いかに主は導きたまうか。

1. Dive in 技術屋の群れへ。

エピソードの総文字数=2,641文字

  大阪の梅田にある阪急ナビオは巨大な船の形のビルで男性向けのブランドショップが多く入っている。ハイクラスのテナントばかりだ。最上階にある映画館か、その下にある[壁の穴]へ行く以外でボクがこのビルを訪れることはまずない。昔このナビオの中階には、かなり広いオープンスペースの喫茶店があった。天井は高く、たくさん置かれた丸テーブルの辺りで、照光は落ちついたものになる。くつろぎの空間としては最高の場所だったと思う。カーペットは厚く、エリアを仕切る低い柵は豪華な作りだった。一寸したロビーだったが、平日の昼間などは人の入りも少なく、またテーブル間の距離も広くとられていたので、少し浮いた感のある不思議な空間でもあった。そこは、どれだけ長くテーブルに居座っても誰もなにも言ってくることはなかった。まったくの無関心だったと思う。その分コーヒー一杯の値段は大したものではあったのだけれど。

  ここで、ボクは長く時間を潰していた日があった。初めての利用だった。やることがなかったのだ。転職の節目には、いつもボッカリ手すきの時間が現れてくる。[理晃]を辞めることになって、父に、会社に入れて欲しいと申出た。一瞬考える様子があったが、「分かった」との父の答えだった。入社日は約二週間程先にするとのことだった。「取りあえず、充電しとけ」と父はボクに伝えていた。目線の先にある、紫のベネチアンガラスの小振りな照明を漫然とただ見詰める。目を開けたまま、すべての思考、連想の流れが”凪”になるように意志を働かせる。ものの4秒ほどが限界か...。*続いて常日頃おこなうおかしな努力について長々と描かれるのだが、欄外へ移動する。

  ......やがて、飽きがきたので、これまでの二社で思ったこと、感じたことを思い出していた。自分としては、商売という金儲け自体は意外と好きだ肌に合うなと思う。なかなかに自分は欲深い。「いっそ、これに走ってしまおうか」との思いに取り憑かれた日がかってあった。同時に自分の価値観をこれ一色にはできないと葛藤があった。滋賀への往復の車中、一日中、苦しい思いをずっとしていた。最終、夕刻の京都へ戻りの時、「やはり自分は、これまでの自分を捨てられない」との選択をしていた。そのタイミングで車内に、雲間から現れた陽光が強く差し込んできて自分を照らし続ける。「よかった」と安堵する。どうも試練が備えられた日だったようだ。
  また自分が他の人に与える影響というものを考えていた。男女問わず、年齢問わず、ボクに関わる人は「こいつだけには負けたくない」との思いを全員強く持ってしまうようだ。...強く意識させてしまうなにかがボクにはある。エゴの特異な状態、これ故のボクからの”放射”も、間違いなく影響しているのだと推測している。ボクは感覚でものを捉える。言葉がなくても相手の本心がどうであるかがよく分かってしまう。上辺には、なんら意味がない....。結果、その人の[最悪]と[最善]は、ボクによって認識されてしまう。ボクと関係する人は、「すべて”露”になる」...。
  また、自分の弱点として嫌になる程、思い知ったことは、組織内の権力闘争において自分は無力であることであった....。


  会社は、御堂筋の江坂駅から歩いて15分程の所にあった。名は、[AAA]としておこう...。ケミカルの会社で、ここは本社になる。ここでの社員の殆どは理工学部出身の技術者であった。他には営業、経理、総務もいた。人数としては約五十人。この時の平均年齢は三十中頃だったと思う。みんな若い。四階建ての自社ビルになる。先ずは簡単な歓迎会になる昼食会が近所でもたれた。そして各部を研修の内容でまわった。どれも上辺ばかりのものばかりではあった。

  ある程度の期間が過ぎてから、ボクは父にこう言った。ボクがこの会社を継いだら、「この会社が空中分解するのは必至だよ」と。同時に、「新規開拓をやらせて欲しい」と伝えた。ボクをどう扱うかで、悩んでいた父は、これを了承する。

補記:

  化学系の技術屋の集まりである性なのか、もしくは父母の会社であることが原因なのかは分からないが、ある傾向が色濃くこの会社にあることを感じた。端的には、「プライドの高さ」「盲目的な権威への忠誠心」「ビッグネームへの憧れ」「真面目さを免罪符にする」「コスト意識のなさ」「女性的な...」等だ。*同時にエネルギーの高さを驚いて感じていた。言っては失礼なのだろうが「幼く」思えてしかたがなかった。一人でやるしかないなと思った。見せてくれよう”我が奥義”の思いだった....。

  



欄外:

  あの煩わしい圧力に触れてみる。これに触れること、働きかけることは可能は可能なのだ。こうすると両肺下か臍下奥へのめり込み、前頭葉から顳かみ奥への押さえつけが急に一段と強くなる。向こうは警戒をするのだろう。エゴは分厚い圧力の感触として、こちらは自在な無感触としてハッキリ別れていることが分かる。*自己サイドが幽霊みたいに無感触であるのは不思議なことだ。見える訳がないのだが、エゴには嫌らしい悪意ある表情を窺(うかが)うこともできる。

  これに対しては、いろいろと試してきている。相手の反応が、顕現が強まることは、逆にこちらが正しい作業(?)をしているのではないかと推察している。いくつか挙げてみよう。

  ・考えることを止めて、向こうにじっと触れて観察をする。
  ・左脳内のみで右回転を行う。(円になるようにグルグル回す)。
  ・前に落ちて、腹奥から体の真ん中を昇り両眼奥で自己を再結像する。
                  *どれも向こうの圧力は強力に高まる。

  バランスをとることも有効と仮定して、向こうの圧力の分布を気持ち平均に整えてみたり、自己の結像を出来るだけ体の真ん中になるようにしてみる...。これも相手の圧力があったればこそできることだ。あとは、感情の放射を向こうに向けておこなう。*感動したりすると起る放射のこと。これは、こちらの気持ちが前向きで、ある程度健全でなければできない。OMの詠唱も放射が大きく起るので採用している。

  こういうことをしたからと言って、特段何かが変わる訳ではない。ただ地道に、執念深く続けていけば、少しでも何かの改善に繋がっていくのではないかと思ってやっている。
  

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