いつかのLip service

10:失恋とは言えない胸の痛み

エピソードの総文字数=1,596文字

一週間後、愚かにも俺は失恋、というものを経験した。

面と向かって告白したわけではないが、反応をみれば明らかだ。話すとき顔を赤くして、耳まで赤くて、仕草がかわいい。

好きな人と話す時、女の子はかわいくなるのだな。

その様子を偶然見てしまった俺は、いたたまれない気持ちとなった。


……見つかる前に帰ろう

お兄ちゃんは~~
お……お兄ちゃん!?!?
え……
はっ!!

しまった、つい聞き捨てならない単語が聞こえてしまったせいで素で驚いてしまった。

おかげで気づかれてしまった。くそ、もう逃げられん。

俺は、2人にじっと見つめられつつ、重い足取りでそちらへと向かっていった。

びっくりしたー。そんな大きい声でるんだね。
うるさい、そんなことはどうでもいい。おい、この子はお前の妹なのか?
え? 違うよ
は? 違うって、でも確かにその子は今お兄ちゃんって言ったぞ
あ、それはうさぎがお兄ちゃんって呼びたいから勝手にそう呼んでるだけなの
そうそう、勝手に呼んでくるんだよね
……め、迷惑なの?
正直迷惑。ちゃんと妹いるし、勝手に他に妹作っちゃうと妹に悪いでしょ?
うっ……そんな……で、でもお兄ちゃんはあの時からうさぎのお兄ちゃんなんだもーーーーーーんっっ!!
え、あの時……って、いつ?
お、思い出すまでストーカーするもんっ!!!!!!!!うわーーーーーーんっっ!!!!
と言って、ぱたぱたと女の子は涙目になって走り去って行った。

残った俺たちは顔を見合わせた。

……泣かせた
なんの非もないんですけど!?
あの子と面識はないのか? お兄ちゃん
うわーー、その言い方鳥肌が立った! やめてくれ!
ふっ、本気で気持ち悪がるお前を見るのは愉快だ。どれ、……お兄ちゃん
ひっ、ひえええええええええっ!!!
耳を抑えてぶんぶんと頭を横に振るみずき。本気で嫌がっている。

弱点を知って、優位に立ったみたいで悪くない。

で、彼女と何を話していたんだ?
お、興味あるの?
……別に。
うそつき。その顔は興味ありありって顔じゃん。
お前は俺を深く追求したいって顔をしてる。
にゃははー、よくわかったねー。うさぎちゃんにとっても興味示してたからねえ~……そりゃ気になるっていうか……ん?
どうした?
うさぎちゃんっていう響きに違和感があって……高校の時、ある男の子に言った気がする
男の子にうさぎちゃんってどんな神経してるんだお前は……変態だな
んー……そうかも。でもうさぎちゃんみたいにひょこひょこしてたし、なんでか自分のことうさぎって言ってたんだよね。そう、今の子みたいに。
そ、そうか……まあ、人違いだろ。
と言いつつ、そのみずきの発現にはもしかしたら、と思ってしまった。

自分のことをうざきという人物なんてそうそういないだろう。

同一人物だという可能性を考えると……男か?それとも女か? 

だめだ、頭が痛くなってきた。

うーん……そうだね。って、頭おさえてどうした? 頭痛いの?
いや……色んな意味で失恋したかもしれないなと思って、頭が痛くなってきた
失恋……って、ええええええええええええええええ!? 失恋したの!? いつ!? てかなんで!?
うるさい、頭に響く。
びしっ


と、俺はその頭にチョップをかました。

いてえっ! 今のほうが頭に響くんですけど!?
そうか、なら頭痛薬を飲んで寝ろ
いきなりチョップしてきたお前のせいだし! あーーー頭痛いなーーー、誰のせいかなーーー
お前だな
なんで!?
聞いて欲しくないこと聞いてくるから。とりあえず、俺は失恋した。ということだけでいい。深くは聞くな。
ちぇー……よくわかんないけど、わかったよ。
それからみずきはこの件について聞いてくることはなかった。


失恋した――そう言ったが、本当に好きだったのかは謎。

深くは知らないし、かわいいから好きだった、それだけだろう。

あの2人を見た時に感じた気持ちは、気になっていた子が、俺の好きな友を好きだった。

俺は、色々と持っているこいつが心底羨ましい。

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