フェンリル娘と始める異世界生活

16話:ランクDダンジョン「地下ネズミランド」ボス:『キングラット』

エピソードの総文字数=3,077文字

そこの人! 加勢します! 僕たち四人は敵じゃありません!
まず状況を伝える。

人間であること。

加勢しようとしていること。

こっちが4人であること。

間違えて敵と思われたら一瞬で殺されかねない。


ーーーーん……。……いらない。帰って。あなたたちは足手まとい。わたし一人で十分。
フェリルが目の前の敵を切り裂きながらこちらに視線だけよこす。

当たり前のようだが、歓迎はされていない。

僕たちはキミに比べたらまだまだかもしれないけど、足手まといにはならないつもりだよ!

『いこうみんな! 僕たちだってできるってところを見せてやろう!』

完全勝利してフェリルを助けられたときの感情とイメージを妄想しオーラに託す。

楽勝だったなとみんなで喜んでいる。フェリルも安心したように笑っている。

それに従ったオーラは色を強い赤の暖色に変えた。

そしてオーラは形を変え、先の戦闘以上の濃度で4人に向かい伸びていった。


三人兄弟にすんなりと指向性のオーラが刺さる。

すると三人の体からオーラが激しく立ち上り、今までで最高の高ぶりを発揮する。

よおおおしゃあああ!キタキタキターーー!!
これは行けるんだな!
俺達も雑魚じゃないってことを教えてやる!
ーーーー?
反対にフェリルの方に向かった指向性オーラはその直前で分厚い壁があるかのようにピクリとも進めなくなり、次には弾かれて霧散した。


フェリルはこっちをみて不思議そうにしていたが、自分に対しても何か違和感を感じたらしく首をひねっている。

あの娘にはスペクトル能力が効かないみたい!
たぶんそれはパーソナルスペースが硬いんだ!

シューマの能力は内側から作用してるみたいだからな。

まず相手の内側に入らないといけない。

拒絶心が強いと効かないんだと思う。

おいらたりは初対面でいきなり乱入してきた輩だ。心を許すなんてできるはずないんだな!


それよりも相手はDランクの変異ねずみなんだ!気を抜いたら死ぬんだな!

闘技を出し惜しみしたらダメなんだな!

分かってるよ!

『はああああああああああああああ!』

シューマは再びオーラを増やすイメージを加え、今度は先端を槍のように尖らせた。

付随するイメージは『あれっ実際こいつらと戦ってみたら案外弱いじゃん』だ。

そして、その指向性攻撃的オーラを敵に向かって高速で伸ばし突き立てようとした。

『ぎゃう!?』
数体の変異ねずみはその矢印が突っ込んできたことに何の反応もせず、突っ込んできた三兄弟の方に意識を割いていた。

そんなかかしであたらないはずがない。

スピードがついて威力があがっていた矢印は変異ねずみの前の不可視の壁に、何の妨害もなく突き当たり小さな穴を穿った。不可視の壁がひび割れ放射線状にクモの巣が張る。

突き穿った矢印はそのまま変異ねずみに突き刺さり、寒色のオーラで敵を内側から浸食する。


変異ねずみが危機感を帯びた鳴き声を上げる。

行くぜおらあ!!
クラークが放ったのは防殻破壊闘技「屠殺一閃」

相手の持つ物理的生命エネルギーを斧の先端のみ無効化して相手をただの肉と認識させる。

相手の防御力を減らした状態で攻撃ができるという業だ。

『ギッ!!?』
シューマが弱体化させた敵を強化されたクラークが防御削減の攻撃を繰り出した。

いくらDランクの魔物が鋼鉄並みの硬度を持っていようとも耐えられたものではなかったらしい。

クラークの攻撃範囲前方2メルトに入っていた敵は真横真っ二つに切り分けられた。

鋼鉄の鎧を装備したねずみの騎士であっても、盾を持ったねずみの騎士であってもクラークのまえではとさつされる肉でしかなかったらしい。


あたりにおびただしい血がブチまかれる。ずれた個所から中身がこぼれだす。

慣れたとはいえ、気分が悪くなるくらい気持ち悪い。

うそだろ!? 闘技を使ったとはいえDランクも真っ二つとかすげええぞ!!

