怠惰の神とフィクションブック

第5話 宮本武蔵はかく語りき

エピソードの総文字数=1,320文字

ほあ……めしどきかのう?

なんだこのおっさんは!

はわわ、どーするんっすか、かみさま!
小汚いジジイが悪漢にボコられちゃうっすよ!

君ほんと口悪いな。うーむ、しかし召喚ミスかあ。
フィクションブック、仮にも神器なんだけどなあ。

道具は使い手に似るらしいっすからねえ。

なるほど、一筋縄ではいかないということか。
少なくとも天使としての力を失っている今のピピルよりは
使い物になると思うんだがなあ。

そっすね。羽根とわっか取られたらもう、
全世界を魅了する空前の可愛らしさと
雪の結晶のように純粋な心ぐらいしか残ってないっす……。

つまり何も残っていないということだな……可哀想に。

ほよよ……!

ああっ! 小汚いジジイがピンチっす!

仕方あるまい。フィクションブック、追加オーダーだ!
ミヤモト・ムサシあるだけ持ってこい!!!

ヌモモモモモモモモモ!

わあ! いっぱい出てきたっす!!

拙者の名前は宮本武蔵でござる!
小次郎殿、拙者と勝負するでござるよ!

僕はミヤモトムサシ。オーサカ保安隊の副隊長だ。
君が保安隊の新入りか? これからよろしく頼む。

ワタクシは天下に名高き二天一流、ムサシ・ミヤモトですわっ!
優雅で荘厳なるワタクシの剣術にひれ伏しなさいっ!

宮本……ムサシと申します。
いつもヒデヨリさまがお世話になっております。
そんな、私なんかが可愛いだなんて……。

俺は戦国学園2年甲組、宮本むさし……。
それ以上近づくな……俺の「射程圏内」に……。

宮本武蔵がいっぱいっす!

「私の世界」があるように、神界には数多の世界が存在する。
そしてフィクションブックはそれらの世界から、
あらゆる登場人物を強制的に私の世界へ引きずり出す。

つまり、ここにいるのは「全世界のミヤモト・ムサシ」なのだよ!

半分ぐらい女の子っす!

それはまあ、いろんな世界があるからね。
中にはそういう世界もあるんじゃないかな?

なっ! なんだテメーらはぁーっ!

それっ、脇腹がガラ空きでござるよ!

オーサカ保安隊心得その1、敵に情けは無用だ。
さっさと終わらせよう、ツインブレードX斬!

ワタクシの優雅な剣舞に酔いしれなさい!
いきますわよ、二天一流・キリキリ舞!

ああっ、ゴメンなさい! お掃除させていただきますね!

警告したはずだ……俺に近づくなと……。
双黒龍影斬(ツイン・ダークネス・ドライヴ)!!!

あ、どもども、藤原玄信と申します。へっぷし。

あぎゃぱあーーーーっ!!!!

明らかにオーバーキルっす。ミンチよりひでぇっす。

少しやりすぎたが、まあよかろう。
貴重な人間だが2、3人減ったところで
すぐに絶滅したりはしないだろうからな。

かみさま、一つ質問があるっす。

なんだねピピル、言ってごらん。

これひょっとして、呼んだ宮本武蔵さんたち、
もとの世界に戻らないパターンっすか?

あー、うん。めんどくさいからいいや。
そのうち勝手に戻るんじゃないかな?

その日、全世界からいっせいに「ミヤモト・ムサシ」が消えた。

宮本武蔵(1584~1645)
日本では江戸時代初期の剣術家として知られる。
諸説あるが生涯60余回もの決闘を行い1度も負けなかったという。
多くの水墨画を遺しており、文化人としても知られる。
晩年の著書「五輪書」の中では、自身のことを藤原玄信と称している。

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