アストロン~他人を操れる四駆マシンで自由を手に

他人を操る四駆マシン

エピソードの総文字数=5,824文字

2018/01/01 22:35

あたしは北条麗羽(ホウジョウ ウルハ)。高校1年生。乙女座のA型です。



 正直、割と美人な方だと思います。同世代の中では比較的胸も大きいと思います。頑張って手入れしている綺麗なストレートロングヘアーがちょっと自慢です。

2018/01/01 15:52
 ――ですが、あたしは全然華やかな生活はしていません。少しでもいい会社に就職する為に渋々つまらない勉強をしてばかりの毎日です。そんなに就職がしたいのかというと、違います。生きていく為に仕方がなくってだけの話です。現在の若者は低収入を余儀なくされ、結婚なんて夢物語なご時世。なので、女でも働くしかないのです。
2018/01/27 00:04

部活もやっていますが、特に好きでもありません。単なる内申点稼ぎです。


恋愛なんてしていません。余裕がありません。勉強や部活で忙しいし、デートに費やすようなお金と時間がないのです。

それに、男の人にお金を出させるのも気が退けます(そもそも、今時お金に余裕のある男の人なんてほとんどいない事ぐらい知っていますから)。


2018/01/27 00:05

あたしは渋々現実を受け入れているのです。

お先真っ暗な人生を淡々と生きる、屍のような存在なのです。


――ですがある日、大きな転機が訪れたのです。そう、“彼”と出会ったのです。


2018/01/27 00:05
2018/01/01 22:36
「おい。お前、これ(車の玩具を示す)と同じようなマシンを持っているだろう?」


2018/01/01 15:53

「えっ?」



 あたしは慌てて自分のバッグを確認しました。彼の指摘通り、バッグから光が漏れていた。急いでバッグを開け、小箱に入ったレーシングホビーマシンを取り出します。輝きは一時的なもので、2人がそれぞれ持つマシンの光はフッと静まりました。

2018/01/01 15:54
「やはりな」
2018/01/01 15:57
「そうだ。これについて聞きたいんだけど……」
2018/01/01 16:00

「いいだろう。百聞は一見に如かず。丁度いい実験台がいることだ。まぁ、見るがいい」

 

 

2018/01/01 16:02

勝獅がレーシングカーの玩具を翳す。

 丁度近くにいた選挙カー付近で缶ジュースを飲んでいる政治家の中年男性へ

「有り金を全部よこせ」と命令した。

2018/01/01 20:40
「あぁいいよ。どうぞどうぞ」

 政治家の中年男性はあっさりと気前よく財布を丸々勝獅へ渡した。

2018/01/01 16:04
「え、えぇえええっ!? 嘘でしょ?」
2018/01/01 16:06

「見たか。これがアストロン。いとも簡単に他人を操れる、何でもアリの四駆マシンだ」

 

2018/01/01 16:06

彼の名は光我勝獅(コウガ ショウジ)。

彼が所持しているのはカイザーレーヴェン。獅子座のアストロンである。

2018/01/01 20:41

「この金はくれてやる。俺はもう十分確保しているからな」

 

2018/01/01 20:41

 しれっとそう言ってのけた勝獅は先程政治家から譲渡“させた”財布を麗羽へポイと投げ渡す。咄嗟に麗羽はあたふたとその財布を空いている手でキャッチしてしまった。


2018/01/01 20:42
「……って、いやいやいや。こんなの貰えないよぉ~」
2018/01/01 16:07
「悪人や権力者からは迷いなく金を頂け。特に若者はな。若者こそ金を持っておくべきだ」
2018/01/01 16:08

「そ、そんなこと言われても……」

 

2018/01/01 16:09
「罪悪感があるか? ならば、あの政治家がどんな人物か暴いてみようじゃないか。(再度政治家にアストロンを翳し、)あんたが当選するための戦略を言え」
2018/01/24 21:59
政治家「(屈託なく世間話をするように)そんなの決まっているじゃないか。高齢者だよ。高齢者を喜ばせるようなマニフェストを掲げて、多数の票を稼ぐのさ」
2018/01/24 22:00
「……で、若者に対してはどうするつもりだ?」
2018/01/24 22:02
政治家「高齢者たちを気分よくさせる為にバッシングするのだよ。『こいつらが今苦しんでいるのは全て自業自得。高齢者様たちの方が昔は苦労していたのだから、若者たちを救うマニフェストなど掲げません』……とね。当選される為に選挙活動しているのだから、合理的な戦略に出るのは当然だろう?」
2018/01/24 22:02
「(ドン引き)うわぁ」
2018/01/24 22:06
「ま、政治家なんてこんなもんだろう。あてにするだけ時間の無駄だな。そして、こんな奴にいいように利用されたままでイイと思うか?」
2018/01/24 22:07
「いやぁ、冷遇されたい人なんていないと思うけど……」
2018/01/24 22:08

