超新約ライトノベル聖書『新約聖書を学園コメディに置き換えたらこうなった』

受難 ④

エピソードの総文字数=2,797文字

 鍵とボタンを捜査班へ届けたあと、鑑識の結果が出るまで、俺は羽里と共に理事長室で待機することになった。


 その間にも、学校が潰されるまでのタイムリミットである午後3時が、

 刻一刻と迫っていた。

「なあ、これで、大丈夫……なんだよな?

 遊田が見つけてくれた鍵とボタンで、真犯人が特定できて、

 召愛も遊田も無実が証明されて……学校が救われる。そうだよな?」

「…………………


 そう、願っています。他にはもう、打つべき手がありません」

             そして、午後2時16分。








             捜査班の班長がやって来た。


「お待たせしました。鍵とボタンでの捜査結果の報告です」
「ご苦労でした!」
「まず、鍵ですが、コッペ君と遊田さん以外の指紋その他の痕跡物は、検出されませんでした。灰皿などからも、当事者以外の指紋が出ていないことを考えれば、当然でしょうな。

 犯行に使った道具に痕跡を残すはずがない」

「では、ボタンは?」
「そちらには、合計三名の痕跡物が確認できました。

 これを拾った遊田さんと、受け取ったコッペ君以外の第三者。ボタンの持ち主と見られる者です。


 このボタンの持ち主が真犯人だったと仮定して、〝落とす予定のなかった物〟ですから、当然、痕跡も残っているわけですな。

 そして、三人目とは、この生徒です――

 と、班長は名簿と写真を机の上に置いた。









「こいつは……【議員】のリーダーじゃねえか!」
「彼とその仲間――【議員】と呼ばれている者たちへ、ボタンをネタに揺さぶりを掛けてみました。結果、スマートフォンなどの任意の閲覧を認めさせました。全員、応じました」
「犯人を特定できる証拠は……でましたか?」
「一人のスマートフォンからドローン操作用アプリと、編集済みの喫煙動画を、USBメモリへ、コピーしたログを発見。ばらまかれていたUSBメモリの個数と同じ回数、コピーされてました」
「すげえじゃんか、これで犯人は決まりだな!」
「いえ……ドローン撮影者だからといって、

タバコや写真を置いた犯人』と同一人物である事にはなりません。

 限りなく黒に近い灰色であるのは、間違いないのですが……。

 そこを繋ぐ線がなければ、【議員】たちが真犯人であるとは断定できず、名座玲さんの無実も証明できません」

「でも、勝手に撮影して、その映像をばらまいたりしたら、校則違反にならないのか?」
「撮られた本人が訴えれば、そうなりますが……」
「あれか――召愛本人が、

『見られて困る所を撮られたわけでもない。ばらまかれても、まったく問題ない』とか言ってんだな?」

「良くお分かりで……。

 さらに言えば、もし訴えたとしても、盗撮違反での罰を与えられますが、さっきも言ったように、今事件の真犯人であるという部分までは立証できませんから、召愛さんの無実を証明はできません」

「では、他になにか、手がかりは、出なかったのですか?」
「…………」
「ありません……」
「で、では……午後3時までの、残り30分余りで、

 なにか、あなた方が打てる手は?」

「あの……理事長?

 残りの30分余りとは……いったい?」

「す、すみません。まだこの事は、他の者には知らせないでください。

 説明をします――

 羽里は、母親との契約を班長へ、洗いざらい説明した。
「――そういうことでしたか。

 しかし、30分余りとなりますと、もはや、捜査の方法論としては万策が尽きたと言うほかには……」

「……!」
「……………」
「わかり……ました。あとは、休んでいてください。

 あなた方の再就職先については、お母様に良く口添えしておきます」

「まだだ。諦めるなよ、羽里!

〝おまえのかんがえた、さいきょうのがっこう〟が目の前まで来てるんだぞ」

「でも、もはや……!」

「その最強の学校とやらはな。

〝おれがかよいたい、さいきょうのがっこう〟でもある。


 年に三回も文化祭と旅行イベントがあって、授業は少なく、学費がただ同然、設備は最新。


 図書館は個室やドリンクバーまであり、学食では三つ星レストランから引き抜かれたシェフが作るランチを400円で食える。

 大講堂には4D仕様のIMAXシステムがあって、学校所有の三万本の映画が見放題。


 しかも、ネックだったアホすぎる校則が、明日からは是正されることになる。そして、なにより、お前や、召愛や、遊田や、一緒にアホアホ映画を作った仲間たちがいる!


 そんな学校が――潰されてたまるか。

【議員】の連中を今すぐ、ここに呼び出してくれ!」

「しかし、今さら、なにを!」
「いいから、早くだ。時間がない!」
 そして、【議員】たちが理事長室へと呼び出された。
「――」
「――」
「――」
「理事長、失礼だが、ここに呼び出された意味がわからない」
「お前らに、教えておくぞ。

 この学校はな。30分後に、なくなっちまう!」

「はあ? 何をとち狂ったことを。

 理事長も何か言ってやってください」

「事実です」
「――!?」
「午後3時までに、召愛を退学にするか、真犯人を明らかにしなければ、羽里学園を解散させる。羽里家当主が、学校設立時の契約を基として決定を下しました」

「が、学校が……なくなる……?

 じょ、冗談ですよね?」

有言実行。契約遵守。羽里家の当主に強く求められる資質です。

 お母様ならば、必ずこれをやる」

「な、なんだよ、それ……」
「まって……ちょっと待ってよ!」
「召愛を退学にできるほどの証拠も、真犯人を特定できる証拠もない状況だ。わかるか、真犯人が自ら名乗りでてくれるしか、状況を打開できないって事だ。


 その上で、お前らに、言うぞ。

 このまま、学校をなくしちまって、本当にいいのか?


 お前らだって、羽里学園が好きだから、一生懸命に、選挙をがんばってたんだろうが?」

バカか、お前は。ふはっ、ふはは!」

「何が笑えるってんだ!」

「もし我々が犯人だったとしてよう。で、名乗り出れば退学になる。

 ならば、学校がなくなったって同じことじゃないか。


 しかも、ご丁寧に犯人が特定できないことをバラしている。

 だったら、犯人になってしまうよりは、このまま黙って居た方がいい。どうせ、破滅なら、みんな一緒にしてやるさ」 

「お前、どこまで――!」
 思わず拳を握りしめ、殴りかかりそうになり――
「それはやめておくんだ」
 班長に羽交い締めにされてしまった。
「おい。他の奴らも、どうにか言ってみろ。

 本当に、それでいいのか? これが、お前たちの言ってた正義か?

 違うだろ。頼む、お願いだ。この学校を、この学校を――!」

「…………」
「……………」
「……………」
「どうやら、皆、同意見のようだ。

 まあ、我々は犯人ではないのだが――こうなってしまっては仕方がないだろうな。

 ハハハ、ハハハハハハハ!」

「……」
「……」
「では、これから、全校集会を行います。

 ………………。

 羽里学園の解散を、皆に知らせねばなりません」

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