うちの冒険者はみんな困った趣味を持っています!

第1話 勇者は始まってすぐ死にました!(改)

エピソードの総文字数=1,733文字

私は幽霊……体はもうない。
あの……本当に……本当に勇者さんなんですか?
いかにも……私は異世界から召喚され、この一ヶ月チーちゃんと苦楽を共にしてきた勇者である!
その声に、その口調……確かに勇者さんと同じですが……。
すぐに分からないのも無理はない……なぜなら私はこの姿。
まるで絵本に出てくるお化けのようなシルエット……生前の面影が一切反映されていない丸っこいフォルム……これでは長期間一緒にいた者でもすぐに分からなくて当然である。
その無駄にナレーションっぽい言葉遣い……間違いありません、勇者さんです! でも、勇者さんは昨日死んだはずじゃ……!?
そのとおり……私は昨日の夜モンスターの襲撃に遭い、あっさり丸呑みされてしまったのである。
どっ、どうやってモンスターのお腹から出てきたんですか?
見てのとおり私は幽霊……実体をなくしたのでそのまま胃から突き抜けてきたのである。
そんな……やっぱりあの時本当に死んでしまったんですね……でも、ダンジョンの中でゴーストになった魂は、本来理性を失って人に取り憑こうとするはずじゃ……?
うむ、どういうわけか私は理性を失わなかったらしい……おかげでこうやってチーちゃんと再開することができたのである。
うぅ……勇者さんが丸呑みされた後、他のメンバーもみんな逃げちゃって……ずっと私一人で隠れてたんです。
大丈夫、私が来たからにはもう安心……と言いたいところだが、何度も言っているように私は幽霊……ぶっちゃけ再びモンスターが襲ってきたら手も足も出ないのである。(実際、足はない……)
一人でいるよりはずっとマシです……他のみんなは剣が使えたり、弓が使えたりしますけど、私はまともな魔法が何一つ使えませんから。
そのとおり、チーちゃんは名前だけの魔法使い……驚くほどの魔力を有しているわりに、一般的な魔法はなぜか習得できないのである。
うぅ……まともな魔法は使えないって自分で言ったけど、他の人から「名前だけの魔法使い」って言われるとやっぱり凹みます……。
唯一彼女が使えるのは召喚魔法……しかし、思ったとおりのものを召喚できたことはなく、どこから何を呼び出してしまうか本人にも分からない! 何を隠そう、私もチーちゃんにたまたま召喚されてしまった平凡な中年男性なのだ。
本当は召喚の練習で森からフェアリーを呼び出そうとしたんですけど……いきなりお父さんぐらいの男性が出てきてびっくりしました。
私も妖精として自分が召喚されたことにはびっくりである……。
異世界から人間を呼び出すなんて普通はそうそうできないんですけど……今までこの世界に召喚された人たちは漏れなく歴史に残る有名な人物になってますし……。
ちなみに私は貧弱な人間……異世界に召喚されれば何かしらチート能力を与えられるというお約束は見事に無視され、一般人の一般的なステータスのまま勇者となったのである。したがって今までもモンスターとの戦闘において役になったことはない!
カメレギオンにもあっさり食べられてましたもんね……出会って五秒で呑み込まれるなんて。
説明しよう! カメレギオンとは、名前のとおり巨大なカメレオンのようなモンスターである。鳴き声はカエルに似ており、大人しそうな顔のわりに動いているものは何でも喰おうとする。その長い弾力のある舌で一瞬にして絡め取られた私は、何一つ反撃することができずに死を迎えた……。
勇者さんに会えてホッとしてましたけど……カメレギオンもまだ近くにいるかもしれません。私たちだけじゃとても太刀打ちできませんし、また襲われてしまう前に早くここを離れましょう。
うむ、できれば早く他の仲間を見つけたいところである。何しろ私もチーちゃんも攻撃力は皆無に等しい。そして、ダンジョンの中は危険でいっぱいである。
そうですね、ここはダンジョンの中でも特にモンスターが多いと言われる地下迷宮……私と勇者さんの二人だけじゃ、とても生きて出られるとは思えません。
そのとおり、私は幽霊……既に生きては出られない!
あぅ……そうでした、ごめんなさい。
気にすることはない。私は優しい幽霊なのだ!
何でこの人、この状況でテンション高いんだろう……。
空元気である!
ごめんなさい!

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