麗羽が困惑している間に政治家の男は選挙カーに乗り、この場を去ってしまう。財布を返す機会を失った。溜息をつき、麗羽は見つめる。自身の掌上にある車の玩具=パステルイエロー色の乙女座のアストロンを……。


2018/01/01 20:42

「あ~あ、行っちゃった……。しょうがないっか。ところで、このマシンは小学校の時、理科で作った車の模型が窓から入ってきた変な光を浴びてこうなったんだけど、そっちもそう?」

2018/01/01 20:43
「あぁ。あれは1カ月前ぐらいか。家に飾っていたミニ四駆……車の玩具が突然現れた変な光を浴びて獅子座のアストロン・カイザーレーヴェンの姿へとなった。経緯はどうであれ、これを有効活用しないのは宝の持ち腐れだろう」
2018/01/01 16:09
「えっ? もしかしてこれで悪いこと、する気?」
2018/01/01 16:10
「違うな。もっと有意義なことだ。こいつらアストロンはレーシングカー。すなわち走ってこその存在。思う存分走らせるべきだ。そして、俺たち自身もレースを堪能するべきだ」
2018/01/01 16:11
「ってことはどういうこと?」
2018/01/01 16:12
「簡単なことだ。金持ち共を操り、金を出させ、アストロンのエンターテイメントビジネスを興す。F1のようにな。遊んで金儲け――そんな夢を俺は手に入れる」
2018/01/01 16:12
「む、無茶苦茶ぁ~っ! やっぱり悪い事じゃん!」
2018/01/01 16:13
「ところで、アストロンを持っている奴に会ってみたくないか? 俺には2人知り合いがいる。これからそいつらに会いに行く。付いて来るか?」
2018/01/01 16:34
「他に2人いると判明しているんだ」
2018/01/01 16:36
「今のところな。うち1人は女だ」
2018/01/01 16:37
「あたし以外にも女の子、いるんだ。よかった……。分かった。あたし、ついていく。その人たちとも話してみたいから」
2018/01/01 16:38
「よしイイだろう。ついて来い」
2018/01/01 16:39
 獅子座のマシンを持つ彼に連れられ、空地へと来ました。

 そこでやんちゃそうな少年が車の玩具を走らせてました。

 そのマシンは少年の命令を受け、加速したり曲がったりできました。持ち主の命令を訊けるマシンなようです。

 また、そこにはあたしと同世代の女の子がいました。彼女は車の玩具をハンカチで磨いていました。

 あたしたちが来たことに気付いた2人はこちらへ自己紹介を始めます。

2018/01/01 16:44
2018/01/01 23:21
2018/01/01 23:22
「おーっす。俺、弓家馬慧(ゆげまさと)。射手座のレーサーだぜ」


