【ユーザー企画】最高のプロローグ選手権

如月真琴

エピソードの総文字数=1,016文字

ドスッ――ドスッ――。

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耳がおかしくなりそうなほど大粒の雨に降られた。

やっとの思いで帰宅した私は、張り付いたセーラー服の裾を絞って身震いを一回。

――最悪の下校時間だった。

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ドスッ――ドスッ――。

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ドアの向こうから鈍い音が響いてくる。

お父さんが帰ってくるには早い時間だ。

……ということは、お姉ちゃんか弟だろうか?

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ただいま――。
ドスッ――ドスッ――。

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ドアを一枚開けるたびに、その音は嫌な予感を伴って近づいてくる。

リビングから聞こえる打撃音は、徐々にリアリティを纏って私を恐怖させる。

ここから逃げろと、誰かが警告している――。

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ごめんなさい……ごめんなさい……!
ドスッ――ドスッ――。

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両手両足を縛られ、顔全体をガムテープで覆われたが姉の攻撃を受けていた。

玄関から漏れ聞こえる打撃音は金属バットの一撃だった。

ひどい腐敗臭がリビングに充満していた。

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お姉ちゃん、ただいま。
…………!!

あかり、見てしまったのね……!!

まるで本当の姿を見られた鶴のように怯えた声を上げる姉。

もうここには居られません――なんて言い出すのではないか。

そう考えていた矢先、姉は果物ナイフを持ち出すと、自分の喉元へと近づけた。

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ごめんなさい、あなただけでも強く生きて……!!
弟は生きているだけでも罪と言われ続けていた。

嘘みたいな話だが、弟の目には特殊な力があるらしい。

直視するだけで悪性細胞が活発になり、病気を促進させる」という嘘のような力。


家族やクラスメイトの病気を悪化させ、最悪死に至らせたこともある。

老人ホームに立ち入ったばっかりに、そこのジジババは全員危篤状態になった。

精密検査の結果、弟が原因を作っていたことが判明したのだ。

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タチの悪いことに、弟自身もひどい発達障害を抱えていた。

普段の言動はゴリラやチンパンジーとそう変わらない。


そんな弟を生かすことは罪だが、殺すことも同様に罪だった。

――そんな生活を8年も続け、ついに私達は崩壊したのだ。

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――お姉ちゃん!!
気がつけば、私はナイフを奪っていた。

できるだけ遠くへ放り投げ、姉を強く抱きしめる。

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私を……一人にしないでよ……。

逃げよう……ずっと遠くに……!

あか、り……。
強張っていた全身の力が抜け、わんわんと泣き崩れる姉。

目を閉じて、今はただ二人で体を温め合うことだけを考えていた。

うす暗いリビングで身を寄せ合い、見えない愛で赦し合う。

タイムリミットは、お父さんが帰ってくるまで。


――神様、こんな私達でもお救いいただけますか?

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