【2/12】 ダンゲロスSS(109)スカーレットVS榎本レン

スカーレット

エピソードの総文字数=2,445文字

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他の人は書き込んではいけませんよ!

はっけよーい、のこったっ!のこったっ!
僕以外、誰もいない希望崎学園の土俵……。女子相撲は元々、相撲人口が少ない上、魔人になってまで続ける女子はごく少数だ。
それでも僕は一人、今日も稽古を続ける……。あっちゃんのため。今は天国にいるに違いない、あの子に届くために……。この直径4メートル55センチの土俵の上で。
土俵の上では常に孤独……。誰かそう言っていたっけ。今はもう本当にそうだ。取り組みの相手も、行事もいない一人の土俵。僕の姉妹弟子同然だった、あっちゃんも……。
はっけよーい、のこったっ!のこったっ!
ねえねえ。
うさぎさん? いつの間に……?
それ、面白いかい?
え……う、うん……?
ふーん、どこが? さっきから辛そうだけどなあ……。
そうだね。正直、今は辛い……かな。相撲は、相手がいなければ成り立たない競技だからね。僕みたいな体格の小さい子は特に。技を鍛えなければいけないんだけど、こうして一人で稽古を続けてても中々上達しないや。
じゃあ、練習する相手を見つければいいのに。
……いないんだ。もう……。(あれ? おかしいな、僕、なんでこのうさぎに素直に喋っているんだろう?)
いない? 本当に? 君が勝手にそう思ってるだけじゃなく?
……いないんだよ。僕が鈍感なせいで、ずっと空の上に行ってしまったんだ。相撲を続けているのかも、もう分からない。
じゃあ、そこにいる彼女は?
花火ー!
えっ……あっちゃん……?
(……ニヤリ)
うさぎの唇の端が小さく歪んだ気がしたけど、それを気にとめる間もなく、僕の意識はまた少し飛んだ。
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scarletfine2

足掛けで……てえいっ!
甘いっ……!
わわっ……!
決まり手……上手投げですね……。
うーん、やっぱりいくら小手先に技をかけても……あっちゃんとは体格が違うからなあ……。小揺るぎもしないや。
でも花火の技の引き出しの多さもどんどん増えてます。このままだと星を五分にされる日も遠くないかもですね。
そうかなあ……3勝12敗ぐらいで負け越してるのに。まだまだ横綱と平幕だよ……。自信なくす。
体格で全てが決まらないのが相撲の面白いところって、私に教えてくれたのは花火でしょう? まだまだ私を倒せる技は生み出せるはずですよ。
そうは言っても、あっちゃんに上手を取られちゃったら……そこからどんな技を出しても……、いや、そうさせない様、もっと立ち合いと技を磨けばいいのか!
その意気! 私もどんな技が来ても潰せるような右上手を極めますので!
よーし、もう一番! 頼むよ! あっちゃん!
君達ぃ……。
あ、あれっ……誰っ……!?
私はただの清掃員のおじさんだよ。それが更衣室に盗難が入ったみたいでねえ。
ええっ!?
ちょっと来てくれないかい?
酷い……僕の服がズダズダだ……。このスポーツウェア、お気に入りだったのに……。
ん、手紙……。「相撲やるなら、廻しだけあればいいだろ?バーカ!」酷い……。
そうだ……。いつだったか、あっちゃんが制服をなくして、ジャージだけで稽古場に現れたことがあった……。水で濡らしちゃったなんて言ってて……あっちゃんらしくないなあ、なんて僕は気にも止めなかったけど……。
あれは……。
キヒッ……キヒヒ匕匕……。
つ、冷たいっ……。
ほらほら、相撲取りなら、裸で水ぶっかけられるぐらい、耐えられるでしょ!
可愛がりよ!可愛がり!
ち、違うっ……!相撲はそんなんじゃない! 心技体を鍛えるっていうのは……!
何言ってんのさ! TVでもネットのニュースでも、強くなんにはこのぐらい必要だって言ってたわよ!
女のくせに相撲なんて! 力が強ければいいって、あんただって思ってんでしょーが! 野蛮人!
ううっ……誤解だよ! 例え一部の人がそう思っても、本当は違う! 僕が好きな相撲は……。
(花火が好きな、相撲は……)
あっ、あっちゃん……!?
そうか……あっちゃんは、こんな風に、どんな事を言われたって、今の僕のよう「違う、違う!」って言って耐えて……。なのに僕はそんなあっちゃんの頑張りに気づきもしないで……。
身体が傷ついていたのも……一人で稽古をしていたなんて言葉を鵜呑みにして……最低だ……。
そうだねえ。最低だねえ!
君は……うさぎさんは……誰なの?
僕は土俵の下に眠る夢の精霊、とても言っておこうか。君が親友を思って踏み続けた四股の音に応えてやってきたんだよ。
夢……そうか……あっちゃんが死んでから、ずっと稽古、稽古に夢中になってて、それでとうとう疲れ果てて本当の夢の中、か。
君の後悔の声は土俵の下の僕に響き渡った! ゆえに君の願いを一つ叶えてあげよう……。君の魂と引き換えにね。
魂……。
そう、その代わりに何でも願いは叶う。例えば……親友と土俵の上で再会する事もね!
本当に!? あっちゃんとまた会える!?
ああ……会えるよ。(あの世で、な)
ほおら、そこにいるよ……。
花火……。
あっちゃん……!
さて、いいかい……? 魂を……。
うん、でももう一つだけお願い……。
あっちゃんと、相撲を取らせて!
そんな事か……。いいよ……。(最後の最後まで暴力、か。まったく生きている事に充足していた奴らは……)
やるよ!あっちゃん!

ええ、花火!


では行事は私がつとめよう……!(俺はそんな楽しみもなかったんだ。死出の相撲、せいぜい楽しみな)

はっけよーい! のこったあ!
まずつっかけ、かち上げで……何とか組み合う前にあっちゃんのまわしを……。
こらえられたっ……!やっぱり、うまいな……あっちゃんは……。
のこった……のこおったっ……。(ケケ……最後にたっぷり、組み合わせてやるよ)
やっぱり……違う。

あ?


あっちゃんに左廻しを取られたら、一瞬で上手投げが決まってた

これはただの夢! 土俵から消えろ!妖精!

どっせえーーーい!!


強烈な右仕立て投げ!豪快な炎を共に、あっちゃんが土俵の妖精に突っ込む!

灼熱の炎が土俵を包む、全ての過去とともに……。

そこまでです!!
決まりて、下手投げ。

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