2018/01/01 16:48
「らりほ~。あたし、綾辻桜華(あやつじおうか)。牡羊座のレーサーよ。女子同士、気兼ねなく接してね」
2018/01/01 16:49
「う、うん。あたしは北条麗羽。乙女座のアストロンを手に入れちゃった人です……」
2018/01/01 16:50
「そして俺が光我勝獅。自己紹介が遅れたな。さて、ここに集まって貰ったワケだが、アストロンの公式レースの開催が決定し、コースも直に完成となった。それを祝して、派手に飯に行くとしよう」
2018/01/01 16:51
「っしゃー。待ってましたーっ!」
2018/01/01 16:53
「へぇ~。意外と早かったじゃな~い?」
2018/01/01 16:54
「うひょ~! これからはホビーレース三昧だぜー!」
2018/01/01 16:54
「ちょ、ちょっと待って! 皆、学校は? あたし、高校1年だけど皆、あたしと同じぐらいの年齢だよね?」
2018/01/01 16:55
「学校? んなモンもうとっくに行ってねーよ」
2018/01/01 16:56
「だって、アストロンを手に入れた以上、学歴を手に入れて社会様に気に入られる必要がないじゃーん?」
2018/01/01 16:57
「あ、あぁ……(困惑) そう言えばそうだった……」
2018/01/01 16:58
「フッ、俺たちの極楽な人生の始まりだ」
2018/01/01 16:59
「ね、ねぇ、金持ちや権力者から出させたお金でやるんでしょ? そんなことしていいの?」
2018/01/01 16:59
「いいんだよ。このまま真面目に学校で勉強したって低賃金長時間労働の社畜じゃねーか。俺はゴメンだぜ」
2018/01/01 17:01
「そうそう。一流大学に出たって、過労死に追い込まれるってニュースでよくやっているじゃん? だったら、そんな道逃げるが勝ちじゃなーい? それとも何? 麗羽ちゃんは会社にこき使われたいの?」
2018/01/01 17:03
そんなことは……。う~ん、でもあたし今まで勉強して会社で働かなきゃいけないって思い込んでいたから、皆の考えにすぐには追いつかなくて……」
2018/01/01 17:06
「北条麗羽。お前がどんな人生を歩もうがお前の勝手だ。だが、これだけは言っておく。自分の人生は社会の犠牲になるモノじゃない。自分の為にある事を忘れるな」
2018/01/01 17:07
「自分の為……」
2018/01/01 17:08
「安心しろ。俺たちは何も金持ち・権力者から金と権力を利用するだけではない。アストロン公式レース興行によって待遇の良い労働環境も作る」
2018/01/01 17:09
「そ。具体的には短時間高収入の仕事を増やすってこと。少子化対策にもなってイイんじゃなーい? なんちゃって(笑)」
2018/01/01 17:11
「そ、そうなんだ……(だったらこの人たち、悪い人って決めつけなくてもいいかも)」
2018/01/01 17:12
「んでぇ~、麗羽ちゃん。あたしらとレースやってみな~い?」
2018/01/01 17:18
「いきなり言われても……。考える時間が欲しいかな」
2018/01/01 17:19
「そっか……。ゴメンゴメン。んじゃー決心着いたら言って。連絡先、交換しよ」

 そう言って、桜華はスマホを取り出す。

2018/01/01 17:20
「うん、分かった」

 麗羽もスマホを出し、桜華と麗羽は連絡先を交換した。

2018/01/01 17:21
「じゃあね。バイバーイ」

 別方向へ行く麗羽に手を振って見送った。

2018/01/01 17:22
翌日朝。北条麗羽の家では麗羽の母が慌しくリクルートスーツを着て、家を出るのだった。
2018/01/15 00:46
「じゃあ母さん、仕事行って来るね。麗羽ちゃん、いい大学に行っていい会社に就く為に勉強頑張るのよ」
2018/01/01 19:36

 あたしがシャワーから出てきたところ、母はそう言い残して一目散に家を出て、会社へと駆けていきました。

「もぅ、毎度毎度しつこいなぁ~。我が子を思っての事なのだろうけどさ」

 あたしは溜息を吐いて、テレビを点け、朝のニュース番組出も見ようとしました。

 ところがなんと、ニュース番組内ではアストロンレースを扱っていたところだったのです。

2018/01/01 19:38

 勝獅の持つマシン、Kレーヴェンと馬慧のTバリスターダが疾走する映像。

 走行の途中で2台のマシンは巨大化した。

2018/01/01 19:42
アナウンサー「これぞ新時代! 玩具サイズからF1カーサイズにも大きさを変えられるトンデモマシン! それがアストロン! そのアストロンレースがいよいよ開幕となります!」
2018/01/01 20:45
 大々的な宣伝に麗羽は絶句した。

 最後に番組内で勝獅と馬慧が映り、「最速の星座は……俺だっ!」と互いの拳をぶつけ合って、今回のニュースは一旦〆られた。

2018/01/01 19:45
「うわぁ~。もうこれ、ビッグプロジェクトだよぉ~。トンデモない人たちと会っちゃったなぁ」……」
2018/01/01 19:47
 その後、あたしはいつも通り、学校へ行きました。

 淡々と面白くない授業を受けて、内申点稼ぎのために対して好きでもないテニス部活動をします。

 人間関係に荒波を立てないように空気を読んで友達ゴッコをします。聴き手に徹して、相手の機嫌取りをします。

 そんな生活にウンザリしながらも、慣れてしまっている自分に悲しくなりながら帰路を辿ります。


 ぼーっとしながら歩いていたら何時も通らない道へと出てしまいました。

 そこでなんと、あの時であった彼=光我勝獅くんの姿を目撃しました。

 彼は目前にある模型店へと入って行きました。

 訊きたいことがまだあるので、あたしも模型店に入ってみました。

2018/01/01 17:23
「む? こんなところでお前に遭おうとは」
2018/01/01 17:30
このお店に入るところ、見えたから……。ねぇ、まだ訊きたいことあがるんだけど、いいかな?」
2018/01/01 17:30
「構わん。言ってみろ」
2018/01/01 17:31
「アストロンが他人を操れるって事は分ったけど、これって制限とか特にないの?」
2018/01/01 17:32
「ない。一度に何人でもいつまでも望んだ分だけ可能だ。上書きも出来る。……ただ、アストロンの所有者同士は操ることは出来ない」
2018/01/01 17:33
「なるほど……。よく知っているね」
2018/01/01 17:34
「いや、逆に何でお前はそんなに知らないんだ? 光がアストロンに変えた時、説明書も同梱されていただろう?」
2018/01/01 17:35
「えっ? 嘘っ? そんなの知らない。部屋の隅に入り込んじゃったのかな……?」


