魔界の姫と二匹の黒猫の物語

第十六話 旅立ちの日

エピソードの総文字数=967文字

姫様、そろそろ時間ですよ。
忘れ物はありませんか?
もう、昨日何回も確認したでしょ。
いちいち言われなくても大丈夫だって。子どもじゃないんだから。
フム。では、あそこに置いてあるお菓子は没収ですな。
あー! あれは違うの! 馬車で食べようと思って!!
ハッハッハ。最初から最後まで、にぎやかなことじゃのう。
あ、おじい!!
村の連中も総出で見送りに来とるぞ。
こ、これ……少しだけど残った畑から収穫した野菜だで、よかったらもってってけろ。
オ、オラの野菜も持ってってけろ。
何言ってるだ、オラの野菜の方が先だべ。コイツらのはいいから、オラのを持ってってけろ。
オラの野菜! オラの野菜さ持ってってくれたら……野菜をオマケにつけるだ!
あー、もう分かった分かった! 皆の野菜、ちゃんと全部持っていくから!
でも、本当にいいのかの? お前さん達が気の済むまでいていいんじゃぞ。
ううん、あたし、思ったの。あたしは……全然足りてないって。自分のことも、他の人のことも、全然分かってない。
ほう。
だけど、だからこそ……他の人やものをたくさん見て、聞いて、感じて、知らなくちゃいけない。
世界のこと、自分のこと……もっとよく知って考えなくちゃ、ううん、考えたいって、今はそう思う。
ふむ、そうか……お前さんにとって、いい旅になるといいの。
うん。あたし、絶対ここに帰ってくる! もっと、もっともっと大きくなって……!!
……身長については期待薄ですがな。
ハッハッハ。楽しみにしとるぞ。お前さんは、ワシにとっては孫みたいなもんじゃ。いつでも遠慮なく顔を見せに寄りなさい。
うん! ありがとう、おじい……おじいちゃん……!!
姫様……。
おっと、もう馬車が出る時間ですぞ。
では、達者でな。くれぐれも身体には気をつけるんじゃぞ。
ありがとう、おじいちゃん! ありがとう、皆!!
きっと……きっと帰ってくるから!!
おぉ~い! 待ってくれろ~!
ハァ、ハァ……。やっと追いついただ……。
これだけは伝えとかねどって思ってよ…。オラ、おめえさんがバインバインになって戻ってきたら、デートとか考えてもええかなって。
そんじゃ、チャオ☆
ねえ、アシュタロト。やっぱ、あいつ殺ってから出ることにするわ。
姫様、ここは抑えて! ベリアル、そっちの足を!!
やれやれ。立つ鳥跡を濁さず、とはいかぬものですな……。
第二章へつづく

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