フェンリル娘と始める異世界生活

20話:ストッパーシューマ

エピソードの総文字数=1,769文字

あ、あ、あああああ……!

フェリルの悲しみと恐怖に満ちた声。

それが、目の前の藍色のオーラが原因だと如実に理解させられた。

さっきまでシューマが押さえつけていたもの。

何かフェリルに悪いことをしているのは感じていたが、これは本格的にやばい。


だめだシューマ!あれは暴風の暴走の兆候だ!近づくな!逃げるぞ!
でもっ!!

ブラームスが叫ぶがシューマはさっきまではうまくいっていたことがわかっていた。

なら今度もそれを続けるのみだ。


フェリル!負けるなっ!


シューマはフェリルに持てるすべてのオーラを持って、突き刺した。

内側からの圧迫力がさっきよりも強い。ため込まれたものが一気に吹き出したかのようだ。

ん……!

フェリルは短く呻くと崩れ落ちるように地面に倒れ込む。ガシャリと鎧の軋む音が響く。

シューマはすぐさま駆け寄り、抱き上げる。

苦しそうなフェリル。その銀色の髪の毛をかき分け、額を触るとかなり熱くなっている。


フェリルの鎧は隙が無いくらいに血で汚れており、かなり前からこびりついているような血が固まっており、ひどく鉄くさいにおいがした。



こんなもの着続けていたら病気になるよ!

シューマはわからないなりになんとかしてフェリルの鎧を脱がし切った。


厚めの内服が現れたが、これも開拓者ようの防具なんだろうか。ところどころ敵の血でにじんでいる。


今までどれだけ戦ってたんだ!?フェリルちゃんは!
ん……。に、げ、て……

一音一音、漏れ出すがごとき小さな声でささやく。


フェリルの手は胸の上をがりがりとひっかいていく。

うっ……

布服が突き出すほどのフェリルの大きな胸がその弾みで大きく揺れ動くのを見てしまい視線が向かいそうになったシューマは不謹慎すぎると思い両手で自分の顔を張った。


大丈夫。さっきもなんとかなったし、今回もなんとかする。暴走なんかさせない。

安心させるように抱きしめ、頭を撫でる。

こういうときは心の方から安心させるべきだ。

持てるものは全部使う。

緑色のオーラをフェリルにまとわせ、自己回復させる。

緑のオーラは回復を司るというのはさっきしったのだが、間違ってはいないようだ。

回復してほしいと思うとオーラが自然と緑になってくれる。何もわかっていないシューマには助かった。

激しくもだえ苦しんでいたフェリルが気休め程度には穏やかになっていった。

フェリルの目にじわっと涙がにじむ。
ごめんなさい……
フェリルのその声はシューマの心も悲しくなってしまうほどに震えていた。
なんで謝るんだ……!
どうして彼女はこんなにつらそうに謝るのか。
わたしのせいでみんなが迷惑……
みんなって誰だよ!僕は全然迷惑なんかじゃないよ!
でも……
大丈夫だって!

僕のスペクトルはフェリルのそれに効くみたいだし、もしフェリルがよかったらこれからぼくと一緒にいてくれればいい。

それなら僕もずっとフェリルにスペクトルをかけ続けていられるから。

シューマはフェリルを努めて安心させるように赤子をあやすように耳ごと頭を優しく撫でる。

シューマがしてもらって一番安心する行為だと思っていること。

子供の時のシューマが親に一度もしてもらってなかったこと。

して欲しかったこと。

う……ううう……うん……うん……

シューマの気持ちが伝わったのか安心したようにフェリルの力がふっと抜けるような感覚があった。瞳を閉じ、何年もしていなかったかのような心からほっとした表情を見せるフェリル。

シューマの腕に身をゆだねたかのようなぐっとしたおもりを感じる。

何故かシューマはそこで泣きそうになった。
大丈夫だ……大丈夫だからな……

自分に言い聞かせるようにフェリルを抱きしめささやき続けた。









ーーーーーー。
フェリルはシューマに身をゆだね、頭を撫でてくれるのをまどろみのなかで甘受していた。

シューマの力を受けるごとにフェリルは今までのもやのかかった視界が開けていくのを感じていた。

最初の出会いの強烈な変化をともなうものではなく、あくまでゆったりとフェリルのペースにあわせて理解を促す暖かみのある力に今まで張ってきた余分な力が抜けていく。

すごくすっきりした気持ち。安定感。安心感。

ずっとシューマに撫でていてほしい。

シューマはフェリルを大切なもののように優しく撫でてくれた。

信じていいのだろうか。信じたい。信じたいな……。

あふれた感情が瞳からこぼれ落ち、伝っていくのを感じた。









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