黄昏のクレイドリア

13-5

エピソードの総文字数=1,164文字

(暗殺者に襲撃されるかも、か)
(対人戦、ましてや暗殺者なら
 1対1が基本な上に独擅場。
 そこを狙わないわけが――――)
!!
思考をしている矢先に、
一筋の線が速度をもって
カノンへ閃く。
すかさず白の衣を顕して
雨粒と共にそれを弾くと、
大きくため息をついた。
……まぁ、
あるわけないのよね。
はー、まじかよ、
この雨でもそんなに風の恩恵を
受けられるわけ、そのベール?
反則にも程があるってゆう
どういうわけか、カノンが
赴かずとも自ら姿を現した男に、
意図を図りかねながらも
カノンは口を開いた。
前情報があったなら、
あたしに手をだすべき
じゃなかったわね。
いやいや、情報があったからこそ
知りたかったんだよ。

普通ウソだと思うだろぉ?
どんな方向からの
遠隔攻撃も弾く衣をまとい、
戦場を駆け抜けた女剣士の標的なんてなぁ。
ふーん、次の襲撃の為の
情報収集ってわけ?熱心じゃない。

それならもう用が済んだでしょ、
こっちも誰かさんのせいで忙しいし、
さっさと森から出てったら。
おいおい、そう邪険にするなって。
たまたまイーリアスを
見かけて尾けてたら
噂のお人よしの女傭兵もいたんだ。
面白い話ができるってもんだろぉ?
変な奴……
……って、ちょっと待って
随分悠長に話してくると
思ったけど、あんた、
ここが"惑いの森"って
わかってないの?
惑いの森?
この森はただの森じゃない。
方向感覚が狂わされるとか
そんなちゃちな話じゃないわ。

在った筈のものが別の場所に
移り変わることを森の中で繰り返す。
表情が定まることの無い森なのよ。
…………。
(そんな中でも寂静の遺跡だけは、
 同じ場所に在り続けるから
 そう名付けられた理由の一つなんだけど……
 今はそんな話はどうでもいいわね。)
……もしかして、何も知らずに
あたし達を尾けてこの森に入ったの?
それとも、ただの眉唾話として軽く見てた?
どっちにしろ……悪いことは言わない、
さっさと森から出ることね。
せっかくあたし達を仕留めたとしても、
森で迷って死んじゃったら
意味が無いでしょう。
は~ん?
そんな嘘くさい話を信じろってぇ?
仮にその話が本当だとして、おたくが
オレをハメてないという根拠は?
知らないわよ、そんなこと。
あんたの情報に聞いてみれば?

お人好しの女傭兵は、
命を狙う暗殺者にも
その悪癖が働くかどうかをね。
……ふーん。
はいはい、わかったわかった!
オレが悪かった!
今回は素直に退くことにしますよ。
(どーだか)
とはいえ、おたく達を
諦めたわけじゃない。
また嫌でも会うだろうさ。

てなわけで、見逃してもらうついでに
良いことをひとつ教えてやるよ。
オレの名前だ。

そうだなぁ……
”ヒドゥン”なんてどうよ。
……どうせそれも
嘘なんでしょ
呼び方が
何もないよりはマシだろ?
それじゃあな。
ヒドゥンと名乗った殺し屋は、
人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべたまま、
手をかざして走り去っていった。

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