神と大統領と弾道ミサイル(仮)

神の世界ランク

エピソードの総文字数=5,418文字

――リヴ:

tenma久しぶりすぎでしょwww4日ぶりだっけ? 5日かな?

――半蔵:

俺このゲーム始めてtenmaに会わなかった日なんてなかったぞwwどこ行ってたんだよおwww

――今井:

みんなマジで心配してたんだよw

――リヴ:

せっかくログインしたのにボス戦いかないの? このままだとtenmaのランキング、一位から落ちそうだよ?

――tenma:

フッ、こんなゲームごときの世界ランキング1位なぞ、俺にとって単なる暇つぶしだ。その気になれば、何をやっても圧倒的1位になってしまう。
――半蔵:

世界1000万プレイヤーのうちの1位だぞ? ほとんど基地外じみてる頂点中の頂点だっつーの。

――tenma:

次に俺が成し遂げるのは、75億プレイヤーのなかの頂点だ。天才だけに仕方ない。これから俺が始めるのは、戦争だ。

――IORI:

俺が始めるのは、戦争だwwwwwwまた名言いただきましたこのやろうwwwwwwww

――tenma:

俺が率いるアスタリア帝国軍は、これからアメリカを中心とした多国籍連合軍と開戦する。

――Danz:

帝国軍VS連合軍すごいですねwwwwwww

――IORI:

40歳ニートがどこの帝国を率いてるんですかこのやろうwwwwwwwww

――半蔵:

数日見ないと思ってたら、他のネトゲにハマってたのかよおwwwww

――tenma:

反抗的な貴様らと比べれば、我が帝国兵は遥かに従順だ。荒くれ兵士どもが文句を並べていたことは確かだが、最終的には俺の作戦に則った作戦行動をしているぞ。俺が率いる戦闘は、戦う前から勝っている。

――今井:

戦う前から勝っているw

――IORI:

tenmaが名言しか言わない件このやろうwwwwww

――半蔵:

他のネトゲのギルメンにも、結局文句を並べられていたのかwww

――リヴ:

wwwwwwwwwwwwwww

――tenma:

俺は無数のスマホ兵器を実践投入することになる。スマホを制御する軍事用ソフトウェアも15分で開発した。この戦いは、数々のスマホ兵器を制御し、この俺が一人で戦うようなものだ。

――半蔵:

スマホ兵器wwwwwww

――Danz:

スマホが飛んで大爆発するんですよねwwwwwwwwwwww

――tenma:

俺が実戦投入する究極無比の無人兵器の名前は『スペツナズ・ヴァルカンキャノン』。この固定砲台から繰り出される怒りの炎は、地球を火の七日間で燃やし尽くすだろう。

――IORI:

スペツナズ・ヴァルカンキャノンこのやろうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

――半蔵:

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

――今井:

いやいやいやいやww

――Danz:

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

――リヴ:

おなかこわれるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 ギルメンたちは大いに盛り上がった。兵器名がよほどツボにはまったらしく、ギルメンたちも対抗してさまざまな兵器名や必殺技名を並べ立て始めた。いつもの慣れ合いだ。

 エリカたちが戦闘準備のために駆け回っていることなど構いもせず、天馬は市庁舎の会議室の広いテーブルのうえでノートパソコンを広げ、ギルメンたちとの他愛ないやり取りを続けていた。

 ふと後ろに気配を感じて天馬が振り向くと、イヴァが遠慮がちに画面を覗いてきたところだった。

……あの……何をやって……あっ、『ファウストオンライン』!
 その瞬間、イヴァの表情がパッと輝いた。ここに来て初めて見るイヴァの笑顔だった。
ほう。知っているのか?
知ってるもなにも、世界で一番有名なMMOだと思います。私も一人でいるときはよくプレーしてるんです。
 イヴァが急にハキハキ話すようになり、天馬も面食らっていた。
この俺から見ても、戦争から生産、経済活動まで、なかなかよく出来ているMMOだ。ゲームデザイナーとして、経済学者や物理学者など各方面から優秀な人材が集められて設計されているという。さすがに俺の天才性には及ばないものの、なるほど数十人もひとところに高い知能が集まれば、この俺を満足させるに足るものが出来上がるということだ。
天馬さんはサーバーどちらですか?
ヤマトサーバーだ。日本設置のサーバーのひとつだな。
私はホワイトナイツサーバーでやってます。今度遊びに行ってもいいですか?

