【6/17】ダンゲロスSS(19)翻訳者VS東山ききん☆

翻訳者

エピソードの総文字数=2,255文字

ここで翻訳者さんに執筆していただくよ!
他の方は書き込みをしないようにね!
私の名前は黒渕鏡眼。
大隈探偵大臣が先の欧州動乱の際、景気の良さからなんか勢いに乗っちゃって設立しちゃた探偵専門の学校「晩稲田大学(おくてだだいがく)」に通う一回生だ。

唐突だが、私は今危機を迎えている。
ショキショキショキ~
見ればわかると思うが、小豆とぎに襲われているのである。

そもそも小豆とぎというのは声はすれども姿は見えず、を地で行く妖怪だね。
妖怪作家などが何度も想像で絵図を記しているのはいいが、実体化に正解したとは到底言えないのが実情だ。

やぁ、僕だ。
黒渕くん、なにをそこで寒中水泳しているんだい?
師走の頃というに、助手が探偵の先生を走り回せるものではないと思うね。
刀を一閃。
すると、小豆とぎの「小豆」部分はその腕から離れて川に流れていった。
これでは奴は単なる「とぎ」である。
……!
洋風に言うならばアイデンティティー・クライシス!

名前のみに存在を依存した低級妖怪は途端に雲散、霧消する。
途端に、小豆の音に動きを束縛されていた私も解放された。
やれやれ黒渕くん。
できれば君の靴下で出汁を取った味噌汁を毎日飲みたいんだがね……。
どうやらこの分では及第は与えられようだ。
その瞬間、抜身の鞘、いいえ足を包んでいた彼女の靴下は太刀魚とその身を変じ、この顔だけはいい私の無防備に開けられた唇の最奥にキスをさせていた!

太刀魚とキスである!
もぐもぐ……。

相変わらず味はいい。
近海産では真似のできない味だね。
流石は我が国の外貨収入を支える綿織物工業だ。

この僕に太刀魚のことを鱚(Kiss)と呼ばせるのだから!
というわけで私はこの顔だけはいい探偵と他人の仲ではないということがわかっていただけたと思う。
なんでも国策で探偵同士の婚姻は推奨されているらしく、私も先生役のこの人と将来を誓い合った仲を約束させられている。
Sxxx!
Fxxx!

アメリカ仕込みの4LetterWordがこだまする。
あと二つなんだっけ

こらこら、若い娘さんが口汚い言葉を口走るものではありませんな……。
と、そこに老紳士が話しかけてきた。
こんな東北美人(時ヶ峰団長のことだ)しか特産物のないド田舎地方でこんなナイスミドルが収穫されるなんてと思っていると……。

ああ失礼、前置きが長くなったようです。
この人が今回の被害者です。
まさか明智大臣の信望がここまで歪んで伝わってるなんて……。
――(沈黙)
既に物言わぬタンパク質とでんぷんの塊となった背広姿の紳士を前に呆然と私が立ち尽くしていると、時ヶ峰団長はぽんと私の肩を叩く。
二個探偵団増設要求は、無茶振りだったということは明智さんもよくわかっていたことだからね……。
探偵という仇花の陰には枯らされる民草の犠牲があってこそということを僕たち探偵はわかってやらなければならないんだよ。

さぁ、解決編と行こうか!

切り替えと解決が速いのが一時間探偵のいいところである。
どっかーん!

私の貧弱な語彙ではその光景の幻想的美しさなんて伝えきれませんことよ。
おほほほ……。
まぁ、冗談はさておいて、殺傷能力はない代わりに全壊した「宮沢賢治」の生家を私は目撃する。
犯人は……君だ。
実に、残念だよ。
……!

果たして、そこにいたのは四十分くらい前に退治されたはずの小豆とぎだった。
まさか……彼が宮沢賢治=犯人だというの!?
いやはや、時の禊とはなかなかに業腹なもので困る。
創生神であるトキガミネ様も供物にいささか加減を加えてくれてもいいというに。

ここに、辞世の句がある。
どちらも君の物だね、宮沢賢治君。
はらりと、素朴な青年の足元に落ちた二首の句。
それを詠むと、それがどうしてだか彼の、宮沢賢治のものだとわかってしまう。
未来という名の解決編を先に読める探偵と言うのも困ったものでね。
これでは倒叙派に転向するしかないと思うと、歴史派の姉様に怒られてしまうよ。

これは君が未来に書き記すことになるだろう「絶筆短歌」だ。
事実上、辞世の句=ダイイングメッセージといっていいだろう。
一首は当然君の物で、もう一首は君を見た被害者が君が書くだろうと思って記したものだ!

「真」なる「実」はかくして「結」ばれよう!
二つの事実は真実を映す!
たったひとつでは胡乱な文字列であってもふたつの異なる立場から見れば、真実を結ぶ。
探偵と言うのは真なる果実を収穫する剪定人であるのかもしれない。
ああ、トシ……。
トシ……。
……トシ。
青年が妹の名を泣きじゃくりながらつぶやいている。

結局、彼がなぜ小豆とぎに身をやつしていたのかはわからない。
けれど、罪の意識から逃げようとしていたんじゃないかと私は思う。
この際、時系列の矛盾については考えないことにしておこう。

……そして三日後。
どうやら同じ花でも「花婿」は気に召さなかったようだね。
なれば、僕が「花嫁」になるよう取り計ろうか。
そこには私の言いたいことのすべてではないけれど、その一部でも取り計ろうとしてくれた探偵がいた。
角を隠すのは「白無垢」の冠で、性別を思わせない純真でためらいしかない表情ははじめて歳相応を思わせた。

無論、私は男になれるわけではない。
女のままで女として振る舞う葵を娶るのはこの時代のこの国では難しいだろう。
私が好きなのは血塗れの骸骨みたいな人。
それはつまり死体に他ならない。

だから探偵を目指している。
殺人鬼にはなれないけれど、角は隠したいと想って私は角隠しを取りはらう。
そして、代わりに人生の墓場に入るよと頬にくちづけをした。
【終】
全ては終わったのだ……

  • ツイート
  • ツイート
  • シェア
  • LINEで送る

ページトップへ