大日本サムライガール

辞表提出

エピソードの総文字数=656文字

辞める? どうして?
 俺の辞表を前にした部長は、戸惑ったような声を上げた。
 予め用意していた当たり障りない理由を俺は言う。
一身上の都合です。蒼通に不満はないんですが、色々考えるところがありまして。
東王印刷に行くのか?
それはありません。今後もずっと、私が東王印刷に関係することはないでしょうね。
こんなことを聞くのはおかしいが……たとえばだ、俺が説得したら翻意する可能性は?
申し訳ない。一〇〇%ありません。
……。ふぅむ。織葉くんは結構な案件を抱えてるだろ。引き継ぎには時間がかかりそうだ。
私が抱えている案件の大半には、このところずっと健城に同行営業させています。学ばせるためだったんですが、ちょうど都合よく、引き継ぎの役割にもなってくれたということですね。事業部の他のメンツにも、適時案件を割り振っていくようにしますし。
しかし健城くんに独り立ちさせるには、まだちょっと早いんじゃないか?
いえ、アレでも健城は要領がいいヤツですよ。お客さんの受けは非常に良いし、才能があって努力もする。お客さんに最後の挨拶回りをする際に、必要なことはすべて健城にも伝えておきます。それに何かあれば、辞めた後でもいつでもお手伝いに参上しますよ。当面、フリーの予定なんで。
なんだ。本当に何も決まってないのか。もっと良い条件でヘッドハントでもされたのかと思ったぞ。君は頭が良いから、もっと手堅い人生設計を描くかと思ってたよ。
残念ながら、頭は悪い方なんです。これからは、悪いなりに努力してみようかと。
苦笑いしながらそう言って、俺は肩をすくめた。

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