 ホワイトナイツサーバーは欧州設置のサーバーだ。

『ファウストオンライン』はサーバー間でのキャラクター移動がたやすい仕組みになっている。サーバー間移動はゲーム開発元にとって別に何の利益にもつながらないはずだが、かゆいところに手が届く細かい工夫の数々が、『ファウストオンライン』を世界的なMMOに押し上げていた。

いいだろう。この俺が直々に、ティアブレイズの倒し方を教えてやってもいい。
ティアブレイズってCMに映ってたあのドラゴンさんですよね! ティアブレイズがいる浮遊城になんて近寄ったこともないです。倒せないって聞きましたけど……。
いや、アレは倒せる。しかも、ソロでもいける。倒し方があるのだ。おそらく世界中でティアブレイズをソロで狩れるプレイヤーは3人だけだろう。俺の次につけている二位のGeizと、三位のboomerだけだ。
えっ、3人のうちの1人が天馬さん……?
当然だ。俺は圧倒的な世界一だったからな。

もうすぐGeizにスコアで抜かれるようだが、フッ、たまには譲ってやってもいい。俺がその気になりさえすればいつでも一位に返り咲ける。

い、1位!?

1位のプレイヤーって伝説みたいに語られてて、たしかtenma……それって天馬、さん……?

えーーーーーーーーーー!?

 イヴァは声を上げて目を見開き、興奮した様子で続ける。
ほとんど人間じゃないと思います……!

すごすぎるという意味で……!

たしかに俺は人間とは言えない。二位のGeizも天才級の一人だ。数学的宇宙仮説の研究者で、大学の研究室から頻繁にアクセスしているらしい。俺とは何度か知的バトルを交わしている。まぁヤツも、しょせんは俺の知性には及ばないのだがな。
こんなすごい人だったなんて……。

天馬さんのお話を最初に聞いたときに、お爺ちゃんは怒ってばかりでしたけど、私はなんとなく感じるものがあったんです。この人は私なんかには理解できないけれど、もしかしたらって……。

俺は神の類だ。敬ってくれていい。
はい、敬わせてください。

『ファウストオンライン』のあの伝説的プレイヤーというのもびっくりしましたが、今回のtenmaさんの作戦立案もすごいと思いました。正面から政府軍とぶつかっていれば、きっと大きな損害が出たはずです。

俺のことを褒める姿勢は当然だが、喜ぶのはまだ早い。

『ファウストオンライン』ではダメージ計算にランダム要素が大きく絡んでくる。それがまたゲーム性を深くしているといっていいだろう。この世界も同じだ。そうそう簡単に、こちらが意図したダメージ計算がそのまま成立するはずもない。

でも天馬さんなら、きっと何とかしてくれるんだって信じられます!
それもまた事実だ。この俺なら、確実に、そして華麗に問題を除去し、正確な答えを瞬時に導き出せ――

 そのとき荒々しい足取りで、エリカが会議室へと入ってきた。

 エリカは報告してくる。

『スペツナズ・ヴァルカンキャノン』の設置が完了したわよ。
ほう、早かったな。
それにしても……天馬が名付けた『スペツナズ・ヴァルカンキャノン』ってネーミング、どういうつもりなのよ……。口にするたびに身もだえてしまうんだけど……。
呼び辛ければ、略称『SVキャノン』でもOKだ。
そういう意味じゃなくて、痛々しくてたまらないってこと!

ただのAKS74Uじゃないの。

これだから素人は困る。新兵器のイメージを正確に投影したネーミングだぞ。ソビエトの特殊任務部隊が装備していたスペツナズナイフから拝借したのだ。刀身が射出可能で、ロシア語では『弾道ナイフ』とも言われているな。『SVキャノン』というネーミングこそ、俺が開発したなかでも最も重要な側面だ。
あっそう……。まぁ兵士たちも面白がって呼んでるみたいだけどね……。
政府軍の動きはどうだ?
こっちが明け渡した最前線のザリスの監視台に居座っているわ。敵はもともとザリスでの戦闘を予期していたらしくて、簡単に占拠でてきしまったせいで戸惑っているみたいね。まだ動いてない。
 遠慮がちに、イヴァが口をはさむ。
……あの……エリカさん……。もともと政府軍との戦闘があるときは、ザリスの監視台の奪い合いといったものでした……。
なるほど、今回の政府軍の目的は、ややもすればザリスの監視台を奪うためのものだったという可能性も高いということだな? こちらの撤退は、敵の裏をかいたと。
そうなんです、天馬さん。だから政府軍としては目的を達成したはずなので、ザリスの守備兵だけ残して、撤退してくれるかもしれません。
 イヴァは、エリカに話しかけるときは伏し目がちでおどおどしていたが、なぜか天馬に話しかけるときだけはしっかり目を見据えてきて、急にハキハキした様子になった。『ファウストオンライン』のプレイヤー同士ということを知って、急に親近感を感じるようになってくれたのだろうか。
敵を殲滅する血みどろの内戦というより、互いに占領地を拡大し合う意地の張り合いといったところなのかしら?
はっ、はい……。

