ソラミミ×DIAMOND

わたしの家に 小象が来たこと(3)

エピソードの総文字数=1,179文字

 わたしが草里と一緒のクラスになったのは、この十六の年からだ。十二から十五までわたしは、同じ手わざ系の子ばかりを集めた少人数の学級にいた。わたしは何も知らなかったから、草里に気兼ねもなく打ち解けたけど、草里はそれまで一緒だった戦系の子らからは、ちょっと近寄り難い存在だったらしい。あまりに腕が立つからとか、怒らせると恐いとか、ちらっと聞いたことはある。まあ、草里はちょっと変わった子だしだいぶ無茶な子と思ってはいたけれど。

ち、無理か……

廻れ右とかお手とかを繰り返していた草里。

ねえ、この子あんたの言うことなら聞く?


 小象がわたしを見つめている。ええと、廻れ、右? なんて。小象がくるっと右に廻る。言うこと、聞いてる……

みたい。廻りすぎたけど


おお、すごい、すごい


 またはしゃぐ草里。

ねえ……草里。パレード潰しって、本当に本気? なんでわたしたちだけで。それになんでわたしたちが?

あのさあ

 草里はまた真剣な面持ちに。多少の苛立ちも見える。

学園は、パレードをほったらかしなんだよ? パレードに、どれだけの空や雲の集落が消されていると思っているの。確かに、そこに住んでいるのは人でない人でなしばかりよ。けど、わたしには人でなしにも小さな友達はいたんだ

 草里の表情が今度は少しだけ、曇った。

そいつも、パレードに食われてしまったよ。もう、ずっとずっと前のことだけど

草里……

 草里ってときどき、とても悲しくて、独りなんだこの子は、って思うことがある。

そいつらだって、人に頼むすべを知っていれば、助けてあげられたかもしれない。だけどそういうすべすら持たないやつらだっているんだ。声すら上げれないやつらだって。今のわたしたちは非力だけど、いつかは……

まあその第一歩がこの子

 草里は小象をまたぽんと叩いて、この子は運命の子。と真面目に呟く

わかった

 わたしも、パレードは好きじゃない。うるさいし……華やかだし。あんな馬鹿馬鹿しいのがこの世界にのさばっているのは、好きじゃない。

けど危なくなるようなら、すぐ帰る。草里もだよ

まあ、とりあえず、手慣らしよ。この子の力を見てみたいの。でかいのは相手にしない

あ、草里。もう帰るの?

 草里は小象のおしりの方へぴょんと飛んで、玄関のドアノブに手を伸ばす。

準備する。明日ね。部下を二人程連れていくわ。小さめのパレードを狙うのだから、それだけいれば十分

 部下……?

 草里はちょっと番長的なところがある、とも耳にしてはいたけど(番長じゃなく委員長なのは本当だけど)、彼女のそういう面についてはこれまであえてあまり知らずにいた。見た目は背の低い、番長なんて威厳には程遠い普通の女の子なのに。

 明日も学園は休みで、押入れの掃除をしようと思っていたのだけど。今日しておこう。

あ、この子は……

 草里はもう行ってしまった。結局、押入れが小象の仮住まいになった。

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