シューマのスペクトルすさまじすぎないか!?

『ぎゅううう!!』
半分にされたねずみの騎士の後ろから下半身に体重の5割はありそうな足筋を持ったねずみアクセルラットがかたきをとるかのごとく叫び姿勢を低くする。


次の瞬間地面をえぐり、瞬間にトップスピードを発揮。

クラークを通り過ぎ、残り三人に突っ込んできた。

シューマたち四人の視覚神経が認識し脳が運動神経に命令する以前にもう目前に来ていた。

ーーーーーーーー!!
対高速攻撃カウンター闘技「逆落とし」

エディは自らに向かって突っ込んできた敵が攻撃の射程圏内に入った時に、厳しい訓練により覚えこませておいた動きを自動的に行った。

大上段から剣をたたき下ろし、地面へと押しつぶす。

剣圧により数体が同じく地面に落しつけられる。


強化されたエディと逆落としの攻撃力により、地面を構成するレンガが押され負け、逆にまわりのレンガが急激に隆起する。
『ぎょ!!』
地面から飛び出したレンガの柱により、運動エネルギーが上へと向かい、地面を這うように走っていたアクセルラットが宙に浮いてしまう。


ーーーー!
ふわりとした一瞬の空白の後、バランスを崩した状態で飛んでくる数体のアクセルラットに向けて槍の石突きを地面に刺し先端をアクセルラットに向けた。


はあああああああああ!!
高速ではしる無数の槍。

それは余りの槍の速さにそう錯覚してしまうからだ。

闘技「槍雨」

全身を槍を繰り出すためのベストの状態を作り出し、実力以上の高速で繰り出す闘技。

槍さばきの技術に依存するため、威力は使用者しだいだが、高い能力を持っていた場合、そこは完全なる「死の間」となりうる。

『ぶぶぶっぶぶぶ……』
飛んできた蛙が壁に当たりべちょっと張りつくかのように、

槍の先端付近の空中で何匹もねずみが浮いたままになっている。

よく見ると、次から次へとアクセルラットに心臓を中心に穴があいていく。

空中に縫いどまっていたのだ。

べちょりと落ちたころにはすべてが絶命していた。
一瞬の間。

2種の後ろで待機していたデスラットは躊躇したように急制動した。

どうみても危険な領域に踏み込むことに本能が拒絶したのだろう。

ハァ~……!

なんだ今の……!

全然違う……!

闘技のすべて。技の速さも、威力も、切れも、それに体の反応が全然違う!

いままでの闘技が水の中だったみたいだ。


これ産まれ変わったみたいに強くなってるぞ!

シューマのスペクトル、闘技にまで影響するなんて……規格外なんだな!
その後も闘技をふんだんに使った殲滅戦を続けた。

相手の攻撃をまずくらわない。それは鉄則であるからまわりからすると魔物を一方的に殺しているように見えるかもしれない。

だが、当人たちからすると、少しも気を抜けない、キリングフィールドだ。

戦闘がひと段落すると四人の体中から脂汗がどばっとあふれていた。

向こうにもっ!!
フェリルはあくまでソロでやるらしく、こちらに近づかないまでも妨害をすることは無かった。

しかし、シューマはできるだけやりやすいように、フェリルの敵にも寒色のオーラの槍を突き立てていった。

ん。弱く……なってる……?
ちらりとシューマをみるフェリル。

そこには「なんで」と「どうやって」が等分にふくまれた胡乱下な瞳があった。


パターンが解析され、勝利条件が整い始めたとき。

今いる下水道の広い空間に向けて、奥から何か、大きなモノがドシンドシンと近づいてくるのが見えた。大きな……ねずみ……?

おいおいまさか! 主がくるんじゃないだろうな!?
そんなばかなことはないんだな! いくらねずみが跋扈してようとも、都市の地下にダンジョンが形成されているなんてありえないんだな!
なんじゃありゃあああああ!
広場にのっそりと出てきたのは10メートルもあるデブねずみだった。


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