2018/01/01 17:36
実は自分の部屋が汚いことを他人の前では言えない。

なので、咄嗟にそう言って誤魔化す麗羽なのであった。

2018/01/15 00:51
「話はそれだけか?」
2018/01/01 17:37
「ううん。まだ。今、光我くんたちは親と暮らしているの? それとも一人暮らし?」
2018/01/01 17:43
「俺も馬慧も桜華も一人暮らしだ。煩わしい親とは決別した。親を操るという手もあるが、イチイチ命令するのも面倒だ。だから、俺たちの事は放っておくようにしてある」
2018/01/01 17:44
「ま、まぁそうだよね。お金を手に入れて他人を操れるんだから自由な環境を手に入れるよね。アハハ……」
2018/01/01 17:46
「それで、これからどうするかは決めたのか?」
2018/01/01 17:47
「(首を振って)ううん。まだ……。アストロン……あたしにも使いこなせるのかな?」
2018/01/01 17:48
「そんなものはやってみなけらば分からんさ。確かめたいのなら、始める事だな」
2018/01/01 19:49
麗羽は黙り込んでしまう。

その理由を勝獅はなんとなく察した。当たっているかは不明だが。

2018/01/05 18:28
「胡散臭いと思うか? こんなご都合アイテム」
2018/01/05 18:34
「えっ? んーまぁ、正直……」

 あたしは頷いた。

2018/01/05 18:35
「無理もない。当然の反応だ。だから、俺たち3人は一応身体に悪影響がないか、CTスキャンなどをしてみた。結果、寿命や健康など、特に影響はなかった」
2018/01/05 18:36
「そうなんだ。そもそもこれ(=アストロン)、誰がくれたんだろう?」
2018/01/05 18:38
「説明書には神様だとあった。信じられない事だが、信じられないトンデモアイテムが存在している以上、うだうだ疑うより信じる方が得策かもしれんな」
2018/01/05 18:41
「(汗)いや、神様って……。でもなんでまたこんなものをあたしたちに?」
2018/01/05 18:43
「テコ入れらしい。苦境に立たされている若者に逆転する手を授けようという趣旨だそうな。神にしてみれば、金と権力を持つオッサン・爺さんが支配していようが、若者が苦しめられようがどうでもいいことらしいが、流石に今のままだと人類が絶滅しそうだからと……。まぁ、神と若者の利害一致はしているだろうさ」
2018/01/05 18:44
「なるほど。そうだったんだ。ところで、光我くんはどうしてここへ来たの?」
2018/01/01 19:51
「パーツを買いに来たのさ。アストロンに使うパーツをな」
2018/01/01 19:51
 勝獅はギアの入った袋=商品を手に取りレジへと向かった。

 その後、模型店の二階にある工作室&コース広場へと足を運んだ。麗羽も興味本位でついていく。

2018/01/01 19:52
「市販のパーツも使えるんだ」

 マシンセッティングする勝獅の様子をまじまじと見る麗羽。

2018/01/01 19:54
 勝獅は黙々と小台にマシンのシャーシを置き、マスキングテープで固定。マシンのスイッチを入れ、駆動させる。
2018/01/01 20:03
「あれ? 走らせないの? せっかくコースがあるのに」
2018/01/01 20:05
「これはブレークインといって、慣らし運転をしているんだ。こうすることで駆動系を馴染ませ、より早い走りが出来るんだ。コースに走らせないのはタイヤなどを無駄に摩耗させない為だ」
2018/01/01 20:05
「へぇ。なんか、色々本格的なんだね」
2018/01/01 20:07
「面倒に思ったか?」
2018/01/01 20:08
「でも、手間暇かけた分、速いマシンになって、勝てたら気分イイかも」
2018/01/01 20:08
「その爽快感は実体験してみれば分かるさ」
2018/01/01 20:09
「爽快感……」
2018/01/01 20:10
 そして約1週間後。遂にアストロンの公式レースが開催されることになった。
2018/01/01 20:10

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