『みじょかもんの祈り ー 心の貧しい人は幸い? ー』

02. 「次の実習に向けて。協力」

エピソードの総文字数=1,642文字

「できん。どげんしたら、覚えられると?」
「シーツにシワが寄るー」
「腰が痛かぁー」

長崎弁が実技用の教室内に響き渡る。

第一段階と同じ年の冬。
恐怖の実習は2回目を迎えようとしていた。

10名近い生徒が放課後、練習をしていた。
その内容は、「シーツ交換」、「体位変換」。
実習生同士が協力して何度も練習した。

この頃になると、一部ではあるが30代と20代、10代は、仲が良くなっていた。

第1段階が終わってからの学生の姿勢は、随分変わった。
同じ苦労をし、より良い介護を利用者に施すには、どうしたらいいのかという共通の目標ができていた。

この数ヶ月間、会話の内容や趣味が違えど、学生同士色んな話をし、理解を深めようと努力した。
10や20の年の違いを縮めることができないのなら、もっと年上の高齢者を相手にするなんて、無理なことだろう。

お互いが、実習を終えて、もっと「人間」というものに興味を持った。

高齢者の現実を知ったと同時に、喜ばれる幸せも感じていた。

授業だけでなく、サッカーや飲み会など行ったりした。

第2段階は、第1段階よりも緊張が高まる。
第1段階と第2段階で何が違うのかと言えば、利用者との距離が変わる。

第1段階ではコミュニケーションが中心だったのに対し
第2段階は、利用者の情報を収集する。それをアセスメントと言う。
例えば、その人の出身、家族構成、前職業、趣味などを施設職員や利用者本人から聞く。
それを図などにして、その人に必要なケアを考察する。

具体的に計画を立て実施するのは、最後の第3段階であるが、第2段階の目的は、他職種(ケアマネジャーや看護師、社会福祉士、介護福祉士)や利
用者の視点から利用者について知ることである。
それにプラスし、今度は、利用者を介護できる範囲が少し広がる。

少々、小難しい話になった。

今、ここで練習している体位変換。
「そんなに重要なこと?」
「動かせばいいだけじゃないか?」

以前の私なら、そう思っていた。

高齢者には、体が麻痺してしまっている人が多い。
そうなると、自分で体を動かすことができない。

人間は、仰向けのまま同じ姿勢で寝ると、どうなるか。

体に「穴」が空く。

例えば背骨。
仰向けに寝ると、床に背骨が当たる。

服の中が汗で蒸す。
そして、血のめぐりが悪くなる。
血行が悪くなると、その部分が壊死していく。

そのままにされると、壊死は広がっていく。つまり、穴が大きく広がっていく。
少しでも体を動かそうものなら、激痛だ。

これを、褥瘡(じょくそう)と言う。

体位変換は、重要な介護である。

しかし、イメージと違い、体位変換は難しい。

高齢者はベットの真ん中に寝ているものだ。
介護福祉士と高齢者は、位置的に空間ができる。
介護福祉士は、高齢者の肩や腰を掴むために、前かがみにならなければならない。
すると、腰に力が入る。
そこで、腰を痛めてしまう人も多いのだ。

腰=体幹は、介護福祉士にとって命である。
体位変換もそうだが、ベットから車椅子へ移乗させる。
便座に座らせるなど、高齢者の体を支えたり、担いだりすることが多い。
この負担が重大な腰痛へと結びつく。
コルセットを巻いて介護をしている方もいる。

腰に気をつけながら実習をしなければならない。
実習生は、お互い体が大きかったり、細かったりと様々だ。
お互いの胸を借りて、練習に励む。

次の月にやってくる第2段階の実習に向けて。

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