三題噺のお部屋

偽教授

エピソードの総文字数=490文字

私は銀杏(ぎんなん)を炒る。フライパンの上で、軽く、焦げないように。集めてくるのは大変だった。売ってるものを買えばいいんだけど、だって、そういうところに真心を込めたかったから。だから、近所のお寺の境内で拾い集めてきた。イチョウには雌雄があって両方が揃わないと実を付けないから銀杏スポットというのは貴重で、地元の人間でもなければ知らない。でも幸い、ここは故郷だ。あいつにとっても。

銀杏は咳止めに効くんだって。古くからその薬効をよく知られている。最近実家の近くで一人暮らしを始めた幼馴染が風邪で寝込んだっていうから、私は銀杏を炒め、それから消化にいい茶碗蒸しも作った。

そして、彼の家のチャイムを鳴らす。

2018/01/21 23:25

tantankyukyu

はーい?
2018/01/21 23:33

出たのは、女だった。実は姉とか、若いお母さんだとか、そんなオチはない。幼馴染だもの。あいつの周りの人間関係くらいだいたい把握している。つまり、これはそういうことだった。

私は何も言わずに踵を返し、自転車に飛び乗って走り出した。自宅に戻るわけではない。行くあてもなく、私は自転車を漕いだ。両目から、涙が溢れて止まらなかった。秋風が目に染みるからでは、なかった。健太。

2018/01/21 23:37

tantankyukyu

執筆:偽教授
2018/01/21 23:38

tantankyukyu

  • ツイート
  • ツイート
  • シェア
  • LINEで送る

ページトップへ