ウラガワヒロイズム

第1話/Cパート

エピソードの総文字数=1,155文字

(今日も昼休み以外は平和だったなぁ。
いいことしたあとのお昼ごはんもおいしかったし、
イチゴサンドイッチ最高ー!
次の撮影もがんばれそう。
帰ったら、台本も読み直さないとね)
何ニヤけてんだ、回し蹴り女。
不審者かよ。
びっくりしたー!
く、黒杉くん、なんでここに?
俺ん家もこっち方面なんだよ。
よりによって、あんたと帰りの電車が同じとはな。
わたしだって、
べつに好きできみと同じ方向に帰るわけじゃないし。
ていうか、わたしには『演技』しないんだね。
どうして?
愛想振りまく必要もねえだろ、
無駄に『ヒーロー』ぶってる女になんか。
……朝もちょっと気になったけど。
黒杉くんは、特撮とかヒーローとか嫌いなの?
ああ、嫌いだ。
ヒーローなんて所詮作り物で嘘くせえし、
正義なんて薄っぺらいものを振りかざして何になる。
……そうかもね。
ヒーローは、だれかの夢とか願いとかで創られたもので、
『現実』じゃなくて『理想』。
わかってるよ、わたしにも。
だったら、なんでその仕事してんだよ。
たとえ夢でも理想でも、偽善者だってバカにされても、
わたしらしい『ヒーロー』になって、
だれかを少しでも助けたいから。
仕事じゃ戦隊のレッドにはどうがんばってもなれないけど、
せめてプライベートではレッドみたいな姿勢でいたいなって。
そんな感じ。
体を動かすのも大好きだし、
器械体操も小さいころからやってたし。
……ふぅん。
じゃあ訊くけど。
え……?

(なんでそっちに歩くの? そっちは――)
俺が今ここで線路に落ちたら、あんたは助けてくれるのか?
だめ!
ッ!
おい、痛えって、腕引っ張りすぎだろッ。
黄色い線の内側に下がってお待ちくださいっ!
はぁ?
この路線の駅、ホームドアがほとんどついてないんだよ。
こんなこと、冗談でもしないでよッ。
……なんで、あんたが泣きそうになってんだよ。
だって、知り合ったばっかりなのに、
もっといろいろ話せそうなのに、
こんなかたちでお別れになっちゃったらやだよ。
最悪だよ……っ!
……ほんと、どこまであいつに似てるんだか。
え? なんか言った?
べつに。
それと、回し蹴り女って呼ぶのもやめてほしいな。
わたしには、赤川真広って名前があるの。
この際、ちゃんと覚えてね。
はいはいわかったよ、バカ川さん。
わたしのミスを叱るときの嶽内監督と同じ呼び方したー!?
ちなみに私が出てる『独創戦隊オリジンジャー』は、
毎週日曜朝7時半から好評放送中だよ、観てね!
誰が観るか、調子こいて番宣かよ。

――俺はヒーローなんて信じない。
こんな世界、早く滅んじまえばいいんだ。
黒杉くんの吐き捨てるような重たい声は、
春のあたたかさの中でも、息が白くなりそうで。
本当に失礼だし、腹が立つくらい性格が悪いけど。
彼のことも、わたしはもっと知っていかないといけない――そんな予感がした。


【To be continued.】

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