前のとおり巨大なカメレオンのようなモンスターである。鳴き声はカエルに似ており、大人しそうな顔のわりに動いているものは何でも喰おうとする。その長い弾力のある舌で一瞬にして絡め取られた私は、何一つ反撃することができずに死を迎えた……。
勇者さんに会えてホッとしてましたけど……カメレギオンもまだ近くにいるかもしれません。私たちだけじゃとても太刀打ちできませんし、また襲われてしまう前に早くここを離れましょう。
うむ、先ほどの襲撃と仲間の逃走で手荷物もほぼ失ってしまった状態……ひとまずモンスターを避けながら食料や寝床を確保しなければ! できれば新しい仲間もほしいところである。
そうですね、ここはダンジョンの中でも特にモンスターが多いと言われる地下迷宮……私と勇者さんの二人だけじゃ、とても生きて出られるとは思えません。
そのとおり、私は幽霊……既に生きては出られない!
あぅ……そうでした、ごめんなさい。
気にすることはない。私は優しい幽霊なのだ!
何でこの人、この状況でテンション高いんだろう……。
空元気である!
ごめんなさい!

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