政府軍も、ほかで内戦中の各部族も、敵対相手を殲滅したり、民族浄化みたいなことまでは誰も考えていないかもしれません……。オーレス共和国国内での占領地争いというイメージですね……。それでも政府軍は首都オーレス周辺を押さえていて一番強いので、私たちは政府軍がほかの民族との戦闘中に、全戦力でザリスの監視台を奪っておくというのが幾度か繰り返されてきました。

 イヴァはやや目をそらし、か細い声で言った。だが決して話をしたくないわけではなさそうで、あくまで強烈な人見知りのためだろう。
写真で確認したけど、たしかにザリスは難攻不落よね。しかも、ここアスタリアまでの重要な中継地点になっている要衝よ。そこを軽く明け渡したら、そりゃ長老も怒るわね。
でっ、でも天馬さんの判断も悪くなかったと思うんです。政府軍とザリスを巡って真正面から争ったら、勝つことは難しいんです。お父さんも、監視台の攻防で戦死したんです。政府軍が本気で侵攻してきた以上、いったん明け渡してしまったほうがいいかもしれません。もしかしたら、これで戦闘が避けられるかも……。
だが逆に、政府軍は戦力を温存したことで、アスタリアに打撃を与えておく好機と考え、さらに侵攻してくるかもしれんぞ。
政府軍の動きを注視しながら様子を見るしかないわね。撤退してくれればいいんだけど……。

 ちょうどそのとき、エリカの携帯が鳴った。

 スマホを耳に押し当てたエリカは幾度かうなずき、天馬とイヴァへと視線を向けてくる。

偵察兵からの入電。政府軍がザリスを出て、アスタリアに向けて侵攻を開始。侵攻してきたほぼ全兵力で、こちらに向かっているそうよ。
よし、こちらの準備が整っている今、迎え撃つのはたやすい。俺が敵兵のすべてを薙ぎ払い、無双の限りを尽くしてやるとしよう。
 ニヤリと笑った天馬は指示を続ける。
予定通り、エリカは200を率いて大きく迂回し、ザリスに急襲をかける用意を整えておけ。俺とイヴァは最前線の政府軍を迎え撃つ100を率いて待機しておくことにする。
まさかアスタリアにきて、いきなり戦争に従軍するとは思わなかったわ。
 エリカは肩をすくめながら会議室を出ていった。
わかりました天馬さん、皆さんに、戦闘準備を伝えてくることにします。

 イヴァも健気に口にして、エリカの後に続いた。

 天馬も戦闘準備に入らなくてはならなかったが、その前に『ファウストオンライン』をログアウトしようとモニタに視線を落とす。

――tenma:

なんだお前ら、まだ駄弁っていたのか?

――リヴ:

だってtenmaが久しぶりにログインしてきたんだもんねwwwそりゃ盛り上がるでしょwww

――半蔵:

tenmaこそ何やってたんだよお? ROMってたのか?

――tenma:

政府軍侵攻の入電があった。これから俺は帝国軍の指揮をとらねばならない。だがこの戦いは完全勝利となるだろう。俺がいるのだから、我が帝国が勝ってしまうのは仕方ないのだ。

――IORI:

勝ってしまうのは仕方ないwwwwwwwwww新しい名言いただきましたこのやろうwwwwwwwwwww

――半蔵:

俺も帝国軍に入りてえwwwwwwwwwwwwwwwww

――リヴ:

じゃあ私は政府軍のほうでwwwwwww

――tenma:

戦闘前だ。貴様らの相手をしているヒマはない。じゃあな。

――Danz:

「戦闘前だキリッ」マジかっけーっすwwwwwwww

 さらに盛り上がるギルメンをしり目に、天馬はさっさとログアウトした。

 ある意味、自身の大統領デビュー戦である。準備は万端。これより、政府軍相手に無双プレイを見せつけるだけだ。

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