ハロウィンナイトカフェ

店奥のテーブル席5「魔の饗宴」兜海老

エピソードの総文字数=3,426文字

「魔の饗宴」兜海老
お待ち合わせのお客さま、ご案内しま~す。

―――ほう、なかなか良い店だ。

さすが、アーマの選んだ店だ。

これは味の方も期待できるかな。

今日はハロウィン。

派手なコスプレをしたウェイトレスに、奥の席へと案内される。


そこには、待ち合わせていた先客が既に座っていた。

・・・・・・
・・・・・・

トリック・オア・トリ―――

あ゛?
ハロウィンお決まりのセリフを言いかけたカボチャの頭を鷲掴みにする。

やめてやめて、壊れる壊れる!

すいませんでした!

間髪いれずに泣きを入れるカボチャ。
なんだ、もう終いか。
カボチャの被り物を外し、男が顔を現す。
無茶するな、まったく・・・
悪魔相手にトリックを要求した、お前の方がよっぽどムチャだ。


そもそも、いい年した大人の男がカボチャを被ってはしゃぐな気持ち悪い。

そういうお前はフツーの普段着なんだな。

悪魔の格好はしないのか?

悪魔が悪魔の仮装をして楽しいか?
仮装じゃなくて、元々の姿でもいいじゃないか。

角も羽根も尻尾もあるし。

人間の仮装に混じって本物の悪魔が出歩けるか!
ん?

悪魔のお祭りみたいなもんだろう。

ハロウィンなのにこっちに出てこないのか?

ハロウィンなんぞガキの遊びだ。

いい年した大人の悪魔は参加などせん。


悪魔が人間に菓子をねだってどうする。

ということは、子供の悪魔は来てるのか。
悪魔というか、魔界のそこかしこに散らばってる悪魔未満の、俗に言う妖精なんかの類いだな。


地獄や神界ともなると、こちらの世界に来るにもそれなりの理由がいるからな。

こんなバカげた祭りに参加するだけのために、許可はまず下りん。

む、そんなに大変なのか・・・
まぁアタシのところの親玉はその辺り寛容だからな、二つ返事でOK は出た。

書類を揃える方が手間が掛かったぐらいだ。


逆にアーマの方は手こずってると思うぞ?

神界の奴等は規則にやかましいからな。


―――何にせよ、魔界のド田舎で裸の王様やってる「貴様ら」ほどお気楽じゃあないだろうな。

裸の王様・・・
・・・あの、何故私までこのようなところに?

仕方あるまい。

無価値とはいえ重要人物であるコイツの国に、主要人物不在の状態で天使なんぞ残しておけるか。

重要人物なのに無価値って、なんか矛盾してない?
しかし・・・

天使である私が悪魔の催しに参加するなど・・・

心配するな。

そこのアホに食われて魔界に落ちた時点で、貴様のカテゴリーはとっくに魔族だ。

・・・・・・
まぁまぁ。

別に仮装に参加するわけじゃあなし、ここは美味しいスイーツを食べに来たと割りきって楽しもうじゃないか。

・・・良いでしょう。
―――しかし、アーマは遅いな。

もしかして、神界の許可が下りないとか?

それはない。

曲がりなりにも監視対象である貴様がこちらにいるんだ。

どう転んでも監視役であるアーマも当然来ざるを得ない。


単に頭の固い神魔連中が「規則が~」「前例が~」とムダないちゃもん付けてるだけだろう。

お待ち合わせのお客さま、お通ししま~す。
―――すいません皆さん、遅くなってしまって・・・
お、噂をすれば。
ようやく来たか。

苦労したようだな、アー・・・





・・・・・・
トリック・オア・トリ~ト♪
作戦ターーーーーイム!
はい?

どうぞ。

(―――どういうことだトリィ、話が違うぞ!

ヘタしたら、この店で一番ノリノリな格好で登場したじゃないか!?

ハロウィンはガキの遊びじゃなかったのか?)

(アーマとは学園に入ってからの付き合いだからな、これはあくまでも予想なんだが・・・


昔から陰険な神魔共に苛められて、友達の居なかったアーマは・・・

ひょっとしたらハロウィンに参加すること自体が初めてで、浮かれきっているのかも、しれん・・・)

私、ハロウィン・パーティを皆でするのって初めてでして。

とっても楽しみにしてたんです!

・・・・・・!
(やはり・・・)
・・・ところで、皆さんは仮装してないんですね・・・?
・・・!
お、俺はもちろんあるぞ!
ほら、トリック・オア・トリ~ト!
わぁ、素敵なカボチャさん。

別乃世さんが作ったんですか?

