勇者の武器屋

第二七話 経営会議と勇者の努力

エピソードの総文字数=2,251文字

おいおい、すげえな……。勇者が開催する講座数が1日2つで月60講座……この予定表が全部、受講者でびっしり埋まってしまってるじゃねーか。これだけ武器講座が人気なのはどうしてだ?

私もびっくりです……。

まずは冷静に売上・利益を計算してみよう。

月60講座のうち、3講座が1つのコースにまとまってるわけだ。とすると、20回分の新規顧客が獲得できる。

うんうん。

生徒一人が3講座1コースを受講するためには、5000Gかかる。1コースあたり、生徒は15人まで。とすれば『20コース×生徒15人×受講料5000G』で計算すると……1ヶ月あたり150万Gの売上ということだ。年間売上は1800万G。

おおお!

これ本当にすごいじゃないか。だってこの150万Gって、ほとんど粗利だろ? 武器や防具を売るみたいに、仕入原価が掛からないわけで。

そうだ。経費として掛かるものがほとんどない。開催会場は講堂である必要はない。武器を振るうわけだから、その辺の野原とかでいいとすれば、会場費はゼロ。ほとんど丸儲けということになる。

まぁその分、勇者が1日の休息すらなしで稼働し続けるわけだが。

とんだブラック組織だな。

まぁ従業員としてブラック組織で雑巾のように扱き使われる状況と、経営者として儲けを手にしながら自分がブラック環境になっていくのとじゃ、天地ほどの違いがあるわけだろうが。

私のことならぜんぜん大丈夫ですよ!

1日だって休むつもりはありません。他ならぬ『ドリームアームズ』のためならば、何だってやるんです。

だが休みなしだといっても、負担はそれほどではないかもしれんぞ。1日2講座だから、勇者の稼働時間は合計4時間。移動時間や開催前後を想定しても、この近くで講義を開くなら4時間30分も見ておけばいいだろう。ということは、あと10時間は他の仕事ができるということだ。こいつはかなり悪くない事業になってくれる。

講義時間以外は、武器屋の店頭で売り子さんをやったり、他の新規事業に挑戦してみたいと思います!

それに、講義で教えた生徒さんが、きっと武器や防具を新調してくれるでしょうから、他の売上にも絶対に繋がるはずだって思うんです。

たしかにそうだ。アタシらが金をもらいながら、次々と『ドリームアームズ』のお得意さんを作っていくようなもの……。数字以上の価値が見込める事業だな。

それに、ショートソードやクリス関連の講座ばかりで埋まってしまいましたけど、本当はもっと色んな講座をやってみたいんです。優秀な生徒さんが増えてくれば、ちょっと扱いが難しくて、でも使いこなせばすごく強いカタナとかソードブレイカーとかショーテルとかがベースになってる武器にも手を出してみたいなぁって。

まだまだ講義のネタは尽きないということだな。なんなら、いずれ私も魔法講座をやっていったっていいわけで。

ゆくゆくは、魔力優勢な人にはパルチザンやティソナデルシド、力優勢な人にはツヴァイヘンダーやクレイモアや野太刀とかどうでしょう。

盾の扱いとか、武器防具と組み合わせた特殊魔法の発動とかも次々やっていきたいですね。
ああっ、それにそれに……!

そう慌てるなって。夢を広げていくのは、魔境銀行への返済を確定させてからだ。

いいじゃないか。勇者のモチベーションがこれだけ高まってるのは、経営にとっても無駄じゃない。結局、ビジネスに取り組むのは人間だろ?

これからの社会生活では、せっかく培ってきた戦闘技術が無駄だったんじゃないかって落ち込んでいたこともありました。自分はまったく無駄な人間だったんじゃないかって……。

でも、まさかこんな風に自分の戦闘技術が活かせる道があるなんて信じられません。おバカでどうしようもない自分なのに、コツコツやってきたことが無駄じゃなかったんだって思うと、もうなんて言っていいか……。

それもこれも、勇者は戦闘技術を極限まで高めていたということに尽きると思うぞ。その辺のヤツが講座を開いたところで、どうせ生徒なんて集まるわけもないんだしな。

勇者の存在はまさに、人間が為し遂げられる戦闘技術の粋だろう。魔王すら圧倒するその力量、もっと誇っていいんだぜ。

はいっ、ありがとうございます!

正直こんなに上手く武器講座事業が起ち上がると思っていなかったが、実は資金繰り面でもかなり有用な事業だ。個人相手の商売だから、受講申込時に金を払わせちまうことができる。とすれば、もう資金繰りなんて考えなくてもいいくらいの現金を確保できるということだ。

なるほどです。たしかに言われてみれば、最初にお金をもらいますからね。しかも仕入代金の支払いとかもないわけですから、その現金はそのまま手元に残ります。

ほお~。じゃあ、ちょっと前までアタシらは資金繰りの心配もしていたが、そっちはもう大丈夫そうだっていうことか。

よほど御用商人での販売や、他の法人向け販売が大きくならない限りは、これで十分に乗り切れるだろう。

武器講座がヒットしたのは偶然だったかもしれません。ここまで繁盛するなんて私も予想外でしたし。

それは違う。これほど成功しているのは、ひとえに勇者が宣伝活動を妥協しないで取り組んだからだろう。なぜなら――

………………ん?

急に私を向くのはどうしてよ。何よ、何なのよ……。

ニヤニヤ。

もともと講座事業は勇者と僧侶が取り組んでいたものだろ。だから僧侶のほうも、戦闘術講座を開く計画を立てて、宣伝していたはずだ。なのに僧侶のほうは予定表が真っ白ということが、なにより勇者の努力を示している。

…………。

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