黄昏のクレイドリア

21-1

エピソードの総文字数=1,345文字

<闘技場へと続く街道にて>

太陽が最も高くなるよりも前の頃、

一輛の幌馬車が林道を抜ける。

窮屈な木々の世界から一変し、

地平の臨める視界へと移った。

…………。

見えるかぁ、ロウ。

あの闘技場が

今度のお前の晴れ舞台だぁ。

今年の大会は、

あの魔術師名門、

アークライト家も

見に来るそうだぁ。


大会が盛り上がるよう、

引っ掻き回してやってくれぇ。

ハッ、

言われるまでもねぇ。

全部潰して、勝つ。

それだけだ。

……うむ、それでいい。

今回も期待してるぞぉ、ロウ。

…………。

男が視線を目的地から

進路へと戻した後も、

赤髪の青年は闘技場を見つめていた。


馬車の中の、さらに自身を収容した、

黒の鉄格子の中から

ーーーーーーーーー


<闘技場 入り口付近>


おーおー、

すげぇ活気だなー!

賑やかな空気にあてられ、

辺りをキョロキョロと見回す。


一帯には出場者らしき剣士や、

観戦目当てであろう

商人や貴族など、

様々な人間が見受けられた。

……で、この中から

あたしたちは

オルコット商工会さんを

探し出さなきゃいけないわけね。

くそ、気が滅入ること

言うんじゃねーよ……。

…………?


お前たち、この数の観客に

一人ずつ声をかけて

探し出すつもりか?

は?だって

それ以外方法がねーだろ?

非効率的なうえに

見つけられる保証もない。

手分けをすれば

いざという時、助けることも

できないだろう。

じゃあどんな

いい方法があるっていうのよ

イーリアスさーん。

…………。
ん?

ディーンが

この大会に出場して、

試合に勝利した時に

オルコット商工会へ

呼び掛ければいい。


元より賞金目当てで

出場を考えていたんだろう?

……ふむ、確かに

悪くなさそうな案だ。

でも…………

勝てるかなぁ、俺
勝て。
…………えーっと。

容赦なく言葉をつきつける

イーリアスに苦笑しながら、

ディーンは辺りを見回す。


筋骨粒々な大男、眼光の鋭い剣士……

パッと目につく戦士だけでも、

一筋縄ではいかないことは、

目に見えて明らかであった。

大変だと思うけど……

お願いできる、ディーン?

そりゃあもちろん!

格好いいところ見せないと!

ディーンの

扱いうまいじゃんカノン

そんなつもりは……

つーか、確率をあげるなら

カノンも出ればいいんじゃねーの?

そうね……、

万が一をとるならあたしも

カノンは出なくていい。

上位まで勝ち進むことが

目的ではないからな。

保護者かてめーは!
いや、でも

大丈夫だよ、カノン。


俺も此処で賞金を稼ごうと

考えていたくらいだ。

腕に多少は覚えがあるのさ。

だからぜひとも!

精一杯応援してもらえれば!!

きっといい成果を出して見せるとも!!!

……そ、そう。

わかったわ。

胸部に手を当て、

高らかに宣言する

ディーンの勢いに気圧され、

カノンは思わず首を縦に振った。

(……そうだ。

 随分と事情が変わったし、

 一度フィリカに

 報告しておきますか。)

闘技場の受付へ向かっていく

仲間たちをよそに、

カノンはその反対へと足を向ける。

ん、

どこに行くんだよカノン?

受付はあっちだぜー。

フィリカに報告。

ここじゃ周りがうるさいでしょ。

わかった。

りょーかい。

んじゃ、オレたちは

受付で待ってるなー。

フィリカ?

あぁ、あれだよ、

オレたちのボス――

カノンが言っていた

美人の女性か!!

お前……ほんと

ブレないなー

……ふふ、

仲間たちの会話を横目に、

微笑みながらその場を後にすると、

闘技場の外れへ向かっていった。

◆作者をワンクリックで応援!

0人が応援しました。

◆コメント欄は未記入でもOK! 公開されないのでお気軽に。

ページトップへ