いや、魔界の森に落ちてたのを拾ってきた。
(・・・ああ、魔獣か何かに食われたジャック・O ・ランタンの死骸だな、ソレは)
そうなんですか。

それは良かったですね。

(・・・まぁ、敢えてこの流れでは言うまい)
アーマのそれは吸血鬼か?

よくできてるな、似合ってるぞ。

ふふふ、ありがとうございます。

でも、自分で作ったわけじゃないですよ。

私達は基本的に霊体ですので、ある程度の衣装は自在にできますからね。

ああ、そう言えばそうだったな。
・・・トリィは何か、仮装しないんですか?
・・・

あ、いや、アタシは・・・

トリィと一緒に楽しみたいな・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・分かった分かった!

着替えてくるから、ちょっと待ってろ。

やったぁ!

待ってますね、トリィ!

(やるな、アーマ・・・ )
トリィがどんな仮装でくるか、楽しみですね。

―――お、早いな、もう戻ってきたか。

・・・なんだ、いつもの格好に色々羽織っただけか。

え~・・・

もっと新鮮なトリィが見たかったのに・・・

・・・頼むから、これでカンベンしてくれ。

コスプレはアタシにはムリだ。

まぁ、傍から見れば一番はっちゃけてるのはお前だがな、トリカラ・マイウー。
やかましい。

・・・ハクマイナーさんは仮装、しないんですか?

せっかくなんですから、皆で楽しみましょうよ。

天使の身でそのような馬鹿げた格好、できるわけがないでしょう。

とはいえ卑下するつもりはありませんので、どうぞ、あなた方だけでお楽しみ下さい。

え・・・

(―――おい、貴様! それでも天使か、空気を読め。

貴様はオニか!?


念願叶って、生まれて初めてハロウィンに参加できたアーマの気持ちを考えろ。

楽しむ必要はない、だが一時、アーマに付き合ってやれ!

天使なんだろう?)

(で、ですがやはり天使としては―――)

・・・ごめんなさい、私、馬鹿げてますか?

(・・・おい!)

―――ああ、もう!

分かりました!

分かりましたから泣かないでください!

着替えます、着替えてきますのでお待ちなさい!

(おお・・・あのハクマイナーすら動かすとは・・・)
良かったな、アーマ。

はい!

こんなに楽しいハロウィン、初めてです!

―――む、帰ってきたか。
ほう、これは―――

わぁ、素敵。

・・・白鬼さん?

オニである心を認め、そのまま形に表したのか。

なかなかやるな、正直見直したぞ。

西洋の催しであるハロウィンに、敢えて和のテイストを取り込むとは・・・

見事だ、メンタイ・ハクマイナー。

ユニコーンだ!
・・・
あ・・・

な、なるほどユニコーンか!

天使らしいチョイスだな!

―――ふん、この期に及んでまだ「清純」とか「潔白」とか、そういったイメージを押し出そうというのか?

イメージではありません。

現に清廉にして潔白なのです。

ま、まぁまぁ。

ケンカは良くないぞ。

そ、そうです。

せっかく皆で仮装したんですから。

楽しくやりましょう、ね!

―――お待たせしましたぁ!

ご注文の、ハロウィン・スペシャル・ケーキです。

と、ちょうどそこへウェイトレスが持ってきたのは、ハロウィンを模した小物に彩られた巨大なケーキ。


中央にはチョコで「Happy Halloween」と書かれている。

そしてそれを囲うようにして、赤い髪の男と女神、悪魔、そして天使の砂糖細工が添えられていた。

あ、お店の予約をするときに、私が頼んでおいたケーキです!
ほう・・・
これはうまそうだ。
これがケーキ・・・

あれ?

食べたことないんですか、ハクマイナーさん。

天界にはこのような嗜好の権化のようなものはありませんから。

間近で見るのは初めてです。

まぁ魔界にも、ここまでのものはないな。

ああ、そうですよね。

神界は割とこういうお菓子も進んでいますが・・・

美味しいものに関しては、こちらの世界が一番ですよね。

天界、魔界に神界ですか。

ふふふ、みなさんすっかり成りきってらっしゃいますねぇ。

あ・・・

うん、そうだな、そうなんだ。

楽しんでおられるようで、何よりです。

せっかくのハロウィンですからね。


みなさん、本当に仲が宜しいんですね。

仲が良い・・・か、な・・・?

(ちらっ)

ふ・・・
ふふふ・・・
―――そうですね、皆仲良しです。
まぁ、たまには、な。
良いでしょう。

―――そうか!

じゃあ・・・

(かぽっ)







さあ―――

ハッピー・ハロウィ~ン!

ハロウィ~ン!
こうして宴は始まり、夜は更けていく―――
―END―

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