三題噺のお部屋

タマネギ

エピソードの総文字数=924文字



 たぶん、私は周りの人たちとは少し違うらしい。外見が違うとかそういうことではなく、物事の考え方の話。



 この国の人間は、みんなで手を取り合い、足並み揃えて同じことをするのが正しいことで、一人が周りと違うことをすれば、その一人を寄ってたかって袋叩きにして排除しようとする。中世の魔女狩りとやってることは同じだ。



 私も、その排斥対象として現在クラスの全員に認知されている。世にいうところのいじめというやつだ。



 初めは私も普通にクラスの人間と接していた。ある時、私はクラスの女子がいじめにあっているのを目撃した。あまり目立つような子でもなかったし、助けてくれる友達もいなかったのだろう。普通こういう時は見て見ぬふりを決め込むのが一番なのだと思う。そうすれば周りの人間からあぶれることもない、みんなと同じでいられる。



 私はそれが嫌だった。周囲の人間からすれば、私の行動は異質に映るのだろう。私からすれば、全員が一緒であろうとすることのほうが異質に見える。



 結果、私はいじめられていた子に代わっていじめられる羽目になった。



 いじめが起きていると他の人間に悟られないように、いじめを行う彼ら彼女らの団結力は、私には宗教にのめり込んだ狂信者のように見えた。



 雪玉の中に石を入れて当てられたときはニ、三日痛みが引かなかった。顔を狙わずに背中や腹を狙うあたり巧妙だと思う。



 何より私に一番ダメージを与えたのは、私がいじめられる原因になったクラスの女子が私をいじめるのに加担していたことだった。



 この世には神も仏もいないんだなと実感できたのと同時に、人間という生き物の本質が少しだけ見られたと思う。



 別に自分のしたことに後悔しているわけではない。そんな感情を抱いたところで、今の状況が変わるわけでもないから。



 



 びゅう、と冷たい風が吹く。



 屋上から見える景色は、思いのほか綺麗に見える。高いところから見る風景はいつも見慣れている街でも新鮮に映る。



 一歩、足を踏み出す。



 数秒前まで見えていた景色は一変して、急速に落下する。



 地面が目の前まで迫った瞬間。私の意識はテレビの電源を切ったように途絶えた。



tamanegi

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