蒼海のガンマディオラ

ガンマディオラ(4)

エピソードの総文字数=1,422文字

 船室の窓からは沈んでいく夕陽が見える。

 ラオがいるのは船尾甲板の真下、船長室だった。

 船長が超星力(アストラ)で船を操っていることもあり、乗員はとても少ない。海魔と戦う際に発生する被害を最小限で食い止めるため、星力者(テーラ)以外は乗せない方針なのだという。

姉さん……。

 一人でいると、どうしても姉――ミルッカのことが思い出される。

 星力者を不気味がり、ラオとミルッカは集落で孤立していた。

 頼れるのは姉だけだった。

 その姉はもういないのだ。

お腹すいたな……。

 ポドカルガス島近海を荒らすようになったクラーケン。

 ――奴を狩ってくれるのなら、集落に居場所を作ってやる。

 集落の長に提案され、姉は乗った。

あたしが帰ってきたら、みんなとあったかいご飯が食べられるようになるわ。

もう必死で魚や虫を探し回らなくてもいいのよ。

 そう言って出て行ったミルッカ。

 温かいご飯どころか、温かい居場所すらラオは失ったのだ。

開けてもよろしいですか?
 ドアが叩かれ、誰かの声が聞こえた。
あ、うん。どうぞ。

ラオさん、夕食です。

よかったら食べてくださいな。

シュ、シュトラさん!

いいんですか!?

もちろんです。そのために作ったのですから。

 木製のテーブルに食事が並べられた。

 椀に入ったスープは温かそうだ。

 粥には細かく刻まれた焼き魚の身が入っている。濃密な匂いがして食欲をそそった。

い、いただきます!
(ガツガツガツガツ……。)

 すさまじい勢いで食事がなくなっていく。

 山ほど盛られていた粥もあっという間に空っぽになった。

ぷはーっ!

ごちそうさまでした!

まあ。すごい食欲ですね。
まともなご飯はしばらく食べてなかったから……。
島では孤立していた、と聞きました。

そうだね。

みんな勝手に俺のことを怖がるんだ。

何もしないのにさ……。

でも、ここに来たからにはもう大丈夫です。

誰も貴方を怖がったりしないし、温かい食事もできます。

私もフィーネも、そうやって迎え入れてもらいました。

シュトラさん達は、なんで『ガンマディオラ』に?

私達は西の港湾都市で、総督の娘として生まれたんです。

でも数年前、海魔の攻撃で街ごと沈められてしまいました。

私とフィーネはあちこちを点々としている時、船長に拾ってもらったんです。

そんなことがあったんだね。

でも、ここは海魔討伐専門の船なんでしょ?

無理に戦う道を選ぶことはなかったんじゃ……。

いいえ。

超星力(アストラ)をこの身に宿した時、私達は決めたんです。

海魔に苦しめられている人々を放ってはおけないと。

だからこの船に乗りました。

そっか……。

ラオさんが飛んできた時も私は必死でしたし、今も、もっと仲良くなりたいと思っています。

海魔につらい目に遭わされた仲間だから、他人のように思えないんです。

シュトラさん。

俺の目的は聞いてる?

ええ。

クラーケンを倒すのでしたね。

とんでもない目標だってことはわかってる。

クラーケンは一人じゃ倒せない。

だからその時が来たら……力を貸してください。

もちろんです。

ともに力を合わせて、お姉さんの仇を討ちましょう。

私もできる限りのことをします。

 シュトラの力強い言葉に、ラオはこれ以上ないほどの心強さを感じた。

『ガンマディオラ』のみんながいれば大丈夫。

 かすかではあるが、復讐への道が見えてきたような気がした。

 静かに時が流れ、日が没していく。

 暗くなった室内で、ラオは両手を握りしめた。

 明日がこれほど待ち遠しく感じられる夜は、初めてだった。

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