超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

【三日目】二千年前の土木作業員のおっさんが言った。「人は過ちを繰り返す」

エピソードの総文字数=2,260文字

 退学から三日目――

 俺は朝から出かける準備をしていた。

 昨日、波虚(はうろ)から送られてきた資料を参考にして、学校見学に行くことにしたのだ。高校受験の時にはチェックしてなかった所まで回っておこうと思ってる。


 今日から俺の新しい人生が始まるのだ。

 気分を新たに歩んで行こうと決心していた――までは良かったのだが。

「やっべえ、寝坊したぜ。遅刻しちまう!

 飯食ってる時間はねえし、こうなりゃ最終手段――」

 冷蔵庫からコッペパンを取り出して、口に咥え、急いで靴を履いて、玄関から飛び出した――。

 

 人は過ちを繰り返す、って奴だ。

 そうは分かっていても、世の中こうしない事には、どーにもならんのだ。


 そしたらだ。

 誰か居たんだ。ドアのちょっと前に。で俺は飛び出した勢いが余って――。


        ――ごちーん!



 玄関前で大激突しちまったんだ。

「いっ……痛……」
「いたた……」
「って、うお!」
「な、なんだ、コッペ。大声を出したりして」
 どうしたも、こうしたも、目の前に尻餅ついた召愛が居てだな……。

 しかも、あれだ、こう羽里学園の制服のミニスカートが、めくれてしまっていてですね。パンがチラッというか、はいパンチラって奴でした、はい。


 ちなみに、水色の縞々パンツでした、はい。ニーハイも穿いてました。


 んで、気づけばガン見してたらしくてですね。

「ふあっ!」
 と、召愛さんってば、俺の視線に気づいてしまったらしく、慌てて立ち上がってですね。
「き、君は変態かー!」

 と、召愛さんが拳を振り上げたかと思えば――


       ――ごちーん!

 

            食らったぜ。ゲンコツ。

「いってええ!

 おい、俺の顔見てみろ、絆創膏だらけだろうが。

 もっと優しくしやがれ!」

「今のは君は悪い」
「つーかな、縁切れって言っといたはずだぞ。

 お前と俺が会うってのが、どういうことか、わかってんだろ。

 学校がピンチになるんだよ。せっかく救った学校がな!」

「うん。今はその心配はしないでくれ」
「ああ……?」
「君は、どこへ出かけようとしてたんだ?」
「学校見学だ。どっかに編入したいと思っててな」
「ふむ、ならば、私と一緒に行かないか?」
「ど、どーいうこった……?」
「単純に君の力になりたいと思っただけだ」
「そ、そりゃ、見学に付き合ってくれんなら、歓迎はするが……。

 本当に大丈夫なのか?」

「だから、そういった心配は、しなくてもいい」
「あ、ああ、なら、信用しておくぞ。さっさと行こうぜ」
「うん。交通手段は借りてきてある」
「え?」
 と、俺が言う間にもだな。

 召愛はどっかに電話をかけて――

「迎えをお願いします」
 すると、だった。


 朝の閑静な住宅街に、突如、ヘリの爆音が響き渡ってだな。

 生活道路を歩いてる通勤通学の人たちが、何事かと空を見上げるわけだ。

 道路の上空に現れたのは大型ヘリコプター。それが巻き起こす強い風が、召愛の髪をバタバタなびかせ始めたぜ。


「VH-71、ケストレル!」

 俺は思わず叫んでた。


 アメリカ大統領専用機として開発されていた物だったが、予算削減によって完成間近で開発中止になった悲運の機体だ。

 それがなんで、こんなところに?


「彩から借りてきた」

 まるで『チャリを借りてきた』みたいに、のたまったのだが……。


 まさかの羽里が買い取っていたのか……。

 塗装がアメリカ所属時のままなのを見るに、ほんとに購入したばかりなのだろう。


 なんて言ってる間に、ヘリのキャビンの扉が開いて、クルー二名が、ラペリングロープで、俺の家の前に降りてきた。んで、俺と召愛をベルトでロープに固定してヘリに引き上げてだな。

 出発進行。ヘリはどこかへ向けて飛び出した。


「すげえ、VH-71に乗れるなんて!」


              ――ハァハァ

 と、俺は鼻血を吹きそうになるほど興奮して、機体の中をなめ回すように眺めながら、あちこちに頬ずりしていたら。

「上空に着いた」

 早えな。着いた? どこにだ?

 我を忘れてハァハァしてしまってたが、俺は見学の行き先を告げてなかったはずで。どこにも到着などするわけないのだが。


 窓から、外を見たよ。

 眼下には、学校らしい大きな敷地の建物が見えた。

 つーか、なんかすごく見覚えのある校舎だ。


 というかだな。敷地の隅っこに――あるじゃないか。

 全長263メートル。全幅38.9メートル。基準排水量6万4千トンの大戦艦――

 大和が! 実物大セットが!


 ああ、大和。なんて麗しい姿なんだ。と、俺は思わず涙ぐんでしまったんだが、理解した。ここが羽里学園の上空であるとだ。


「待て、召愛、なんでこんなとこに来た?」
「コッペは、学校を探しているんだろう?

 だから見学に連れてきた。君にとって、理想の場所だと思う」

「おいおい、からかうのは止してくれ。俺だって、俺だってな……。

 退学になったのはマジできつかったんだぜ?


 やっと今日から、新しい学校を探そうって、やる気出してたとこだ。それをな、こういうネタにするのは、お前相手だって……怒るぞ?」

「いいから、校庭を見てみるんだ」

 ヘリが校庭を見やすい位置まで旋回しようとしている。

 そして、俺は目の当たりにした。


 校庭には――大量の机が、なぜか並べられていた。

 何かしらの規則性で、並んでいるようだった。


 そして、ヘリが学園の南側まで来た時だ。

 机の並びがカタカナを形作っている事に気づいた。こう、書いてあった。








  『オカエリナサイ。コッペ』


「なあ――召愛、これは……?」

「新しい、羽里学園だ」

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